第33話最強スライムの倒し方⑦
俺が考えた作戦はこうだ
①ポロが前衛に立ちスライムの注意を集める
②ポイントまで引き寄せてもらったら、スライムを囲い、前回のように逃げ場を作らせない
③スライムを一つのポイントに留まらせたら、チビィのありったけの魔力を込めた砲弾をスライムにぶつける
④一撃で削りきれなければ、囲い組で総攻撃
全員の力を使った初めての総力戦、それがこの戦いの意義だった。
「そろそろ決着をつけよう、この戦いに」
まるでRPGのラスボスに挑むような雰囲気で、俺達は頷き合った。ここは俺達にとって一番最初の成長ポイント。この先も似たような敵が現れたとき、自信にも繋がる。
(こんな寄せ集めばかりだけど、きっと勝てる)
配置に向かう前に俺は皆の顔を見てそう確信した。不安な点が多い戦いだけど、力を合わせたら何倍も大きな力になる。
「チビィ、狙撃ポイントを教えてくれ」
「東に30度、南に45度じゃ」
チビィの目は遠くまで見渡せるらしく、スライムの位置を正確に把握できるみたいなので、俺は彼女の指示に従って砲台の向きを合わせる。
「よし、準備できたぞ」
「了解じゃ。あとは皆の避難が済めば、なぬ!?」
「どうした何かあったのか?」
「スライムが」
「スライムが?」
「空を飛んだ」
「は?」
一瞬何を言っているか分からなかった。だが、次の瞬間、高所にいる俺達の視界にスライムが入ってきた。
どこから生やしたか分からない翼を纏ったスライムが。
「滅茶苦茶過ぎるだろ、いくらなんでも」
最強の度を超越した光景に、俺は絶望する。きっと下に居る皆も同じ事を思っているだろう。
「まだじゃ、翼。砲弾の位置をズラせ。お主の視界にスライムが入っておるなら、自分で動かせるじゃろ?」
「あ、ああ。何とか目視できているから狙いは定められるけど」
「我が彼奴の動きを止める。その隙に撃ち落としてやれ」
「動きを止めるって、どうやって」
「我はこれでも魔王じゃ。空を飛ぶことなど容易い」
チビィはそう言うと、こちらも突然背中に漆黒の翼をはためかせた。
「お前飛べたのかよ」
「飛べた、というよりは飛べるようになったというほうが正確じゃな。この地に来てから身体の魔力が安定していなくてのう。魔法の力を借りているこの翼も、使用できなかったんじゃ」
長いこと説明をしているが、簡単に言えば最初から飛べた、そういうことらしい。
「砲弾には既に我の魔力を詰めてある。当てさえすれば木っ端微塵にできる」
「俺にそんなどこぞの長鼻の狙撃手みたいな正確な射撃ができるとは思えないんだけど」
「大丈夫じゃツバサ。お主ならできると我は信じておるぞ」
「あっ、おい」
俺が止める間もなくチビィは飛び立ってしまう。
「本当無茶を言うなよ」
2
チビィに託されてしまった以上、俺もしっかりやらなければならないので、俺はあらかじめ受けていた説明通りに砲弾の位置を動かし、狙いを定める。
『あのスライムを倒せるだけの魔力を込めるのは、それくらいしかできなかった故、勝負は一度きりじゃ。この作戦が失敗すれば、我らは二度とスライムを倒せぬ』
作戦開始前にチビィが言った一言が頭をよぎる。そう、失敗は許されない。全ては俺に託されている。
(大丈夫、俺ならできる。やるしかないんだ)
大きく深呼吸し、目標を見定める
ー空を飛んでいるチビィの姿は魔王とは真逆の天使のようだった
思わずその姿に俺は見惚れてしまう。あれが魔王だなんて果たして誰が思うだろうか。
「血の拘束 !」
チビィの声が空に響き渡る。同時に何もない空間から血の色をした鎖が無数に出現し、それがスライムを拘束した。
訂正しよう。やっぱり彼女は魔王だ。
「動きは封じた、今じゃ放て!」
でもそんな魔王が俺に全てを託して、指示を出してくる。俺は無言で頷き、照準をピッタリと合わせる。
あとはこのレバーを引けば、俺達の勝ちだ。
ーそう、勝ちなんだ。
「ぐっ」
ああ、駄目だ。意識しなければ大丈夫だって思っていたけど、トラウマというのは簡単には拭えないらしい。
(これも試練、って事なんだな)
「どうしたツバサ。何をしておる」
動けない俺を不審に思ったチビィが、同じ声量で俺を心配してくる。
「悪いチビィ」
「何を」
「最初から俺にこの役目は向いていなかった」
3
「最初から俺にこの役目は向いていなかった」
ツバサさんの声は地上にいた私達の耳に届いた。空に飛んだスライムをどうにもできない私達は、その様子を眺めていることしかできず、何が起きているのか分からなかった。
「ちょっとマズいかも」
その言葉を聞いたアオイさんが呟く。
「何かツバサさんの身に起きたんですか?」
それが気になった私はアオイさんに尋ねる。するとアオイさんは空を眺めたまま、叫んだ。
「何をやっているのよ翼! しっかりしなさい!」
その言葉はツバサさんを励ます言葉だった。アオイさん以外に事情を知らない私達は、顔を見合わせ頷き合った。
「ツバサさん! 何があったのか分かりませんが、どうか、どうか頑張ってください! 今決めないともう勝てないんですよ!」
「そうだよ! ボク達は何もできなかったけど、ツバサなら乗り越えられるよ!」
「頑張れ!」
「大丈夫!」
何も知らない私達の応援が力になるかは分からない。でも今私達の思いを託せるのは一人しかいない。
「ツバサさんなら、やれます! 絶対に! 私達は信じていますよ!」




