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七 ラグナロク (下)

 各戦場で次々に決着がつく最終戦争。

 佳境を迎えたその戦場でまた一つ、戦いが終わろうとしている。

 二つの荒い息遣いと剣と剣がぶつかり合う金属音、周りで戦っていた神の軍の戦士(エインヘリアル)も巨人族も皆冥府へと旅立ったが、この二人の戦いはまだ続いていた。


「はあっはあっ、いい加減に倒れろヘイムダルッ! 神々の見張り番などと番犬まがいの真似をさせられ、挙句満足に眠る事も許されぬ! 強欲や、身勝手とは縁遠いお前がやつらの為に命を張る理由はなんだ!?」


「はあ、はあ、お前は自らの欲望を満たす為にその狡知を駆使した陰謀で悪逆の限りを尽くしてきた。挙句、欺瞞(ぎまん)猜疑心(さいぎしん)に満ちた策略を用いて光の神(バルドル)を死に追いやった。自惚れるな、ロキ。お前と俺は好敵手などではなく、不倶戴天の敵だ!」


 一際甲高い剣撃音が響き渡り、ヘイムダルの腕が高く跳ね上げられた。

 ヘイムダルのがら空きの心臓をロキの剣が貫き、口から鮮血を噴き出す。


「所詮はお前もアース神族の端くれというわけだ。ここで俺に殺されるのが運命……ぐぶっ!」


 ヘイムダルの握る短剣がロキの心臓を貫く。

 白い肌を真紅に染め、血塗れの唇を笑みの形に歪めるヘイムダル。


「くくっ、お前は俺が、仕込み杖を使うとは、思わなかったようだな。お前にとって、俺如きとの相討ちは不本意だ、ろう」


「ヘイム、ダル」


 ロキとヘイムダルの痩躯が糸の切れた人形のように崩れ落ち、身体の下に血溜まりを作る。

 

 神々の見張り番を務めた寡黙な神と、神々を欺き翻弄した狡猾なトリックスターにして災いの権化は相打ちに果てたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ヴィーグリーズ平野に立つものは次々に姿を消し、今や最高神オーディンも雷神トールも、この終末の戦争の引き金を引いたロキも既にいない。


 神も巨人も等しく死に絶え世界の終末が迫る中、ヴィーグリーズ平野における最後の大戦、豊穣神フレイと灼熱の大地(ムスペルヘイム)の王スルトの戦い。

 両者の実力は伯仲しており長い戦いが繰り広げられていたが、決着の刻は近づいていた。

 

 何がこの二人の戦いに決着をもたらすかといえば、それは間違いなく武器の差である。

 太陽よりも明るく輝く剣を振るって戦うスルトに対して、フレイの武器は鹿の角だ。

 フレイも元々は『勝利の剣』と呼ばれる必勝の武器を有していたのだが、その剣はロキの口論でも糾弾された通り、妻を娶る際に手放してしまっていた。

 ロキは剣を手放したことが、いずれ取り返しのつかない失敗となると言ったが、正にそれが現実になろうとしている。


「こんなに強い奴がいるなんて予想外だったなあ。鹿の角(これ)でも俺に敵うやつなんていないと思ってたけど……」


 フレイの武器がスルトの剣に燃やされた。


「あーあ、ここまでかな」


 鹿の角の次はフレイの体が煌めく剣の餌食となり、豊穣神にして貴公子フレイはスルトの前に破れ去ったのだった。

 もし仮にフレイが勝利の剣を手放していなかったら、この最終戦争の結末はまた違ったものになっていたかもしれない。



 そして、フレイを始末したスルトはおもむろに歩き出すと、九つの世界を内包する世界樹ユグドラシルに向けて燃え盛る剣を投げ付けた。

 ユグドラシルが炎に包まれると、大地は燃やし尽くされて海に沈み、世界は終焉を迎えたのだった。 


 こうして、予言により定められた運命、神々の黄昏(ラグナロク)は終結した。

 

 


 

 

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