表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/36

第27話忘れぬように

「ツバサさんにも秘密が?」


「俺の方はユフィみたいになやつではないけどさ、助けてやれなかった人がいたんだ」


「人が……いた?」


「ああ、いたんだ。今はもう、遠くに行ったけど」


 少しだけ昔を思い出す。

 一番近くにいたアイツは、誰よりも明るく振る舞って誰よりも苦しんでいた。


(それに気づいてやれなかった俺は、ただ一人の親友と呼べるアイツを失った)


「ユフィの世界では馴染みのない言葉だと思うけど、そいつは俺の見えないところでイジメを受けていたんだ」


「いじめ?」


「簡単に言えば誰もが一番嫌うことを毎日のように、特定の人間にやられることだ。本当なら痛くて辛くて、誰かに知って欲しかったんだろうけど、隠し続けていたんだ。親友の俺にすら」


「そんなのツバサさんが気付けなかったら、周りの人が気付けばよかったじゃないですか」


「そうだろうな。けど周りの人間は誰一人として手を差し伸べなかったんだ」


 もうそれが日常のように行われ、誰も異常に気づかなかった。だからあいつは……。


『翼、悪い。俺もう限界だわ』


「和樹、お前、何を言って」


『今日まで俺は我慢してきた。けどどんなに我慢しても、何も変えられやしなかった』


「我慢ってお前、何を言って」


『だから翼、お前は俺と違って自由に生きろ。誰にも縛られなくていい、お前はお前らしく生きてくれ』


「和樹!」


『じゃあな親友』


 最後の最後に俺だけにメッセージを残してくれた。


「そんな話、悲しすぎますよ。ツバサさんは何も悪いことしていませんし、そのお友達ま何も悪くありません。だから背負う必要なんて」


「無い、って言えないんだよ」


「え?」


「俺がアイツを背負ってやらなきゃ、誰が背負うんだ」


 忘れてはいけない。

 せめて俺だけでも親友であり続けたい。


(それが俺から和樹への贖罪なんだ。忘れない為にも、あいつがいたって証を残す為にも)


「ユフィの話なんかと比べたら全然だろ? でも俺はどう生きていくか自分の道を決めた。すぐには難しいかもしれないけど、ユフィにだって見つけられると思うよ」


「ツバサさん……」


 深いため息を吐く。まさか自分も誰かにこんな事を話すなんて思ってもいなかった。


(思い出したくなかったんだけどなぁ)


 天を仰ぐ。いつからか知らないけど俺の頬には涙が伝っていた。


「俺、さ。こんな事誰かに話すの、初めてなんだよ。だから、久々に色々、思い出してさ。ユフィを慰める為なのに、何やってるんだろうな俺」


 言葉が詰まる。もうこれ以上何か話しても辛くなるだけだし、彼女を慰めた意味がない。


「ツバサさんが私の話を聞いてくれたように、私もツバサさんの話を聞きますよ」


「え?」


「お互いに秘密を共有したのに、慰めてもらうばかりでは私も人として駄目です。だから私がツバサさんの傷を癒します」


「ユフィ……」


 そう言ってもらえて嬉しかったのかは分からない。でもほんの少しだけ肩の荷も降りたような気がする。


『お前には自由に生きて欲しいっていって言ったのに、いつまでも一人で抱えるなよ翼』


 どこかからか聞こえた親友の声は、呆れつつも少しだけ安堵したような感じがしていた。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 その後魚釣りを終え拠点に戻ると、キャトラとタガーが既に帰還していた。


「早いな二人とも」


「あたし達の嗅覚舐めないでよね」


「それで見つけられたのか?」


「は、はい。見つけたのはいいのですが、いた場所が……」


 タガーがオドオドしながら報告をする。一番驚いたのは、


「わ、我が魔王城?!」


 かつて島の中心に拠点を作ったチビィだった。


「あのボロや……魔王城が乗っ取られていたのか」


「ボクでもあんなボロやし……魔王城なんて乗っ取らないのに」


「待て二人とも、今我に対して失礼な事言ったじゃろ?」


 まさかスライムが、あんなボロ屋敷をいつの間にか乗っ取っていたとは予想外だった。


「我の魔王城が……」


「とりあえず場所が分かった以上は、そこに乗り込む必要があるな」


「もしかしたらボロ屋敷で増殖しているかもしれないから、油断はできないね」


「作戦も少ししないと駄目かもな」


 敵が室内にいるのと外にいるのとでは戦い方が変わってくる。


(しかもあの狭い室内でどうやって戦えるんだ?)


「なあチビィ」


「何じゃ」


「あの屋敷ごと爆発させちゃ駄目か?」


「なっ、駄目に決まっておるじゃろ!」


 最適解だと思っていたけど断られてしまった。


「でもどうせそういうオチになると思うんだけどな」


「嫌じゃぞ? 爆発オチになるなんて絶対」


「たまに思うんだけど、どっから言葉を覚えてるのさ」


 爆発オチなんて魔王が使う言葉じゃないだろうに。


「と、ともかくじゃ。我の家は完全な状態で戻す事、それが絶対条件じゃ」


「すごい無茶を言うな」


 そんなのほぼ不可能だと言うのに。



 そして翌日。


「わ、我の城が」


「やっぱり爆発オチは避けられなかったか」


「我はこんなの認めぬぞ!」


 チビィの居城は、跡形もなく消え去ったのは言うまでもなかった。


「ば、ば」


「ば?」


「爆発オチなんて最低じゃ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ