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第13話消した事実が隠された場所

「遅いな、四人とも」


 ユズが気絶してからしばらく、もう間も無く夕方になろうとしているのに、誰一人として帰って来る気配がなかった。

 俺はというと、背中に受けた木の痛みが抜けず、なかなか作業が進まずに、今日の目標すら達成できない状態だった。


「あれ……私……」


「ようやく目を覚ましたか、ユズ」


 そんな中、しばらく気を失っていたユズが目を覚まし、俺は彼女の顔を覗き込んだ。


「ツバサ……って、な、な、何であなたがここにいるんですか?!」


「落ち着け、元から俺とお前しかここにいない」


「そ、そうでしたね」


 多分目を覚まして一番最初に俺の顔を見たから動転したのだろう、慌てて後ずさりをするものの、ユズはすぐに落ち着きを取り戻す。


「そういえば私、気を失ったんでしたっけ」


「ああ。流石に突然のことだったから驚いたけど、今はそれ以上に心配事が起きた」


「心配事?」


「ユフィ達もポロ達もどちらもまだ帰ってきてないんだ」


「ユフィ様様が?!」


 また驚くユズ。まあ、今度は驚いても当然の事なので、むしろ少しだけ落ち着いている俺の方がおかしく思える。


「わ、わ、私探しに行ってきます! 何があったか分かりませんが、私が付いていないと」


「待ったユズ、それですれ違いになったりしたら意味がない。ここは冷静に動こう」


「ツバサはどうしてそんなに冷静でいられるんですか?! もしもの事が起きたら、私がどう責任を取れば……」


「もしもの事が起きないためにも、一度冷静になるんだよ。これで俺達が変に動いて、ミイラ取りがミイラになったら、意味がない」


「そ、そうは言いますが」


 ユズが心配な気持ちも分かるし、俺も同じくらい心配している。けどもしこちらが動いて、事が大きくなってしまったらそれでは全くの意味がない。

 せめて俺達が今出来ることといえば、その帰りを信じて待つ以外に選択肢がない。


「とりあえずここは信じて待とう。俺達に今出来る事はそれ以外にない」


「は、はい」


 けど信じて待った結果、皮肉にも四人はこの日帰って来る事はなかった。流石に痺れを切らしてしまったのか、翌朝目を覚ますとユズの姿はなく、サバイバル生活四日目にして俺達は初めてバラバラになってしまった。


「(何がどうなっているんだ)


 俺も流石にここで待ち続けるのにも限界を迎えた時、ようやく拠点に人の姿が現れたのだが、


「葵? お前がどうして」


「つ、翼?!」


 またそれが新たな波乱を生み出すことになろうとは、この時誰の誰もが思ってもいなかった。


 ■□■□■□

「私を呼ぶのは誰なんですか」


「ユフィ、待ってって!」


 謎の神殿が現れると共に、私の耳元に届いた謎の声。私はその声に誘われるかのように、神殿にへと足を踏み入れたのだけれど、中には人の姿どころか何か特別なものも置いてある様子ではなかった。


「随分と中身のない建物なんですね、ここ」


「外観が派手な割にはって感じがするけど、これでも一応は神殿っぽいね。それよりユフィ、さっきから何かの声を聞いたみたいな反応をしているけど、何か聞こえるの?」


「分かりません、私の空耳かもしれませんが、どうしても気になる事がありまして」


「気になる事?」


「詳しくは言えませんが、私の事を」


 と、私の言葉の途中で再び神殿が大きく揺れだした。今度は先程よりも大きい。


「どうしたの?」


「また揺れているんです。しかも今度はかなり大きくて、きゃあ」


「ユフィ!」


 私の足元が突然崩れる。カグラさんが何とか私の腕を掴んだが、落下の勢いに堪えきれず、私達二人は一緒に崩れた床の下へと落下してしまう。


「い、いたた。どうして突然床が」


「真っ暗な場所ですね、今火を灯します」


 私は火の魔法を使って、暗い空間を炎で照らす。すると私達を待っていたのは、何とも意味ありげな書庫だった。


「神殿の下に、何でこんな場所が」


「あれ? この本……」


 カグラさんが書庫の本棚に入っていた本を取り出して、何かに気づく。そして本を開くと、パラパラと読み始めた。


「やっぱりこの本、私達の事について書いてある」


「その、刀魂ノ巫女についてですか?」


「うん。でもどうしてそんな本が、この異世界に?」


 私も少し気になったので、同じく思い当たる本がないか書庫を漁ってみる。


(あの声の主が私の事を知っていた以上、もしかしたらこの世界にも私の事が……)


 そう考えると居ても立っても居られずに、本を夢中になって探してみた。そしてやはりというべきか、一冊だけ見つかった。


「どうしてこの本がこの場所に」


「何か見つかったの?」


「は、はい。でもこの本はもう存在するはずがないんですよ」


「存在するはずがない? それはどういう事?」


「分かりやすく言うなら、もう処分されているはずのものなんです。だからこの本が見つかる事自体が不自然なんですよ」


 私が手に取ったとある本。そこに記されているの、私の中に流れている血と、その意味。私はその本を見つけてしまい、もう二度と見たくないと処分した。

 それなのにどうして、それがこんな場所に……。


(この世界、いえこの島は一体どう言う仕組みになっていか、これは調べる必要があるかもしれません……)

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