裏話 女子会とキノコのサバイバル
裏話① 第一回異世界女子会
ツバサさんが勇者と魔王を引き連れて食材を取りに行っている間、私とユズとキャトラさんの三人は、設計図を考えながらも雑談をしていた。
「ファッションですか?」
「うん。あまりに気にしていなかったけど、ユフィが着ているその服って、ドレスだよね?」
「正確に言えばドレスに近いものですが。キャトラさんこそ、その格好は見た事ない服ですね」
「これは多分、アタシの世界にしかない服なんだ」
雑談の話題は、私達がそれぞれ着ている服装について。突然の転移事もあって、私達はこの二日着替えができていなく、ありのままの服を着ていた。
私はキャトラさんが言っていたドレス、ユズはメイド服。そしてキャトラさんは、私が持っている知識の中では知らない服装をしていた。
「ポロは鎧とその下はインナー。チビィとツバサの服装は、アタシは全く見た事ないなぁ」
「キャトラさんも見た事がないんですか? 実は私もそうなんですけど」
「あの男の服装は気にしなくていいですよユフィ様。どうせ得体の知れないものしか着ていないんですから」
「随分な物言いをしますね、ユズは相変わらず」
私はやれやれと溜息を吐く。昨日はツバサさんに対して、言葉が不自由だったのに、今日になってみればかなり毒を吐くようになっていた。
(これが争いを産まなければいいのですが……)
「そう考えると、やっぱり私達は住んでいた世界がそれぞれ違うのね。あまり信じられないけど」
「でも夢なら、覚めた時点で元世界に戻っていると思いますが」
「分かっているよ、だから信じたくないのアタシは。ユフィはどう思っているの?」
「私は……結果としてよかったと思っています」
「え? どうして?」
「不自由な生活ばかりだったでしたから」
私は話しながらも少しだけ元の生活の暮らしを思い出す。こうして異世界にやって来なければ、今もあの暮らしが続いていたと考えると、本当にいいきっかけなったと今も思っている。
「ユフィ様、やっぱりそう感じていたんですね」
それに対してユズが、小さく呟く。彼女は私にとってとても心強い味方だけど、彼女も元を辿れば、
「他の皆はどう思っているのかな」
「ツバサさんもどちらかといえば、私と同じみたいでしたよ。昨日そう話していました」
「ツバサが? 本当変な男だね」
「変でしょうか? 私は悪くないと思いますが」
無意識に口を滑らせる私。
「もしかしてユフィ、ツバサの事」
「どうしてそうなるんですか?! 別に私は悪くないと言っただけじゃないですか」
「その気持ちは勿論理解できるけどね」
「ユフィ様の心って、随分と軽いんですね」
「それはどういう意味ですか? ユズ」
結局私は、このさりげない一言で、しばらくからかわれ続けるのであった。
(別に何もおかしな事を言っていないのに、どうして)
裏話② マッシュルームパニック
「どうしてこうなった」
二日目の夜。食事を終えた後、俺はそう呟いた。確かにチビィが抜けて、皆が意気消沈していたから、ご飯でも食べて少しでも元気になってもらおう、そう言いだしたのは俺だ。
けどその結果がこれだ。
「あ、ツバサくぅん、私のキノコを取り上げないでくださいよぉ」
「にゃはは、ツバサ、アタシにそのキノコを寄越せぇ」
「ユフィ、もうキノコ無いからな! それ絶対幻覚を見てるからな! あと、キャトラは捉え方によってはそれアウトだから!」
ユフィは酔っ払いに近い何か、キャトラに至っては素(?)が出てしまっている。
(あんな笑い方する人が本当にいるとは思っていなかったな……)
何かのアニメのキャラクターで見たことある以外では、本当に初めてかもしれない。まあ、当たり前の話ではあるんだけど。
「これどこから見ても怪しいキノコだよね。どうして気づかなかったの?」
「これ怪しいか? 俺の世界ではこの色のキノコは普通に食べれたぞ」
「ここ、全く違う世界だから! ボクはまずこんなキノコ見た事ないよ!」
「そ、そうか」
キャトラの怒涛のツッコミにより、俺はしょんぼりとしてしまう。彼女も一緒に採集していたのに、そこまで言わなくても……。
「ツバサ、これはあなたの仕業ですか?! よくもユフィ様を!」
「いや、確かに俺のせいではあるけど、知識がなかっただけなんだって! だから勝手にポロの剣をこちらに向けないでくれ!」
「殺っちゃって、ユズ」
「おい勇者、お前も責任があるだろ!」
「もうツバサさぁん、無視しないでくださいよぉ」
「ツバサぁ、キノコをくれぇ」
「そこの二人も黙っててくれ!」
この二人の暴走は、皆が眠りにつくまで続き、俺はその相手にかなりの体力を使った。だからその後にカグラが目の前に現れた時は、本当はかなり疲れ切っていたと言ってもおかしくない。
その疲れも、突然のキスによって吹き飛んだんだけど。
「な、お、お、お前、今何したんだよ?」
「何って契約の証だよ。これから私とツバサ君は男女の仲になるんだから」
怪物の対決とかよりも、その裏で起きたことの方が俺を精神的にも、身体的にも疲れさせられてしまったのだった。
「これもサバイバルか……」
「何か言った?」
「何でもない」