第73回 猫子の絵画塾リターンズ (作・古寺猫子)
皆様こんにちは。美猫の古寺猫子です。
執筆途中の最高傑作の小説を全て消去してしまうという、衝撃のアクシデントから早、ひと月あまり。
皆様から頂いた温かい励ましのお言葉のおかげで、心の痛手が少しずつ癒えてまいりましたので、リハビリも兼ねて、お礼かたがた、再びこのコラムに参上させて頂く事にいたしました。
その節は、本当にありがとうございました。
初めての大失敗に、打ちひしがれるばかりだった私に、お日さまのように温かな光を投げかけて下さった皆様。このご恩は、決して忘れません。
皆様も、こういった大災難や大波乱を幾度も幾度も乗り越えながら、日夜創作活動にまい進しておられるのでしょうね。
一度の失敗で、へこたれているようでは、まだまだ見習い書き手の端くれとも言えないという事なのでしょう。
どんな趣味も、極めようとすれば道は長いのですから、一日半歩、三日で一歩、一歩さがって半歩進む、という、気の長い心がけで頑張らなければいけません。
とはいえ、あのような形で大きくくじかれた創作意欲を、何事もなかったかのように取り戻すなんて、よほど根性が座った方でなければ無理というものです。
特に、私のようにガラス細工の繊細でピュアな心を持った美猫ですと、まずは傷付いた心を癒すところから始めなければ、以前のような前向きな気持ちで再出発することは難しい、と言えるでしょう。
そこで、今回は、皆さんにご無沙汰していた間に、手すさびのつもりで描いていた落書きの絵をご覧頂いて、気持ちを切り替えるきっかけにさせて頂ければと思うのですが、いかがでしょう?
少々アバンギャルドな作品や、デカダンな作品や、デコポンな作品などもありますが、知られざる猫の深層心理を知る貴重な機会として、また、私の心の回復の過程のひとまずのご報告として、応援して下さった皆様に、楽しんで頂ければ幸いです。
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【その1】『古寺猫子』
絵と言いながら、冒頭から字の練習の様子をご覧いただく事をお許し下さい。
一回目の猫子の絵画塾(第31回のコラムをご参照下さい)の際にお話ししましたが、私にはかつて、猫の姿の時も、人間に化けている時も、手先の器用さが猫並み、という弱点がありました。
幸い、手にペンや筆をくくりつけるという方法を見出したおかげで、眠れる才能がポンポンと開花いたしまして、今では好きなものの絵を自由に好きなだけ描くことができるまでになりました。
するとKobitoさんは、そんな私の成長ぶりに目を細めながら、「ついでに、字も書けるようになった方が良いね。」と、おっしゃいました。
そうです。私、今までペンがまともに握れませんでしたから、字も書けなかったのです。
とりあえず、自分の名前を書いてみようという事で、クレヨンで一画一画、心を込めて書きました。
あんまり顔を近付けて書いたので、字の大きさがまちまちになってしまいましたが、これが私が生まれて初めて書いた、自分の名前です。
ちなみに、左下の達筆な字は、Kobitoさんが見本で書いて下さいました。
東晋の伝説的書家、王羲之のような素晴らしい字です。
私もこのくらい上手に書けるようになりたいものです。
【その2】『お花畑と美猫とお姫様』
人間の女の子は、お花畑とお姫様の絵を描くのが、大好きです。
一人で描く時に限らず、お友達や、あるいは姉妹で絵を描くとなった時にも、決まって、この二つが毎回好んで描かれます。
私も、すっかり大人の猫ですが、お花畑とお姫様を描くのは、大好きです。
でも、人間の描く絵と、私の描く絵とでは、ちょっと違った所があります。それは、私がそういう女の子らしい絵を描く時には、女の子の猫の姿を必ず描き込む、という点です。
どうしてなのかって?
よく考えてもみて下さい。
ほら、私、猫なんですよ。
人間の女の子が人間のお姫様を描くのが好きなように、猫の女の子は、可愛らしくて素敵な模様の猫の女の子を描くのが、大好きなのです。
どうです。
女の子の猫の気持ちが、少しは分かるようになって来ましたか?
【その3】『赤いドラゴン』
この絵は、Kobitoさんが描いていた、赤いドラゴンの絵を、模写したものです。
最近、Kobitoさんは、赤いドラゴンの絵を、角度を変えたりポーズを変えたりして、何枚も何枚も描いています。いったい何にするんでしょう?
あ、こういうのって、発売前のゲーム機やスマートフォンの写真を流出させるみたいなものじゃないかしら。
まずいですね。
でも、もう載せちゃいましたから、黙っていることにしましょう。シー。
【その4】『美子猫戦士アンジュ』
『耳をすませば』というアニメ映画を、ご存じですか?
スタジオジブリの作品なので、宮崎駿さんか、高畑勲さんが監督だと思っていらっしゃる方が多いかもしれませんが、この映画は、お二人の信頼が厚い、近藤喜文さんという作画のスペシャリストさんが、監督を務められているのです。
1995年公開で、私も当時、肥前の町の映画館で観ました。
劇中歌のカントリーロードの日本語歌詞が、何とも素朴で温かくて良いんですよね。
その、『耳をすませば』の中に登場した、猫の男爵のバロン様に、私は一目ですっかり心を奪われてしまいまして、どのくらい奪われたかというと、バロン様の雄姿を拝見するためだけに、朝から晩まで五回も上映を観続けたくらいなのです(あの微かな愁いを帯びて輝く瞳の色!)。
ところで、あんな風に、人間のようなお姿をした猫が、お洒落な衣装をまとわれると、ひときわ魅力的に映るのは、どうしてなんでしょう?
というわけで、愛と平和を守るために、日夜悪者のドラネーコたちを懲らしめる、美子猫戦士、アンジュちゃんの絵を描いてみました。いわゆる〝オリキャラ〟というものです。
【その5】「笑顔がいっぱい」
第43回のコラムで、Kobitoさんがおっしゃられているように、一口に『笑い』と言っても、色々な種類があります。
私も、Kobitoさんと同様、『笑わせる笑い』が大好きです。
誰かを悪く言って傷つけて得意がる、悪口の技術を競い合うような笑いは嫌いです。(私がKobitoさんをからかう時だって、許して頂ける範囲内で、かまって頂いているのですよ。ねえKobitoさん。)
でも、もっと好きなのは、嬉しくって、自然と笑顔になった人を見る事です。
そしてもし、私がそんな笑顔にしてあげられたのなら、これに勝る喜びはありません。
ええ、そうですとも。
皆さんが私を笑顔にして下さったように、私も皆さんを笑顔にしてさしあげたいのです。
(=^▽^=)ニコッ<笑う門には猫子がきたる!