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2話 私の友達がorzしてる

元々2つの話を文字数の調節の為に1話に纏めたので2視点での話になっています。



〜ホルミー視点〜


私の名前は村嶋保奈美。このゲームでの名前はリアルの名前を少し弄ってホルミーにしている。

今日は友達のゆりちゃんがこの抹茶を始める。私は去年の春にβテストを受けられたお陰で第一陣と共に最前線で今も戦っている。でも一緒に戦っている皆んなはリアルでは何の接点もない人達だったから、リアルの友達であるゆりちゃんと一緒にこの世界のワクワクを共有できるのは私にとって嬉しい事だった。


そんなゆりちゃんに色々教える為に、私は一旦現状攻略の最前線の町、ネチアを離れてスタート地点の町、ウートにいた。


このゲームは選んだメインジョブによってスタート地点が変わる。例えばクレリックを選べば教会がスタート地点になるし、私の初期メインジョブの剣士や武器職を選べば冒険ギルドの前がスタート地点になる。

ゆりちゃんの場合は召喚師を選んだので召喚師ギルドの前がスタート地点になっているので私達はそこで合流する事になっている。


私のアバターはリアルの姿をベースにして瞳と髪の色だけを変えているからそこそこわかりやすくなっていると思う。本当は胸も控えめにしたかったんだけど初期設定で胸を控えめにしたアバターで試して見た時、違和感が凄かったから泣く泣くやめた。


召喚師ギルドの前では色んな人がいる。一番多いのがキョロキョロしている人。この全員が第三陣の新規プレイヤーだ。ただ、第三陣になってくると既に友人や家族が抹茶を始めている人が多いので大半は待ち合わせ組になる。それに皆非常に楽しそうな表情を浮かべている。


……いや、1人だけ違った。両膝をつき、この世の終わりのような雰囲気をギルド前の入り口付近で漂わせている人がいた。


「……」

「ゆ、ゆりちゃん?」

「ほーちゃん、何?」


死んだ魚のように濁った目で私を見つめてくるゆりちゃんがかなり怖いけど話さないわけにはいかない。


「こんなところで項垂れてどうしてなのかなーって」

「私は今、我が身の不幸を呪ってる最中だよ」

「な、何があったの?」

「ん」


ゆりちゃんはほぼ無言で私にフレンド申請を送ってきた。私はそれを許可してゆりちゃんとフレンドになり、ゆりちゃんのステータスを鑑定の魔法で見る。



__________________________


ユリーカ

Lv.1

MAIN:召喚師

SUB:料理人/調合師

HP:100

MP:120

SP:80

__________________________


「……ワァオ」


召喚師のステータスは若干魔法使いよりのステータスになっている。SPがあるのは召喚師特有のアーツに使う必要があるから。

というかゆりちゃん、名前をちょこっと弄っただけの私が言う事じゃないけど名前のつけ方が雑すぎるよ。伸ばし棒入れただけじゃん。

でもそんなことよりもサブジョブにとんでもない爆弾が収まっていた。

あの(・・)圧倒的に不遇職である調合師の文字がゆりちゃんのサブジョブ欄には埋まっていた。


「ゆりちゃん、これって……」

「最後の1枠思いつかない

 そうだランダムチョイスを使おう

 結果クソ」


ゆりちゃんがいつもは使わないような言い回しで私に教えてくれる。これはかなり参っている証拠だ。


「で、でもね。サブジョブなんてメインジョブに比べればそれ程必要な「この前、ほーちゃんが言ってた。3つ目の街に行くにはサブジョブが両方とも一定まで育ってないとダメだって」え……あ、あはは」


駄目だ。早くこの流れを断ち切らないと何か恐ろしいものがゆりちゃんから生まれてしまう。


「そ、そうだ!ゆりちゃん、折角召喚師になったんだから早く使い魔を召喚しようよ、ね」

「……分かった」


幽霊のようにフラフラとした覚束ない足取りでゆりちゃんは召喚師ギルドの扉をくぐる。ゆりちゃんはそのままの足取りで私の案内の元、新規プレイヤーが疎らにいる登録受付に進む。


「ようこそ、召喚師ギルドへ。登録の方で、す……よね?」

「あっ、はい。登録です登録です。ほらゆりちゃん、夢のモフモフがもう直ぐだよ!」

「……モフモフかぁ。ちょっとヤル気出た」

「と言うわけでこの子の登録よろしくお願いします」

「異来人の方にも色々あるんですね」

「そう言ってもらえると助かります」


哀愁を漂わせながら受付の人は私に気遣いの言葉をかけてくれる。いつ見ても、どう接してもAIとは思えない程にリアルな人間だ。


「それではこれで登録が終わりましたので私からはこれで終わりです。ここから先は別の者が召喚室に案内します」


受付の人に促されて、私とゆりちゃんは案内の人に案内してもらう。


「貴女に今回使っていただくのは2号室です。それと初期の登録では召喚できる数が2つに限られていますので注意してください」

「分かりました」


まだ若干引きずってはいるものの。召喚自体は楽しみなのかゆりちゃんの足取りや雰囲気は少しだけ楽しそうにソワソワしている。


「着きました、ここが2号室です。それでは中に入って召喚を行いましょう」


案内されて数分、私とゆりちゃんは2号室で召喚を始めることになった。



〜ユリーカ視点〜


調合師を引き当ててしまい、茫然自失としている私をほーちゃんは召喚師ギルドに連れて行って登録の直前まで進めてくれたようだ。

昔の某特撮のように怪人を生み出せるくらいに絶望してたから自分が何をやってたか殆ど覚えてない。ただ、もふもふか私を待っているとほーちゃんは言っていたので気分は幾分かマシになった。もふもふが私のモチベーションを上げてくれたので、そこそこ早く登録を終わらせ、召喚室に案内された。

召喚室は簡素で召喚用の魔法陣のみが描かれている畳四畳半くらいの部屋だった。


「それでは私の言った通りに繰り返してください。当然その時に魔法陣に魔力を注ぐのを忘れずにお願いします」


案内してくれたおねーさんはほーちゃんとは雰囲気も、あと胸も全然違った。

ほーちゃんはちょっとホワッとした娘だ。そして胸は大っきい…大っきいのだ。この前また胸が大きくなったと言っていた。一体何を食べればあんなに育つのだろう。何度か触らせてもらったがとってもふかふかだった。

おねーさんはキリッとしたキャリアウーマン風の人だ。でも胸はない、つるぺたストンだ。もしかしたら少しはあるかもしれないが服から分かるほどの膨らみはない。

ほーちゃんとおねーさんの胸を比べるように見る私の視線に気づいたおねーさんは自分とほーちゃんの胸を見て、一瞬目からハイライトを消したあと口を開いた。


「……異来人の方が何を考えているのかはあえて聞きません。それでは今から言いますよ、覚えてくださいね」


――我は呼ぶ、我に従う者を

――我は願う、我を守る者を

――そしてここに我は呼ぶ、来たれ我が僕よ


「以上が召喚の呪文です。覚えましたね」

「覚えました、それではいきます」


おねーさんに言われていた通りに魔法陣に魔力を注ぎ込み、私は召喚の呪文を唱える。


「我は呼ぶ、我に従う者を

 我は願う、我を守る者を

 そしてここに我は呼ぶ、来たれ我が僕よ!」


呪文を言い終えた途端、魔法陣に注いでいたのとは別に魔力が私の中から吸い取られる。そして魔力の渦が魔法陣の中で発生し、それが晴れた後には……


「アンッ!」

「この子は……コボルドッグだね」


二足歩行で服を着たチワワが魔法陣の上に立っていた。


「か、可愛い〜!」


この子はを見た私はすぐさまこの子を抱きしめた。この子は腕にちょうど収まるくらいの大きさで、もふもふで可愛かった。この子はも私に抱きしめられて嬉しいのかクゥ〜ンと鳴いてくれる。


「ゆりちゃーん、愛でるのは後にしてもう一回やらないと。ここから他のプレイヤーも使うし早くしないと」

「はぁーい、ごめんね。お友達をもう1人召喚したら今度は撫でてあげるからね」

「アンッ!」


ほーちゃんに言われて渋々この子を離し、2回目の召喚を行うことにする。離した時に寂しそうな顔をしていたが今度は撫でであげると約束すると可愛い鳴き声と一緒に敬礼を見せてくれた。


__________________________


ユリーカ

Lv.1

MP:60/100

__________________________



そんなこの子を尻目に、私はMPを確認するとMPはごっそりと使われていた。そして召喚に使われたのは40、この分ならもう一回も休むことなくできそうだ。なのでもう一度私は魔法陣に魔力を注ぎ込み、呪文を唱える。


「――来たれ我が僕よ!」


先程と同じように魔力の渦が魔法陣の中で巻き起こり、それが晴れた後に私の使い魔が姿を現した。黒いボディに8本の足、全体的に丸っぽいフォルムのそれは…なんとクモだった。もふもふが欲しいと思ってはいたがこういうタイプのもふもふは予想外だった。まぁ、もふもふを望んでゴーレムとか手に入れるよりは私の願いに沿っている。


虫は平気なのだがやはり人間サイズにまで大きいと少し物怖じしてしまう。しかし、柔らかそうな体毛の魔力には勝てるわけはないので、恐る恐るではあるが触れてみる。


「あっ、意外とサラッとしてる」


私が想像していたのはサッカー場の人工芝のような手触りだったのだが、このクモの毛はマイクロファイバータオルのようにサラッと柔らかだった。


「ほーちゃんも触ってみる?意外と手触りいいよ」

「わ、私はぁ……い、いいよ」

「ほーちゃんクモ嫌いだもんね」

「い、いや嫌いって訳じゃないけど……」


ほーちゃんの目がとても泳いでいる。これは嘘をついている証拠だ。


「ほーちゃん昔蜘蛛の巣が引っかかったとき、クモを手で潰しちゃったもんね……」


あれは嫌な事件だった。5歳の頃に蜘蛛の巣が引っかかったほーちゃんは、それを取ろうとして手でクモを潰した。それが小さいクモならまだ良かったんだけどそこそこおっきなクモだったんだよね。あの時の潰した感触と潰れたクモを見たほーちゃんは重度のクモ嫌いになり、小さいクモでも見ただけでパニックなるほどだった。今でこそ少し苦手なくらいだったが当時はとても酷かった。


小学校の理科の生物の授業で先生が昆虫以外の虫の例としてそこそこリアルなクモの画像を見せた瞬間、ほーちゃんはパニックになってとんでもないことになった。

しかもその先生かなり古風なタイプの先生で苦手は甘えがモットーだったからパニックになって泣いてクモの画像を見ようとしないほーちゃんに無理矢理クモの画像を見せてとんでも無いことになった。

当然その事はクラスのみんなから親、PTA、学校、教育委員会というように繋がっていき、先生本人は解雇された。PTA集会で糾弾された先生の言い分は「苦手というのは甘えだ。私はその甘えをなくそうとしただけだ」だそうだ。この言葉と、教師内部の調査でほーちゃんの事情を知っていたにも関わらず故意に今回の事を行なったことが発覚した。

高校に上がってからふと思い出してお母さんから聞いた話によると裁判一歩手前のレベルだったらしい。


そんな事もあり、ほーちゃんはマシにはなってきているがクモ嫌いは健在だ。しかしゲームで敵として戦えるくらいには治ってきているので普通より少しクモが嫌いなだけになっている。

だがここまで治ったほーちゃんでもやっぱり無理なようだ。このクモがほーちゃんのクモ嫌い克服の助けになれば1番なのだが世の中そうは上手くいかないらしい。


「やっぱり仕方ないか。ごめんね無理言っちゃって」

「ううん、いいよ。ゆりちゃんが悪意を持って行ってるわけじゃない事は分かってるから」


無理なことを言ったことを謝ってこの話題は終わりにする。


さて、これから私の冒険は始まるのだ!

途中で挫折するかもしれないけど!……けど!






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