第2話異世界交流は脱衣の後で
俺と共にこの島に、神様によって流れ着いた女性はユフィと名乗った。水色のロングヘアーとそれと同じくらいの色の瞳。
もう言わずとも、俺の世界の人間ではないのは確かだった。
「ツバサさん、随分とおかしな喋り方をシマスネ」
「俺からしてみればユフィさんもそうなんだけど」
そして、お互い住む世界が違うからか、言葉が所々片言に聞こえるのもその証の一つ。
ただ、一応会話はできるので、まずは二人で現状を確認する事にした。
「じゃあツバサさんもワタシと同じく?」
「ああ。ついさっきここに流れ着いたんだ」
「デハ、ワタシとほぼ一緒なんですね」
「じゃあ二人とも同じタイミングでこの場所に来たって事か」
だとしたら、同じ神様がこの場所に俺達を呼んだという事は考えにくい。何せあの空間には俺とあの自称神様しか居なかったのだから。
だとしたら、一体何の目的で神様は俺達をこんな場所に転移させたのか、疑問ばかりが生まれる。
「そもそもユフィさんも異世界転移でこの世界にきたの?」
「そのイセカイテンイとい言葉はワカリマセンが、ここはワタシの世界ではないのは確かです」
「なるほど」
「ツバサさんも私と同じく違うセカイから来たんですよね?」
「そうだけど」
「なら、ワタシとしてみませんか?」
「へ?」
突然の申し入れに俺は変な声を出してしまう。片言に聞こえるからか、本人が意識していなくても、そう言う風に聞こえてしまう。
勿論どういう風にとは口が裂けても言えないが。
「す、するって何を?」
「異界交流ですよ」
「異界交流?」
「ワタシが住んでいる世界では、いろいろな世界と交流する事が多かったんです。なので、こうしてツバサさんの言語に似たコトバを話しているのですが」
「あ、そうなの?」
何か不思議な力が働いていたのかと思っていたけど、そう言う事らしい。こうして会話している時点で、異世界交流は成立しているのだが、彼女が求めているのはそれ以上の事らしく、
「ではまずは脱いでください」
「え?」
「まずはオタガイの全てをさらけ出します。そこから交流は始まります」
「どういう交流なのそれ?!」
色々な意味で危険でハードな異界人同士の交流だった。
「さあ、脱いでください、さあ!」
「本当に待って! いくら何でそれは」
「ワタシはツバサさんの前で、全てをさらけ出すカクゴがあります! さあ、ツバサさんも」
俺の事は御構い無しと言わんばかりに、服を一枚ずつ脱ぎなら、こちらへ迫るユフィ。異世界の無人島で全裸の男女の交流。
どう考えてもアウト!
色々な意味でアウト!
「とりあえず今は勘弁してくれー!」
その日無人島では男の悲鳴が響き渡ったという。その後何があったかは誰も知らない。
「知らなくていい! 知らなくていいから!」
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別の意味でのサバイバルを無事切り抜けた後、俺達はとりあえず島の大半を占める森の中に足を踏み入れた。
「何だかんだ見た事がないドウブツばかりですね」
「ああ。でも今後ここで生き抜くなら、食料になる動物も見極めないとな」
「はい」
森の中を歩いていく中で、俺達は何度か見た事のない動物達に遭遇する。ただその殆どが草食動物なのか、襲われる事がなくとりあえず今の所は問題はない。
「そういえばツバサさんは、どうしてこの世界にやって来たんですか?」
更に歩みを進める中で、ようやく打ち解けて来たのかユフィは積極的に話しかけてくるようになって来た。元からそういう性格なのか、はたまた不安を紛らわすために話しかけて来ているのか、俺より彼女の方から話しかけてくる事が多い。
「自由な暮らしがしたかったから、かな」
「自由ですか?」
「何だかんだで色々束縛されがちな人生だったから、もっと自由に生きたいとか願ったんだ。その結果がこうなったんだけど」
「いいですね。私なんかは……」
「なんかは?」
「あ、いえ、ワスレテください」
ただ質問が多い割に、肝心の自分の事は教えてくれないので、どうしてもコミュニケーションをとる事が難しい。
今みたいに何度も誤魔化されてばかりでは、知りたい事も知らない。
(まあ出会った初日に、何でもかんでも話すわけないか)
「あ、ツバサさん、あれ」
森の中を歩いてしばらく、ユフィがあるものを見つける。
「森に入って一時間近く経って、ようやくか」
見つけたのは雨風がしのげそうな洞窟。とりあえず最低限の活動拠点は見つけておきたかったので、都合よく見つかってよかった。
ただ、森に入ってからそこそこ時間は経っているので、海への移動のしやすさを考慮した場所を見つけなけなければならないけど、とりあえずここなら寝泊まりはできそうだ。
「とりあえず仮の拠点はここにしよう。さっき近くに小川も見つけたから、水分とかもそこで取ってくるとして、問題はやっぱり食料だな」
「ワタシ料理はできるのですが、食材がないと」
「そうだよな。しかも料理以前に火も用意しないと」
「それならダイジョウブですよ」
ユフィは指を鳴らす。すると何もない空間から、突然火が出てきた。
世に言うそれは魔法というものだった。
「え? ユフィ魔法が使えるの?」
「はい。こういう初歩的なものなら使えますので、なにかと役に立てるかと」
「となると、やっぱり最初に必要なのは食材か」
この世界の食べ物の知識がない以上、自力で判断するしかないけど、とりあえず今食べられそうなのは小川を泳いでいた魚くらいだろう。
「よし、まずは食材を確保しに小川へ行こう」
「あの小川で何をするんですか?」
「魚釣りだよ、魚釣り」
「サカナツリ?」