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結果

 「俺たちは、なんで嘘を吐いたのか聞いてるんだよな。玄関の近くに捨てたのを知らなかったとかではなく、この虫の存在を知っていて、この事に関して少しでも知っているのかって聞きたいんだよ」


「知ってる……わ」


「それで、何で嘘ついたか」


「だって、怒ってたから」


 「そうか。それは悪かった。でも怒っていなかったんだ。驚いて声が大きくなっていただけで」


「それで? これは何だ」


5号の声がいつもより一段低い。もし今の5号を絵に描いたら、額のあたりが青くなっているのだろうか。


「あ、あの、それは」


私が説明しようとすると雅が遮った。


「この子がいきなり虫を捕まえてきて、切って遊び始めたの。それで、気持ち悪かったから庭に捨ててきなさいって言ったのよ」


それを聞いた咲良が何度もうなずく。


「そうそう。人間界ではよくこうして遊ぶんだって聞いて、そういうのは否定したくないけど、この世界では違うからって」


「あ、ばか」


5号が眉間にしわを寄せた。5号の思っていることはわかる。これはあまりにも苦しい言い訳すぎないか。


 「私はよく人間界へ行くが、そんな話は全く聞いたことがないな。子供たちは、こうえんというところで元気に遊んでいたぞ。確かに、虫取りと言った遊びはあるが、あれは確か、捕まえて飼ったりするやつでは……?」


5号が私を見た。


「そうだね。虫を捕まえて、餌をあげたり、自然に返したりするの。男の子がそうやって遊ぶことが多いかな」


「だと。か……鈴鹿は女子だが? よく、こうして遊ぶのなら、俺が見たことないのはおかしくないか?」


「あ、は……」


咲良は完全に真っ青になっていた。


 「ま、まあさ、最近はサイコパスって言葉もあるし、そういう遊びも新しく出来たりするんじゃないかな?」


「それを、お前がやるのか? 全くやりそうに見えないが」


5号の冷たい目が向けられる。正直、これにはひやっとした。


 「まあ、そういう遊びがあるかどうかはさて置き、お前はどうしてこんなことをしたんだ?」


これには、どう答えよう? 正直な事を言ったら、きっと後でこの二人からいろいろ言われるだろう。そして、虫を刻む以上につらいことを思いつくのだろうか?


「えっと……」


「それは、好きな遊びだったからでしょ? じゃなきゃやらないわよ!」


「黙れ。今は雅に訊いていない」


雅がひゅっと息を吸う音が聞こえた。


「で、何故だ」


好きな遊びだったから、と答えようか? そうしたら、きっと彼女たちは安心するだろう。


「……好きな、遊びだったから」


「わかった」


5号が顔をあげた。

 私がほっと息を吐いたのも束の間。次の瞬間には雅の襟首をつかみあげていた。


「嘘だな」


「5号、なんでっ」


「あの虫が今この世界で簡単に手に入るわけがない。そして、あれは店で食用として売られている虫の特徴にすべて当てはまった。この世界の金を持っていない鈴鹿が、あの虫を買えるわけないだろう」


あれ、食用だったの? という事は、私が嘘を吐いたこともバレる。しまった。というよりも、この事は彼女たちは知らなかったのだろうか?


 「5号、止めてよ! 雅さんが苦しんでる!」


私を一瞥した後に乱暴に雅は放された。咳きこむ雅の背をさする咲良も同じような顔をしていた。


「また嘘を吐くのか? 今からこいつと直接話す。おまえたちは何も喋るな」


こいつって、私? どうしよう。どう答えよう?


 「本当のことを言え」


5号がさっき雅の前でしたような顔でそんなことを言ってくる。5号が怖い。声が上手く出てくれなかった。


「おい、5号。怖がってるだろ。もう少し優しく聞いてやれよ」


「こいつを連れてきたのは私だ。もしこいつにつらい思いをさせていた時正直に話してもらえなければ、解決はできないだろう」


「まあそれはそうなんだけどな、鈴鹿は5号の事をほとんど知らないから、5号が心配しているんだってわかりにくいんだ。心配してくれているってわかったら、鈴鹿も本当のことを話してくれるだろ? そうだよな?」


56号が振り返って同意を求めてきた。56号が優しいことを言ってくれているようだが、顔は怖い。


「わかった、正直に話す」


ごめんなさい。












 本当のことを話し終えて、それでもまだすっきりしなかった。昨日の夜、自分が可哀そうだから虫に同情するようなことを言うんだって指摘されて否定できなかったから、被害者の顔をしていたくない。そのことを読んだように、56号が私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。


「虫を刻んだことは気にするな。食用だから、誰に買われてもああなってしまうんだ。でも、外にそのまま捨てておくのだけはやめような。墓を作ろうか」


「うん。そうする」


申し訳なかった。しないこともできたのに、切り刻んでしまったから。でも、その申し訳ないと思う気持ちも、自分が満足したいだけなんじゃないかって思えてしまう。


 「悪い、鈴鹿。俺も一緒に作ってやりたいけど、少しやることがあるんだ。先に行っててくれるか。庭の好きなところ使ってくれていいから」


「わかった。ありがとう」


二人の視線に見送られて、玄関のドアを閉める瞬間、聞こえてしまった。56号の「性格悪い奴と結婚なんかしたくない」と言った冷めた声が。

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