第70回 キャラクターを生き生きと書く方法
皆さんこんにちは。
さて、突然ですが、これを書いている私は誰でしょう?
美猫の猫子でしょうか、普通のKobitoでしょうか?
選びましたか?では正解です。
私は、普通のKobitoです。
今回も、猫子さんはレギュラー回を執り行えず、欠席です。
んー、今回は第70回という、猫子さんがこだわっていた節目の回なので、出て来てくれるんじゃないかと思ったんですが、本当に、どうした事でしょう。
猫子さんファンの方は、さぞかし気をもんでいる事でしょう。
このまま文芸コラムから引退という事になったらどうしよう、とか。
安心して下さい。猫子さんはそういう事で出て来ないのではありません。
幸い、先日猫子さん本猫から電話があって、「おかげさまで元気です。」との事でした。
どうやら、かんづめ生活をするためには、外部との連絡を極力遮断しなければいけないという決まりがあると思い込んでいるらしいふしがあります。
何しろ、電話をかけて来たのは、「さびしさに耐えかねて」との事でしたから。
いずれにしても、猫子さんはこちらが問いかけても、「それだけは言えません。」と、かんづめ生活をしている理由については語りたがらず、また、もうしばらくこの生活をつづけるとの事だったので、私も仕方なく「頑張ってね。無理しなさんなよ。」とだけ伝えました。
猫子さんは、「いたみいります。私を待って頂いているファンの皆様にも、『猫子は永久に不滅です!』と、猫子が言っていたと、声を大にしてお伝え下さいね。」との事でした。
だから、声を大にして伝えます。
∧∧
∩゜Д゜)n <猫子は永久に不滅でーす!!!
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U U
実際、猫子さんが文芸コラムに出なくなると、寂しいもんです。
あの、いたずらで自由気ままな所が、どんなにこの堅苦しいコラムの息抜きになっていたか、いなくなるとなおさらはっきりと分かって来ます。
もしかすると、猫子さんの一番のファンは、私なのかもしれません。
おっと、少々持ち上げすぎたかな。
というわけで、今回も、このコラムの本旨である、真面目な文芸のお話をさせてもらいますが、猫子さんの近況報告でかなりの字数を費やしたし、真面目なコラムが続いて読者さんもお疲れかもしれないので、今回は読みやすさを考慮して、できるだけ短めにまとめさせてもらう事にします。
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本日のお題【キャラクターを生き生きと書く方法】
キャラクターというのは、創作系の文芸の中で最も重要な役割を担う存在ですよね。
どんなに優れたシナリオや文章力のある作品でも、キャラクターの魅力が薄かったら、多くの読者は遅かれ早かれ、物語の世界に没頭できなくなってしまいます。
逆に言うと、キャラクターに魅力があれば、ありきたりなシナリオや、そこそこの文章力でも、読者を虜にする事ができる、場合もありそうです。
では、キャラクターの魅力とは、具体的に言うと、どういうものを指すのでしょう?
そのキャラクターが持つ、美貌や能力や地位や財産といった、ステータスでしょうか?
試しにここに、そういったステータスを重視した一人のキャラクターを創造してみます。
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十八歳の美貌の資産家、カナン・キャンベル。
小学生の頃から数学の分野で著しい才能を現し、わずか九歳で飛び級で大学に進学した後、最年少で博士号を取得した天才児。
彼は他者のひたいに手をふれるだけで、その人の得意分野の知識を取得する事ができる。
生まれ持った資質と異能を駆使して、彼は一代で世界有数のコンツェルンと巨万の富を手に入れた。
彼は本部として建てられたニューヨークの超高層ビルの最上階の総帥室から、眼下に並び立つ摩天楼を見下ろしながらこうつぶやく。
「高いな~。」
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途中までは、ステータスで読者を引き付けて来られたのに、最後の最後で、すんなり受け入れがたいイメージとのかい離が生じてしまっています。
会話文が、ステータスに比してあまりにも軽く、似つかわしくないのです。
ステータスとのギャップを突いた軽いキャラクターという設定にしても、超高層ビルの高さに感心した事をわざわざ口に出すのは、そういう生活に慣れていない感じがして違和感があります。
ステータスや経歴を踏まえた、違和感のない会話文を改めて考えてみると、
「これが俺の今の高みか。」
など、含蓄のある言葉の方がしっくり来るようです。
この、しっくり来る、という感覚、実はこれこそが、キャラクターを生き生きとした魅力ある存在に仕立てるための、テクニックの肝の部分に当たります。
ステータスというのは、そのキャラクターの人生であり、キャラクターは人生から思想信条、性格、癖といった影響を受けている、と考えるのが順当です。ですから、ステータスの華々しさや特異さの魅力でそのキャラクターが生き生きとして見えるというよりは、言動や行動などで、そのステータスにふさわしい描き方をしてこそ、キャラクターは真に実在感を伴った興味深い存在として生き生きして来る、というわけです。
そして、どういう言動や行動がそのキャラクターにふさわしいのかを見極めるには、書き手の人生経験や、人間観察における洞察力の鋭さが物を言う、という事は言うまでもありません。
「彼を知り己を知れば百戦殆ふからず。彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦ふ毎に必ず殆ふし。」
孫子の教えが、ここでも当てはまります。(コラムでの引用の初出は第54回。)
他者を知る事、そして自分を知る事が、生き生きとしたキャラクターを生み出す第一歩です。
特に文芸上で、「キャラが立つ」という状態を目指すのであれば、ステータスの充実だけではなく、そのキャラクターの人生が、自然な形で言動や行動に反映されているかを、自分の経験や感覚に照らして、注意深く観察する事を心がけてみることをお勧めします。
 




