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選手たち
「もっと膝を抱え込め、自分の顎に当たるくらいだ!」大声で選手に檄を飛ばす者がいた。スラっとした無駄のない体型、恐らくほぼ現役のころと出で立ち風貌がまったく変わっていないのだろう、監督の柴田がいた。遠目から私と直哉は合宿所の様子を眺めていた。恐らく選手は13人。もちろんその中に望月もいる。望月は一際身長が低く、周りの選手に隠れてしまうほどだ。
合宿とはいえ、マイナースポーツの練習環境はしっかりと整えられているわけではない。彼らが練習している場所は明らかにホテルの駐車場であった。基礎体力づくりならば、どの場所であったとしてもよいのだろうが、アスファルトの照り返しは宮古島というリゾート地とはかけ離れた環境だった。
ここから2週間私たちは観察に入る。直哉が無数の盗聴器、隠しカメラを設置していた。いつも直哉は準備が良い。ただそれ以上に後片付けが素晴らしい。