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第31話最強スライムの倒し方⑤

「幸せじゃ……なかったのか? お主は」


 自分の中から漏れ出た本音に、チビィは少し驚いた反応をする。


「幸せじゃなかったから俺はこの世界に呼ばれたんだよ」


 過去のことをいつまでも引きずって、前にも進めずつらい現実の中で生きていくしかなかった。


 ーそんな世界が俺にとって幸せだったのか


 それは言うまでもない。


「争いがないのはいいことかもしれないけど、それを幸せに感じるのはその人次第だと俺は思う。だから俺は少なくとも幸せだって思えなかった」


「それには理由があるんじゃろ?」


「ああ。あれがなければきっと俺も幸せに生きれたんだろうな。ましてやこの世界に来ることだってなかったかもしれない」


 たらればの話をしても意味がない事くらい分かっている。どんなに手を伸ばしても過去は戻ってこないことだって。


「自

 由に生きるって俺はあいつと約束した。だから自由に生きようとしたし、それが逆に窮屈になっていたことも俺は知っている」


 この前ユフィの前で話した時以上に自分の感情が溢れ出る。何故かは分からない。今まで他の誰かに話してきたことがなかったからなのか、それとも彼女たちなら話してもいいって思えたからなのか。


 〔俺も少しずつだけど変わり始めているってことか〕


 かつて親友が言ってくれた言葉を思い出し、少しずつでも誰かを頼りたいって気持ちが芽生えてきたのかもしない。


「悪いなこんな話勝手にして」


「我が聞きたかったから構わぬ。お主とは一度こうして話してみたかったからのう」


「俺と?」


「そうじゃ。我は何故か今お主に対して興味を持つようになった。この世界にはお主以外に我らとは別の世界からきた者どもがいくらでもおるのに、お主に対してだけ気になってしまうのじゃ」


 最初出会ったころと全く同じ人物とは思えないチビィの態度に俺は少し驚く。彼女とはそんなに一緒に過ごした記憶はないのに、どういう心境の変化だろうか。


「なあ、一体何があって」


「ほれ、到着じゃツバサ。砲台の準備、するぞ」


 しかしその理由を聞く前に、目的地に到着してしまう。作戦開始の時間までそんなに残されていないので、これ以上俺は彼女に尋ねることはなかった。


 2

 チビィと翼が砲台の設置に二人で魔王城跡地に向かっている頃。


「ボク達はスライムの誘導だよね」


 翼達とは別行動組であのスライムを拠点付近までおびき寄せる役割を、ポロ、ユズ、ユフィそして葵が担っていた。彼女たちは偵察班のタガー達が戻ってくるまで拠点で待機していた・


「ポロ様や私がその役割をするのは分かりますが、ユフィ様やアオイ様がやるのはいささか危険だと思うのですが」


 おびき寄せる組のメンバーを見てユズが言う。


「いいんですユズ。私ができるのはこれくらいですから」


「私も大丈夫。翼君だけ危ない目に合わせたくないから」


 ユズの言葉に対して二人はそう言う。この役目を自分にも任せてほしいと言ったのは、他の誰でもない彼女たち自身だった。


 ーそれでも、とポロは言う。


「ボクもユズの意見には賛成だよ。ユフィならまだしも、戦えないアオイがいてもリスクだけ高いと思う」


 ポロもユズの意見には賛成だった。人数が多ければ多いほど安全だとよく言われるが、人数がいても戦力にならなければ、結局同じ結果だ。そのことはポロ自身が誰よりも分かっているつもりだった。


「スライム一匹、されど一匹だと思うんだ。もしものことがあったらボクは守れないし、責任が持てない」


「それでも私たちにだっていつかは戦わないといけない日がくるかもしれません。それにユズだけを戦いに向かわせるなんて、私にはできません」


 本来守られる側のはずの王女、ユフィはポロを真っ直ぐ見つめて言う。


 〔ここで私が逃げてしまったら、『みんな』で戦う意味が無くなってしまう。それだけは……嫌〕


「昨日は失敗してしまいましたが、私の魔法はきっと役に立つはずです」


「今度は島を破壊されちゃうとボク達も困るんだけど?」


「それは安心してください。使う魔法は変えますから。それに倒すのはツバサさん達です」


「そうなんだけど、うーん」


 それでも二人は頷かない。ユフィを仮に連れて行ったとして、葵を残してしまったら拠点でのリスクが高くなる。逆に彼女も一緒に連れて行くとなると、さっきも言ったように護りながらの戦いは別の意味でリスクが高い。


 〔いくらボクが勇者でも、絶対に守れるなんて約束、できない〕


 ポロは過去の自分を思い出して舌を噛む。


「ユフィを連れて行ったら残されたアオイが危ないし、逆に二人とも連れて行ったら、それだけのリスクが高い。やっぱり二人には拠点で」


「私が彼女に力を貸す、というのはどうですかね」


 ポロが改めて断ろうとしたとき、四人とは別の声が聞こえる。会話に入って来たのは、ツバサ達の活動をここまで黙ってずっと見届けていたエウレだった。


「エウレが私に力を?」


「はい。私自身がそのスライムを倒してもいいのですが、それだと面白くありません。何よりユズがそれを嫌いますから」


「相変わらず余計なことを言いますね、エウレ様」


 エウレのことを誰よりも嫌っているユズがエウレを睨みながら言う。エウレはそれを無視して自分の言葉を続ける。


「さあどうしますか、若草葵。力のない貴女が戦うために、私の力を欲しますか?」


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