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第15話そこにあったはずのもの

「じゃあ翼君はこの異世界?で四日も生活しているの?」


「そういう感じだな。今は誰もいないけど、仲間もいる」


「日本に戻る気は?」


「あると言えば嘘かもな。そもそもこれは俺が望んだ事だし」


「翼君が望んだ?」


 異世界転移がもたらした思わぬ再会。彼女は俺を探している内に迷い込んだと言っていたが、そもそもそんな事があり得てしまうのかと思ってしまう。

 俺は勝手に神様に転移させられたとはいえ、ちゃんと手順は踏んでいるし、その辺を歩いていただけで簡単に異世界にやって来れるとは普通じゃ考えられない。


「元の生活で何か嫌な事があったの? そうでなければ、こんな所に来ちゃったりしないし。もしかしてまだ、あの事を」


「そうじゃないよ。ただ、俺は自由に生きたいと思ったら、何か勝手に神様が叶えてくれたみたいでさ」


「ごめん、ちょっと何を言っているかわからないんだけど」


「まあ、普通はそうなるよな」


「じゃあ戻る気は無いって事?」


「無いというか、多分簡単には戻れないと思う」


「それって、まさか私も?」


「残念だけど」


 何せまだこの世界に来て四日しか経っていないのだから、この世界の事も島の事も知らない事の方が多い。


「私も戻らないって、どうするの?! 翼君はともかくとして私普通に明日も学校あるのに」


「こればかりは申し訳ないけど、今は俺にはどうにもできない。こんな事に巻き込んで悪い!」


 俺は頭を下げる。経緯はともあれ、彼女がこの世界にやって来てしまったのは間違いなく俺のせいだ。


「ただ、巻き込んでしまった以上は俺も責任を持って、お前を日本に帰れるように努力する! だからそれまででもいいから、俺達に協力してくれないか?」


「協力って具体的に何をするの? そういえばさっきも仲間がいるとか言っていたけど」


「今俺達はこの場所で協力しあって生きているんだ。まだ作りかけの拠点もその証拠だし、この四日間自給自足の生活を皆でしている」


「ねえ、それって自由になったって言えるの?」


「そこは聞かないでくれ。言いたい気持ちは分かるけど」


 それは俺も何度も考えた事だけど、あえて触れてこなかったのだから、そっとしておいてほしい。


「まあ、戻れないなら仕方がないし、翼君達に協力するよ。その代わり約束は守ってね」


「ありがとう、葵」


 思わぬ再会から四日目が始まり、長い間会っていなかった葵が新たに仲間として加わった。しかしそれ以上の進展はなく、このまま何もせずに一日を過ごすのもよくないので、俺は葵を連れて五人を探しに行く事になった。


 ■□■□■□

 どれくらいの時間か分からないくらい、私とカグラさんは書庫にある本を読みあさっていた。最初に見つけた自分の世界の本以外にも、見た事がない文字で書かれていた本なども沢山置いてあり、私の世界以外の本がこの書庫にあるのは明らかだった。


「もうどのくらいの時間が経ちましたか? カグラさん」


「分からない。でもかなりの時間が経っていると思う。多分ほぼ一日くらいは」


「そんなに私達本を読んでいたんですか?」


「そのくらいの時間読まずにはいられなかったって事でしょ? だって、ここに置いてある本は明らかにおかしいし」


「確かにそうですよね。でも、そろそろ戻らないとツバサさんとユズが心配しますよね」


「そうね。そろそろ戻ろうか拠点に」


 ようやくと言わんばかりに、私達は立ち上がる。そういえばそもそも私達がこの神殿にやって来たのは、私の事を呼んだあの声が気になって、入ったわけだけどそれが聞こえてくる事はあれから一度もなかった。


(気のせいではないはずなのに、どうして聞こえなくなったのでしょうか……)


 落ちた穴から、二人で協力して地上へと上がる。私は上がった後に改めて、神殿の中を見回した。


(見た目はかなり年季の入った神殿ですが、どうしてこんなものが生えてきたのでしょうか)


 突然の地震により生えてきた神殿。さらにその中にあった書庫には、私の事やカグラさんの事に関する本が保管されていた。

 つまりはあの本達は、私達がこの島に来るまで地下で眠っていた事になる。そしてこの神殿が年季の入ったものである以上は、昔から神殿も本も存在していた事にもなる。


「これは日を改めて調べた方がいいかもしれませんね」


「ええ。この神殿が存在しているのは、偶然では説明できないし、もう一回調べてみないと」


 まだ色々と気になる事が多いものの、とりあえず私達は神殿を後にする。


「ユフィ様!」


 神殿を出た直後、少し遠くからユズの声がする。心配せずにはいられなかったのか、ツバサさんを置いて私達を探しにきてしまったらしい。


「ユズ!」


「もう、心配したんですよ。一日戻らないから、何かあったのかと思って」


「やっぱり一日も経っていたんですね。心配をさせてしまい、本当にすいません、ユズ」


「何かあったんですか? お怪我とかをしていらしたら、すぐにでも治療を」


「け、怪我とかはしていないので大丈夫です。それより気になるものを見つけたんですよ」


 私は先程出てきた神殿を指差す。しかし、


「あれ?」


「え?」


 つい数分前に出てきた神殿が何故かそこにはなかった。私とカグラさんはその事にただただ驚く。


「どうかされましたか?」


「神殿が……どうして」

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