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第14話再会は突然に

 ボク達が閉じ込められた遺跡は、敵の気配はないもののかなりの深さがあった。そしてその遺跡は、地下に降りていく構造になっていて、ボク達は島の地下を歩いている事になる。


「ねえ、もうかなり歩いたけど、出口とかはないの?」


「今のところはそういうのはなさそうだね。でも流石に出口がないっと事はないと思うんだけど」


 キャトラの疑問に私はそう答えたものの、若干ながらそれも怪しく思えてきた。今も言ったように、この遺跡はひたすら地下へと進んでいる。となると、出口があるならそれは地下になる。


(まだ分かりきった事ではないけど、もし出口があるならどこに出るんだろう)


 そもそもこの遺跡が何故存在するのかとか、色々と疑問も多い。そしてこの遺跡の奥には、一体何が存在するのか。


「アタシ歩くの疲れちゃった。少し休まない?」


「そうだね。拠点から含めたらもうかなりな距離歩いていると思うし、休もうか」


 周囲に他の気配がない事を確認した後、ボクは瓦礫に腰をかける。キャトラも近くに腰をかける。まさかちょっとした島の探索が、こんな風になってしまうとはボクも予想できなかった。

 もうこの遺跡をどれくらい歩いたかも分からなくなっているし、キャトラが精神的に疲れているのも見て分かる。


「ポロはこういう場所はやっぱり慣れてるの?」


「まあね。ボクはこういう場所を探検するのが大好きなんだ。キャトラは?」


「アタシはこういう場所とは縁遠かったから、やっぱり怖いんだよね。だってこういう場所って、確実に怖いものが出るのが定石でしょ?」


「もしかしてキャトラは怖いものが苦手?」


「当たり前でしょ。アタシだって女の子なんだから」


「普通はそうだよね」


 ボクも一応女の子ではあるけど、こういう身である以上そういうものは、もう何度も見てきたので恐怖を感じない。魔王と接しても何も怖く感じなくなってしまったくらい。


「ツバサとかはどうなのかな」


「男の子だしそういうのは平気だったりするんじゃないかな? この前も怪物に対して、一歩も引かないで戦ったし」


「そういえばアタシ達が知らない間に、そんな事があったんだっけ」


「うん。ボクも勇者の剣を持っていかなかったから、まともに戦えなくて」


「魔法は使わなかったの?」


「そこにはチビィとツバサがいたからね。二次被害も考えたら、簡単には使えないかなって」


 正確には水中だったので、詠唱もろくに出来なかったからなのだけど、ここは一応勇者として威厳は保っておきたい。


「そういう気遣いもできるあたり、流石勇者なのね」


「そ、そうだね。でもまだ魔王も倒せてないから、勇者って呼ばれるのは少し恥ずかしいかな」


「恥ずかしがる事なんて何もないのに。アタシなんかと比べたら、すごいよポロは」


「そういうポロは何かしていたの?」


 質問されてばかりしていたので、今度はボクの方か質問をする。


「アタシはこれといって誇れるような事はしていないよ。強いて言うなら、獣人達の長をしていたくらいかな」


「それって十分すごいと思うけどボクは。だって皆をまとめる立場なんでしょ?」


「まとめるって言っても、アタシは人の上に立つのは苦手だから、そこまで大したことは出来ていないんだけど」


 少し照れながらキャトラは言う。彼女のように猫耳が生えている人間は、ボクの世界では存在しなかったので、こうして触れ合えるのもいい経験になるから、こう言う何気ない会話もとても有意義に感じる。


「さてと、少し休んだし先に」


 しばらく時間が経過した後、探索を再開しようと言おうとした時、ボクはキャトラがいつの間にか寝ていることに気がついた。


(朝から動いていたし、再開は目を覚ましてからにしようか)


 ボクそれに甘え、周囲を警戒しながらも少しの間の休息を取ることにしたのであった。


 ■□■□■□

 四日目の朝。誰も戻ってきていない事、ユズの姿がない事を確認した俺は、これからどうするべきか今一度見直していた。


(これはある意味異常事態だよな)


 帰ってこれていない以上、何かがあったのかはハッキリしているのだが、その何かが分からない以上、俺もどう行動すればいいか分からない。

 そんな時だった。ふと近くの草むらから音がしたのは。


「誰だ」


「わ、わ、私は決して怪しものではないんです。だからどうか、命だけは」


 俺の声にびっくりして飛び出してきた影は、とても見覚えのある人物だった。


「あ、葵?」


「え? つ、翼君?」


 若草葵(わかぐさあおい)


 黒髪の肩に届かない程度の長さの髪をした彼女は、俺の幼馴染だった。ある事がキッカケで、ここ数年縁遠い存在になってしまっていたのだが、まさかこんな場所で再会する事になるなんて思ってもいなかった。


「ど、どうして葵がこの島にいるんだよ」


「それは私の台詞だよ。お母さんから翼君が行方不明だって聞いていたから、探していたのに」


「行方不明? 俺が?」


「何をとぼけてるのよ。もう一週間も姿がないから、ニュースにもなっていて、皆心配していたんだから!」


「一週間?」


 まだこちらの世界では四日しか経ってない。いや、それはいいとして、行方不明扱いになるなんて考えてもいなかったから、もしかしたらこの転移は予想よりも酷い事になっているのかもしれない。


「翼君、ここはどこなの? 気がついたら私こんな所に迷い込んでて、車も何も通っていなくて、すごく怖かったんだから!」


「迷い込んだって、ここにか?」


「だからどこなの?」


「ここは……異世界だよ」

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