報酬の出所
事務所には18時頃着いた。
「おかえりー、おつかれさま!」
小島の明るい声が私たちを迎えた。
「ふーちゃん、依頼人の婆さんに取り敢えず完了報告しといて。あと配達の準備も」
「明日の午前中はダメだよ、盗聴器外しに行かないといけないから」
直哉は細かいところに気がつく。これまで全く足が付かなかったのは直哉のおかげでしかない。
翌朝、いつもより遅い時間に飯島の母親は会社へ向かうようだ。
盗聴器から流れてきた声は飯島の母親の声だった。
<武夫、どこいっちゃったのよ。30年もいなかったのに、やっとこれからずっと一緒にいれると思ったのに。死にものぐるいでお父さんと働いたんだから。あんたの帰ってくる家はここしかないのよ。小谷さんには申し訳ないけど、私にはあなたという子供がいる。それだけでね、どんな辛い事も耐えれるものよ。あなたがどんな罪を犯してもね、私たちの子供なんだから。早く帰っておいで。今日はあなたの好きなオムライスにしましょう>
「うーむ、聞きたくない話だね、俊」
「直哉、仕事だから」
飯島の母親が出てきた。いつもと変わらない力強い足取りで会社に向かった。
その午後、私たち3人は小谷の家を訪ねた。もちろん成功報酬を頂きにあがるためだ。
「小島さん、ようこそ。さぁお入りください」
1人では十分すぎるほどの広さがある一軒家だ。一応私たちは家具屋のため、成功した時も家具を渡すようにしている。今回は棚にした。それも極小さな。これに2000万の値段が付くことはないだろう。
ちなみに私と直哉は車で待機している。小島の胸に忍ばせたカメラで情報を共有する。
「一応お亡くなりになった証拠です」
そう小島が伝え、ポラロイドカメラで撮った飯島の死体写真を見せた。
「ありがとう。もう十分よ」
「ですよね、こんな写真ね、いらないですよね」
そう言って小島は写真を自分のポケットに戻した。
「ねぇ、小島さん、この家どう思う?広くて素敵でしょ」
「ええ、そうですね、高かったでしょうに」
小島は自分で発した言葉が失言であったことに気がついた。
「これね、飯島の両親から貰ったお金で建てたのよ。1億よ、1億。それからね、毎月毎月50万も振り込んできたのよ。そんなお金いらないって何回も言ったのに。お金で失った娘が返ってくると思ったのかしらね。それともこれだけ渡せば私たちが納得するとでも思ったのかしら。まぁこのお金で今回のご依頼ができたわけだから自業自得よね。子供を失う親の苦しみをしっかり噛み締めてもらいたいものね」
小島は成功報酬の振込を小谷にお願いし、その場を後にした。
「この依頼ちょっと引きづらそうだね」
意地悪そうな顔をして直哉が言った。
「だから仕事だって言ってんだろ。今回もパーフェクトな仕事だった。みんな、おつかれ!」
「へーぃ」
直哉と小島が声を合わせた。
それから1ヶ月が過ぎた頃だった。
小谷は亡くなったらしい。それが自殺なのか、事故死なのかは知らない。飯島とその家族に対する憎しみから解放された小谷は逆に生きる活力を失ったのだろう。私たちには関係ないことだが。




