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 「歌鈴! ……歌鈴!? 」


女性は、一人の少女に声をかけているが、少女は全く反応しない。ずっと金の砂時計を眺めているばかりだ。


 「せんせーどうしたの? 」


小さな男の子が、先生と呼んだ女性へと走ってきた。


「それがね……呼んでも歌鈴、反応しないのよ。13年まえ、変な男の子に金の砂時計と懐中時計をもらってから、ずっとそれにべったりなのよ」


女性はため息とともに言った。

 その途端、歌鈴と呼ばれた少女は振り向いて顔をキッとさせた。


「変じゃないもん! 」


「ちょっと歌鈴!? 聞こえてたのならちゃんと返事をして頂戴! ここは孤児院で、ちっさい子たちもたくさんいるんだから、先生も暇じゃないのよ」


「今聞こえた」


歌鈴は再び元の状態に戻り、うっとりと砂時計を見つめた。

 先生はまたため息をつき、今度は近くに行き、声をかけた。


「私、食材とかトイレットペーパーとか、たくさん買ってくるから、子供たちの面倒をお願いね。愛海先生、居たらよかったんだけどね。辞めちゃったからね……」


「はあ~い」


愛海先生とは、歌鈴が少年と川に行くことを秘密で許可してくれた先生のことだ。でも、後で小さい子供を大人なしで川に行かせたことがバレて、クビになった。

 先生が出て行ってから、歌鈴はちぇっと舌打ちした。


「よく言うよ。辞めさせたのは自分のくせに」


ただ、川に行ったのは歌鈴だったため、罪悪感はあった。


 「でも、あと少しでこの砂は全部下に落ちる」


楽しみで仕方がない。そこでふと、不安になった。あの少年は夢だったのでは? 約束を覚えているだろうか? と。

 その時、歌鈴の腕を強く引く者がいた。


「ねぇ歌鈴お姉ちゃん! 遊んで、遊んで! 」


さっきの男の子だった。歌鈴は砂時計が落ちそうになるのを必死で守りながら、にっこりと笑って返事をした。


「わかったよ。これを部屋に置いてくるから、ちょっとまっててね」


 歌鈴は小さい子供に当たらないように注意しながら走り、自分の部屋へ向かった。

 砂時計と、手に握りしめていた懐中時計を机の上に大事そうに置き、男の子の元へ戻った。


「さあ、何して遊ぼうか? 」


 そう訊いたとき、他の子供たちも集まってきた。みんな、歌鈴に遊んでほしいと頼んできた。そのため、歌鈴は少し考えた後、絵本を読むことにした。


「昔むかし、あるところに……~



                          ~めでたしめでたし」


 歌鈴が絵本を読み終えると、うっとりと静かに聞いていた子供たちは次々に絵本を持ってきた。

 歌鈴がどれから読もうか迷っているとき、玄関に何かの陰が横切ったのが見えた。その時、普通の人影なら歌鈴は反応しなかった。でも、それが金髪だったから、歌鈴は反応した。


「はい、今日はおしまい! お姉ちゃんはちょっとやることがあるから、出かけてくるね! 」


子供たちは不満の声を漏らしたが、子供たちの中で最年長の女の子に留守を頼み、歌鈴は部屋に砂時計と懐中時計を取りに行った。


 「確か、あの人影は川の方向に向かっていた。川に行ってみよう」


玄関から出るとき、二つの大事なものをぎゅっと抱きしめ、ぼそっとつぶやいた。


「そして、いなかったら、あきらめて帰ってこよう」


 歌鈴は走って川に向かった。走っていた最中、歌鈴は夢中になりすぎて、道中のことなんかまったく目に入ってなかった。

 川に着き、川に向かう金の髪を見たとき、気づいたら叫んだいた。

 土手を乗り越えて、その金の髪を持つ人に抱き着いた。


「まって! 」


「っ!? 」


その人は驚いて足を止めた。

 振り向いたその人は……






          あの時と全く変わらない、金髪の美しい少年だった。





こんにちは、桜騎です!久しぶりの投稿です。黒ヴァンと同時進行だと言っていたのに、待っていてくださったかた、すみません。これからもよろしくお願いします!

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