第78回 自分の作品の幅を広げたい人へ
皆さん、こんにちは。実に2か月ぶりの文芸コラムの更新となりました。Kobitoです。
面白そうなテーマが見つかるまで、のんびり待っていたら、思い付かないまま、いつの間にか月日だけが経っていました。^^;
このコラム連載の小説情報のキーワードには、「絵本評論」と書いてあるので、絵本に関する事を、そろそろ本格的に取り上げてみようかなとも思ったんですが、これは正確を期するために、調べ物をしたりしないといけないテーマなので、もう少し気持ちと時間に余裕のある時に取り組みたいと思います。
というわけで、気持ちと時間に余裕のない今回は、自分の経験に基づいた自己啓発的な内容を書いてみます。
題して、『自分の作品の幅を広げたい人へ』です。
幅を広げる、といっても、小説ページの本文の横幅を広げる方法、とかではないですよ。
誰でもそうではないかと思うんですが、創作を始めたばかりの頃は、まず、好きなジャンルの、好きな設定の、好きな文体の、好きなストーリー展開の話を書く事で、楽しみを見いだしますよね。
大抵は、お気に入りの他者作品からかなりの影響を受けた、半分二次創作みたいな内容になるんですが、文芸にしても、音楽や漫画など他の分野の趣味にしても、初めはみんな、他者作品の模倣から、基礎を学んで行くのが常で、真似を否定していては、何も始められない、という事になりますから、そこは、誰がなんと言おうと、あまり気にせずに存分に楽しめばいいのだと思います。
で、ある程度、物語を作るのに手慣れて来ると、今度は、オリジナルな部分を増やして行って、自分だけの独自のストーリーを編み出すことに、創作の意義を感じるようになって行きますよね。
実際、この辺になると、創作家らしい気概のようなものも、芽ばえて来ます。
「こういう持ち味の作品を書いて行きたい。」とか、「こういう作品だけは書きたくない。」とか。
そして、またいくつかの作品を完成に導いて、手持ちの作品数が二桁に乗って、「自分、なかなかやるやん。」と、自信もある程度付いて来ると、こんな風な思いが、心に訪れる事があるかもしれません。
「これまでの作品は、ジャンルとか雰囲気とか、自分の好きな方向性にこだわって書いて来たけど、似たような内容が多いなぁ。少し、違う感じの作品も、書いてみようかなぁ。」
例えば、私は童話を書くのが一番好きなんですが、やっぱり、童話ばかり書いていると、気持ち的にも、作品的にも、新鮮味が無くなって来て、何となく物足りない感じになって来ます。
もちろん、同じジャンルで、同傾向の作品を書き続けても、ちっとも飽きない、という人もいるでしょうから、そういう人は、これまで通り、自分の好きなように創作を楽しめば良いのです。
ここからの話は、現状に飽きたらずに、新しい表現に挑戦してみたい、と思っている人に向けて書きます。
小説家になろうの私のマイページの、シリーズ一覧を見てもらうと分かりますが、私はこれまでに、童話だけでなく、色んなジャンルの作品を書いて来ています。
ただ自分好みのジャンルや方向性を選んで書いて来たら、自然とバラエティー豊かになった、という面もありますが、それだけではありません。
意識的に、色んなジャンルに挑戦しようとして、努力をして来た結果、でもあるんです。
中には、歴史小説なんていう、普段全く読まないジャンルの作品まで、書いていたりします。
こういう、苦手とするジャンルへの挑戦は、小説の技術を磨く鍛練になりますし、頑張って書き上げる事によって、執筆活動を続ける上での自信にもつながります。
また、これは最近の事なんですが、活動報告を通じて、他のユーザーさんたちと協力して、リレー小説なる共同作品の制作にも挑戦しました。
リレー小説とは、複数の書き手さんがリレー形式で物語を書き綴って行く手法で完成させる作品の事です。
ご興味があれば、下記のURLから、どんなものか、試しに読みに行ってみて下さい。
リレー小説 『双子の天使 ~不幸な運転手~』
https://ncode.syosetu.com/n7607gf/
この作品では、私は普段のやや抑制した、真面目な表現から離れて、ハチャメチャなおふざけに興じています。
実は、私もこういう羽目を外したコメディ表現が本来嫌いではないんですが、普段愛読する宮沢賢治の作品の清廉な美しさに対する憧れから、彼にならって、これまでは意識的に避けていた方向性の表現でもあったんです。
でも、参加された皆さんの自由奔放さにほだされて、思い切って自分を解放した結果、非常に楽しく共作に興じる事ができました。
共作が進行する中で、思ったのは、私がこういう乗りの表現を軽んじて、極力避けてきた結果、結局は、自分の持ち味の一つを有効活用できなくして、自分に限界を作ってしまっていたのではないか、という事です。
これからは、こういうナンセンスコメディを量産する、という事はないにしても^^、趣味の文芸なのだから、肩ひじ張らずに書きたいものを書こう、という気持ちを、新たにさせてもらえた、そんなありがたい体験になりました。
参加された皆さん、その節は本当にありがとうございました。^^
こんな風に、新しい方向性で作品を書いてみる、というのは、自分にとって気付きやメリットの色々ある、有意義な取り組みなのです。
いつも成功して、作品を完成させることができる、とは限りませんが、失敗したって構わない趣味の世界の事ですから、もし、何か普段とは違う作風のアイデアが胸の内にあるのなら、自分の作品の幅を広げるためにも、試しに思い切って第一歩を踏み出して、チャレンジを楽しんでみてはいかがでしょうか?