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下山

「俺…私…僕…一人称。どうしようか」


コアは、また悩んでいる。一人称が決まらない様だ。


「出来れば中性っぽくしたいんだよなぁ…そう考えると僕か?」


異性に言い寄られたりして、ダンジョンコアだという事がバレたりすると面倒なので、中性という微妙なラインを攻めたいらしいが…


「でもなぁ…僕って、口調に全く合ってないんだよね。」


注文が多いのだ。そのせいでなかなか決まらない。









「もう我でいいか。うん、なんか偉そうだけど男女どっちとも取れるな。」


やっと決まった。開始から30分のことであった。


「はぁ、これで安心して人前に立てる。」


コアは見た目を中性っぽく変えつつ、さらに髪色、眼色も変えて行く。

そして完成したのは、髪から目、果てにはローブまで紫一色に染まった男か女かわからない姿。完璧だ。


この世界では紫髪は意外と多い様なので、目立たない様に。というコアなりの考えだったのだが…あくまでそれは今までダンジョンの中に入ってきた冒険者についてなので、どうなるやら。



「およ?なんか聞こえた。泣き声?」


コアは耳を澄ます。目を瞑り、神経を張り巡らせる。

すると…


ぐすっ、ひぐっ、いやぁ、いやなのぉ、ぅぅ…。。


「居た。」


南南東、大木の向こうから聴こえてくる泣き声目掛けて、走り出した。


……


「マジかまさかこんなところに小屋が建っているとは…自分の中の事なのに知らなかったよ」


目の前には、小屋。いつのまにか自分の中を荒らされていた事を知り、顔が引き攣る。


「これって不法侵入だよな…てか何してんだ?なんか泣いてるし。」


さっき聞こえた泣き声はもうすぐそこから聴こえてくる。さらに、どうやら泣き声を上げている者の他に、2人ほど人がいる様だ。笑い声も聞こえる。


「んー。ま、とりあえず中見てみればわかるよね。コホン、スゥゥゥ…すーみーまーせーん!」

「あ゛ぁ゛!うっせぇな!誰だ!」


扉が乱暴に開けられ、出てきたのは男。


(おお、あれだな。クッパの子分的な、お姫様を攫っていきそうな顔してる。奥には…男が1人と女の子1人か。女の子の方は結構かわいいな。げ、男の方半裸じゃん)


目の下にクマができているブス男と、黒髪でオッドアイの少女だ。男は下を脱いでいる。


「キモっ…あ、やべ」

「てめぇ、いきなり大声出したかと思ったらキモっだと!死ね!」

「あっぶな!」


後ろに飛んで躱す。


「えーと?なんかお取り込み中みたいだけど、泣いてるよ?」

「はっ!てめぇの知ったこっちゃねぇ!それとも元皇帝の娘でも助けに来たのか?」


(へぇ、あれ、元皇帝の娘なのか。にしても後ろの豚キモいなぁ〜)


「おい、スレイン。どうかしたのかね?このガキを助けに来たというならば殺してしまいなさい。」

「へいへい。言われなくてもやりますよ……プッ、おま、お前、レベル1かよ!ははは!」


コアの体であるホムンクルスのレベルは1。舐められるのも当然である。


「逃げて…!早く!じゃないと殺され…むぐっ…」

「お前は黙っていなさい。そして、お前なんかを助けに来た男が死ぬ様をしっかりと目に焼き付ける事ですね」


コアは別に助けに来た訳ではなかったのだが…


「元々は違ったけど、気が変わった。我の土地で誘拐沙汰なんて起こしてんじゃねぇ。しかも豚、キモい、死ね。」

「な、なんだと!豚だと!この、このブーター・トン・ポークピッグ様に向かって、豚だとぉ!ブッヒ〜!スレイン!殺せ!」


(わお、名前が豚尽くしだ。しかもブッヒ〜って、ムッキーって言いたかったのか?)


命令を受けたスレイン…さっき切り掛かってきた男が剣を構える。


「レベル1がなんでこんなところに居るのか知らんが、男爵様からのご命令だ。黙って死ね。」


さっきから 死ね という単語が飛び交っている。治安が悪い世界だ。


(さっさと無力化するか。えーと、『加速トラップ100倍、スレインの足元へ下向きに設置。スレインの下に落とし穴、落とし穴の底にタイムラグ0.01秒の転移トラップ設置。以上を高速で3ループ。』っと。)


コアは心の中でダンジョンコアとしての権限を発動する。合計消費DPは1250。12秒ほどで元が取れる簡単な攻撃だ。が、


「ぐあっ?!…て、てめっ、何しやがった!くそおっ!体がいてぇ…」


十二分に効いたようだ。コアのレベルは1だが、その力は本来ダンジョンのものだ、それを個人で使ってくる時点で、異常。レベル1と侮った時点で負けるのである。


「どうだ?結構痛いだろ?甘く見てると痛い目を見るって、知らなかったのか?」

「クソがっ!今度こそ、死ね!《スラッシュ》!」

(お、スキルか。初めて見るな…なるほど、魔法みたいにイメージを魔力で具現化するんじゃなくて、スキル名に魔力を込めて世界の定義に沿って攻撃するのか。)


つまりスキルというのは名前ごとに効果が決まっていて、名前を叫ぶことでその効果を引き出す術なのだ。

魔法よりも簡単に発動できる代わりに、術者によって攻撃内容が変わることは絶対にない。あるとしても、それはステータスの差によるものだろう。


コアは初めて見るスキルに興味をそそられ、回避を完全に忘れてしまう。スラッシュ---斬撃が来るというのに避けなければどうなるのか。そんなのわかりきっている。


バシュっ!


「いってぇぇぇぇ!避ければよかった!右腕飛んだよ!?《スラッシュ》…恐るべし!」

「へっ!ざまぁみろ!《スラッシュ》《スラッシュ》《スラッシュ》!」


コアは右へ左へ避ける。だが、そこにあるのは圧倒的なレベル差。いつまでも避け切れる筈は…


「あぎゃぁ!今度は左腕!なんで?なんで腕ばっか狙うんだよ!」


無い。

隻腕から無腕へレベルアップだ。


「ったく、真紫だから魔族かと思ったら只の弱いガキじゃねぇか。」

(へ〜、紫って魔族の色なのか。好きな色だから紫に染めてたけどここは日本人っぽく黒髪にしとくか)


コアの髪の色が変わる。黒に。この世界で暗に皇族を示す、黒に。


「………は?黒髪だと?てめぇっ!皇族の生き残りか!」


この世界でその事を知る者は少ない。何故ならそれが一部の勝手な妄想だから。


それでも、妄想だとしても、その妄想を雇い主から聞いている護衛と、その雇い主その人からすれば、勘違いを起こすには十分過ぎる事実だった。


「…スレイン?わかっていますね?全力で捉えなさい。」

「了解した。」


(おいおい、ほんと、物騒だなぁ。こんな世界なら山から出ようとするんじゃなかったかな?……おいおい。)


そんな事を考えている暇はなさそうだった。

スレインの目が冷める。謂わば、プロの目。さっきまでのふざけた態度ではなく、大真面目。


「……これは、ちょっと本気出さないとかなぁ…」


コアは、笑っている。そんな事を言いながら、ニヤニヤしている。そこへ


「死ね」


スレインの剣が迫る。が、その剣が届くことはない。


「…我が眷族よ、久しぶりの出番だぞ。」


コアは、ダンジョンのモンスターを呼び出した。それだけである。だが、それはコア視点でのもの。一般人からすれば見ただけで失神するような…いや、死ぬような魔物。それは…


「魔王龍…?いや…」


魔王龍、初代魔王が自らの騎竜とすべく作り出した。神災級の魔物。



それとほぼ同じ姿をした。けれども圧倒的に、とてつもなく、小さな龍。


『コア、おひさしぶり。8年ぶりだね。』

「ああ、体を作り始めてから、一回も召喚してなかったね。」

『…とりあえず邪魔者殺していい?なんかウザい。』

「変わらないなぁ…いいけど、あの女の子は殺すなよ。もしかしたらお前のマスターになるかもしれないぞ。」

『はーい』


スレインと豚の運命が決まった瞬間である。だってこの龍、見た目は小さいが、れっきとした魔王龍なのだ。豚に至ってはもう既に股間を濡らしてたけども。

3人称難しスギィ!


次から2人称に変えます…


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