第28話最強スライムの倒し方③
「作戦は完璧だったんだけどなぁ」
「どの口が言っておるどの口が!」
見るも無惨な姿になった魔王城は、肝心のスライムを逃してしまうというだけの損しかしてない物になってしまった。
「ま、まあ元々ボロ屋だったんだからチビィも我慢しなよ」
「お主は何度ボロ屋というんじゃ! あれでも、立派な魔王城だったんじゃぞ!」
涙目でこちらに訴えてくるチビィ。それを見ると何だか少しだけ申し訳ない気持ちになってくる。
「悪かったよチビィ。俺もまさかこうなるとはいえ思っていなかったんだ」
「と、言っているけど」
「ツバサ様が率先してやっていましたよね?」
「そこ! 今は黙ってて!」
せっかく慰められそうな所なんだから。
「ならツバサ、一つだけ頼みを聞いてくれないか?」
「頼み?」
「我の家を作ってくれ」
「チビィの家……つまり魔王城をか?」
「そうじゃ。今回の件はそれで許してやる」
「わ、分かったよ。ただ色々落ち着いてからだからな」
爆発オチの代償は、よりによって一番面倒くさいものになってしまった。
「あれ? 俺、なんか損してないか?」
「自業自得だよ、仮にも魔王を怒らせたんだから」
「それをお前が言うか?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
ここで一度爆発オチに至った経緯を振り返ってみる。
日を跨いで練られた第一次最強スライム討伐戦、八日目の昼に決行された内容はこうなっていた。
「まず魔法が使えるユイ達には、魔法でできるだけスライムを家から出さないようにしてもらいたい。たとえば煙を発生させて視界を狭めたり、手段は選ばなくていい」
「それ我の家の負担が大きくないか?」
「次に俺達殲滅組だが」
「無視?!」
魔法組の敵の進路妨害
俺達の敵の殲滅
シンプルな作戦だけにうまくいくと思っていたのだが、魔法組に手段を選ばなくていいと言ってしまったのが運の尽きだった。
「ユフィ様、あの魔法を使いましょう」
「あの魔法? あ、あのドカーンってするやつですね」
「ドカーン?」
嫌な予感がする言葉が聞こえたと思ったら、次の瞬間には魔王城は吹き飛んでいた。
俺達殲滅組が突入する前にだ。
ガクガクガク
目の前で爆ぜて消えた我が家を前にチビィは体を震わせたのだった。
「な、何でこうなったぁ!」
で、今に戻って反省会。
「とりあえずユフィのドカーンは禁止な」
最初に話題に上がったのは、全ての原因となったユフィのドカーンだ。
「な、何でですか?」
「いやいや、あれ下手したら俺達巻き込んでいたからな?」
軽い口調でドカーンなんて言っていたが、威力は間違いなく島を半壊させかねない勢いだった。あと数秒遅かったらと思うとゾッとする。
「それもそうだけど、あれだけの爆発で生き残ったスライムもスライムだと思うな」
「それが一番の問題だよなぁ」
先ほども言ったが、今回の作戦は失敗している。ユフィのドカーンですら何事もなかったかのように生き延び、またどこかへ姿を消した。
(もはやあれはメタル系のスライムだよな)
初期レベルの俺達が挑んでもとてもじゃないけど敵わないレベルの敵だ。
「俺達じゃ戦うのには早すぎた相手だったのか?」
「そんな事はないと思う。だってボク達、まだ一度も攻撃してないよ?」
「確かに」
「言われてみれば」
一回目はその異常なステータスに驚いて攻撃できなかったとポロは言っていたし、ユフィのドカーンは果たして攻撃と呼べたのかも定かではない。
(こういう系統に効くのは、一撃必殺系の攻撃だけど、そんなのあるのか?)
「なあポロは一撃で敵を倒せるみたいな技はないのか?」
「一応あるけど、どうして?」
「もしかしたらそれが活かせるかもしれないから、次の作戦までに使えるようにしておいてほしい」
「でもあれって、ツバサが考えているようなやつじゃないよ」
「ん? どういう意味だ?」
「ここじゃ使えないから後で説明するよ。それよりも次の作戦はどうするのさ」
「キャトラ達には一応追ってもらったけど、もうそろそろ日も暮れるし帰ってくるだろうから、また持ち越しだな」
まさか七日目、そして八日目がスライム討伐に消えるとは思っていなかったが、こればかりは仕方がない。失ったものもあるし、約一名の精神的ダメージも大きい。
(まさかチビィがあそこまで落ち込むなんてな……)
作戦の後ショックがかなり大きかったのか、あれから誰とも口を聞いてない。冗談混じりの部分があったとはいえ、ここまで落ち込まれると俺も申し訳なくなっている。
「ツバサさん、チビィさんのこと」
「どうにかしてあげたいけど、今俺が声をかけたら火に油を注ぐだけだと思う」
「なら私が」
「ユフィは本当にやめておけ」
大火事になりかねない。
(こういう時に頼りになるのは……)
「いつまで落ち込んでるのチビィ」
「ふん、家を失ったことがない勇者にはこの気持ちは分かるまい」
「……そんな事ないよ。ボクだって家や家族を失っている」
「それって……」
「流石に分かるよね。ボクがどうして勇者としてチビィと戦っているのか」
「……」
「本当はボクは君達魔族をを許せないんだ、チビィ」




