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第18話Tigger&Cat

 悲鳴が聞こえた場所に俺たちが向かうと、ユフィ達がこの島の動物らしき何かに襲われていた。カグラが二人を守るようにして戦っているものの、かなり押されている。

 やはり彼女の本質は、所有者があることで発揮されるものらしい。


「三人を助けに行くぞ、ポロ!」


「うん!」


 すかさず俺とポロが三人を庇うように間に入りこむ。


「ツバサさん! ポロさん!」


「カグラ!」


「格好つけちゃって……分かってる!」


 カグラが刀へと変化して、俺はそれを手に取る。改めて敵を確認すると、どうやら日本で言う虎みたいな動物だ。かなり手強そうだ。


(こうしてちゃんと戦うことになるのは初めてだが、躊躇っている暇はない)


 今は目の前の敵に集中を。


「ひ、ひぃ、わ、わ、私に刀を向けないで、く、ください」


 目の前の敵に?


「わ、わ、私、気がついたら、こ、この島にいて……初めて私と同じ人間を見つけたから……」


 敵というか喋る虎?


「あれ、その声もしかしてターちゃん?」


「そこにいるのは、キャ、キャトラちゃん?」


 しかもキャトラと顔見知りらしい。


 つまり虎人間?


 ■□■□■□

「わ、私、きゃ、キャトラちゃんの友達の、タガーっていいます。そ、その、よろしくお願いします!」


 空もすっかり暗くなり始めた頃、拠点に戻ってきた俺達は、改めて虎人間のタガーから自己紹介を受ける。


「ターちゃんはアタシの親友なんだ。まさかこんなところで会うことになるとは思ってもいなかったけど」


「キャトラちゃんこそ、さ、最近姿を見せないと思ったら、こ、こんなところにいたなんて」


 親友らしい会話をしながら今日の食事をするキャトラとタガー。目の前で猫耳の人間とほぼ虎に近い人間が会話をしているのを見ていると、とてもシュールな光景だ。


「これで合計八人か……」


 そんな光景を眺めながら俺はぼやく。ここでの生活はまだ四日目。かろうじて釣ってきた魚や取った果物類で食事は繋いでいるが、人数が増えてしまえばそれだけ状況は変わってくる。


(天候だってこれから変化することが多いだろうし、拠点の完成を急がないと駄目だな)


 それに拠点以外にも色々な問題が浮かび上がってきた。ユフィ達が見つけた神殿の存在。そして、


「そういえば聞きそびれていたけど、ポロとキャトラはこの二日間どこにいたんだ?」


「あ、えっとそれは」


 先程チラッとポロが言っていた空間を裂いて脱出してきた、という話。彼女達はこの二日間、一体どこで時間を過ごしていたのだろうか。


「ボク達は第三者によって作られた異空間に閉じ込められていたんだ」


「異空間?」


 ポロはあのレンガ造りの建物の中ではなく、異空間という言葉でここまでの経緯を説明し始めた。


「ツバサも見たと思うけど、間違いなくあの場所に遺跡はあった。けどよく考えると外観と中が全くと言っていいほど一致しない」


「俺達は中までは見ていないけど、俺が見る限りだとただのレンガ造りの建物だったんだけど」


「でも建物の中は違った。多分ツバサ達は知らないと思うけど、あれはボク達の世界で言う遺跡に近いものだった」


「遺跡?」


 何となくポロが言う建物の中のイメージが湧く。ただそのイメージはあの建物の外観とはどうも一致しない。


「アタシ達はずっとあの中を歩き続けてたんだ。だけどいつになっても一本道が終わらなかった」


「一本道が終わらない?」


 それってつまり道がループし続けているってことなのだろうか。


(そういえばあの建物の入口は開けられないようになってたな)


 外観と一致しない内装


 ループし続ける一本道


 そして閉じられていた入口


「そういうことか……」


「どういう事なんですか? ツバサさん」


「ポロ達は第三者の誰かの手によって、本来とは違う場所、つまり異空間に閉じ込められたってことか?」


「うん。ボク達があの建物に入った直後に勝手に入口が閉められたんだ。最初はまさかとは思ってはいたんだけど、ループし続ける道と異空間という言葉を思い出して、確信した」


「だから空間を壊したって言っていたのか」


 それなら突然彼女達が姿を現したのにも納得がいく。だがそれが分かったことによって、新たな恐怖が生まれる。


「問題はその異空間を作り出せる誰かが、この島にいるって事だよな」


「うん。ただ」


「ただ?」


「あ、ううん、何でもない。とにかく今回の事も含めて、今後島を探索するときは気をつけた方がいい。今回はボクがいたから何とかなったけど、次戻ってこれる保証はどこにもないから」


 ポロが最後皆に忠告して、この話はお開き。各々が好きなように時間を過ごし、四日目を終えることになった。


 そしてこの島での生活も五日目を迎えた朝は、


「起きてくださいツバサさん」


「ん……どうしたユフィ」


「島の中心に何かが生えています」


「生えてるって……な、何だあれ?!」


 またもや波乱の幕開けとなる。


「な、何であれがここに」


 そう声を漏らしたのはポロ。


「知っているのかポロ」


「あれは……チビィが住んでいた家だよ」


「魔王が住んでいた家?」


 つまり魔王城?


「なああれ、本当に魔王城か?」


「うん」


「あの山の上にあるのが?」


「う、うん。山の上にあったから、それごとこの世界に来ちゃったんだと思う」


 けどその魔王城、本来この島の中心になかった山ごとこの島に転移してきたのか、高さだけは無駄にあるただの小さな一軒家だった。

 ちなみに俺とユフィが驚いていたのは山の方。小さな家なんか見えていなかった。


「とりあえず行ってみるか?」


「う、うん」


 次回、山の上の魔王城を攻略します。

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