#101 Fairy fly to the great sky Part4 ~Irony~
「…………あんたね 反則でしょ あんな風の起こし方………!!!!」
ユーカとエドソンを挟んで通常ではありえない楕円形の竜巻が吹き荒れる。
戦況は完全に分担されて孤立した。
今 ユーカが対峙しているのは自分の起こす風を自由自在に操ることの出来る《天敵》なのだ。
そして彼女自身が 今自分がファンと同じ立場にあるという事を理解していた。
(…………あいつの同じ真似をするなんて耐えらんないけど、それでもやるしかない!!!!!)
「ヤアアアアッッ!!!!」
杖を鈍器として振り上げてアリスに向かって全力で走った。
一撃で意識を断ち切れるように狙いを側頭部に定めて懇親の力で振り上げる。
しかし今のアリスの目にはユーカの考えている事が手に取るように感じ取れた。
ゴッ!!!! 「!!!!?」
大振りの攻撃を上半身を反らして躱し、仰け反った体勢を利用してユーカの顎にカウンターの蹴りを叩き込む。
ユーカは吹き飛ばされて地面に倒れ伏した。
「………………………!!!!」
「忘れましたか? 今の私はエクス寮長に鍛え上げて貰っているんです。魔法を使うことしか能がないあなた程度に遅れを取ることは決してありません!!!!」
「!!!!」
自信に眠る力が目覚め、忘れかけていた事実を再確認した。
ロイドフに不覚を取っても 自分がエクス・レインに鍛え上げて貰ったと言う事実は決して揺るがない。
その事実が心に宿り、今のアリスを支えているのだ。
さらに追撃を仕掛けるために再び手を振って空気を動かした。
そしてそれを大きく、そして長く変形させる。
(………あの形、まさか…………!!!!)
アリスが起こした風の形はユーカが一番良く知っている形だった。
「行きますよ?
《塵旋風槍》」
「!!!!」
アリスは手を振って竜巻を投げつけた。
先程 ファンを襲ったものと同じ巨大な塵旋風が横向きの状態でユーカに襲いかかる。
「〜〜〜〜!!!
ふざけんなッッ!!!!」
「!!?」
ユーカは杖を地面に突き立て、それを軸に逆立ちをした。そのまま腕の力で飛び上がり、棒高跳びの要領で《塵旋風槍》を躱す。
さらに上空から足を振り上げて蹴りを試みる。 狙いはやはり側頭部。
一瞬 反応が遅れて完全に捉え━━━━━━
「!!??」
ユーカの蹴りは空を切った。
それでも彼女が違和感を覚えたのは、アリスが避けようとした動きが無いのにも関わらず、自分が蹴りを外したように感じたからである。
「…………今 何をしたの!!?」
かろうじて着地をとり、アリスに向かい合って問いただす。
「なんの事はありません。
あなたの周りで起こった空気の動きの流れを変えて弾じき飛ばしただけです。」
「!!!?」
唐突に突きつけられたその事実は即ち アリスには物理攻撃すら効かないという事を意味していた。
今のアリスはユーカの風魔法もかろうじて持っているマーシャルアーツも通用しない圧倒的な相手となっていたのだ。
「貴女方の仲間に伝えておいて下さい。
『マーシャルアーツを嘗めてはいけない』とでもね。」
「!!!!」
ラドラだけでなく、パリム学園 果てはこの地域全体でマーシャルアーツは魔法より劣っているものだと思われていた。 しかし今目の前に立っているアリスはその考えを軽く否定できるだけの実力を持っていた。
しかし ユーカは諦めていない。 次の攻撃に打って出る。
(………それなら、反応出来ないくらい速い攻撃でその背中をかっ捌いてあげる!!!!!)
アリスの真後ろ 20メートル程離れた空間に拳大のつむじ風の刃を二つ展開し、自分が打てる最高速度で打ち出した。
(このスピードに反応できるもんならやってみなさいよ!!!!)
魔法を発動して打ち出し、敵に直撃する
その時間は1秒にも満たない。
魔法で消滅させる暇もなく完全背中をに捉えた
「無駄ですよ。」
「!!!?」
単純な速度だけならレイザーにも負けないと自負していた自分のつむじ風の刃が直撃する寸前で消えた。
「…………そんなまさか…………!!!!
ちゃんと最高速度で打ったはずなのに………………!!!!」
「ええ。 今のは確かに速い攻撃でした。
ですが如何に速くても それが風の攻撃であるならば速度なんていうのは問題では無いんですよ。」
「……………………!!!!!」
ユーカは自分でも気付かない程 心の奥底で 彼女の闘志を煽ってアリスに眠る力を呼び覚ました事を後悔し、そして無意識に慢心して2人を甘く見ていた自分を恥じた。
「……もう万策 尽きましたか?
ならもう終わらせてもらいますよ?」
「!!!!」