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第55回 未完成=質が悪い、ではない。

このコラム連載で言及される事の多い宮沢賢治ですが、今回も、言及させてもらいます。

宮沢賢治の生み出した作品は、詩、童話を中心に、実に膨大な数に上ります。

特に童話については、初稿から二次改稿、三次改稿と、改稿を重ねるにしたがって、物語の内容が大きく変貌する事が多く、それぞれの段階を、一つの作品ととらえる事もできるという点に特徴があります。


もう十年くらい前になりますが、一念発起して、図書館で賢治の全集を読み込んだことがあって、作品の最終形だけでなく、上記のような改稿の各段階の作品にも目を通す事ができました。

その際に、気が付いたんですが、賢治の作品は、未完成か、一部に欠落のある状態の作品が、かなりの数に上ります。


初稿や改稿途中の作品が、未完成な場合が多いのはやむを得ないにしても、彼の代表作として有名な『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』も未完成なのですから、彼に対する世間の評価は、未完成である事に左右されていない、と言う事ができます。


話をなろうに転じると、ここで執筆されている方の中には、連載作品が未完のままとどこおる事に対して、読者に済まないという気持ちを抱く方も多いようですが、賢治の作品に対する評価のように、必ずしも、未完のままになる事が悪い事とは言えない、という事は、心に留めておいてもいいのではないかなと思います。


物語というのは、完結することが最重要なのではなく、紡がれたこと自体が一番の美点なのであって、どこまで書かれるにせよ、その価値は生み出された分だけすでに定まっている、というのが私の考えです。


だから、もし連載作品が中断して再開の見込みが立たない場合も、作品の価値が減じるという心配はしなくても大丈夫です。

少なくとも私は、描かれた範囲内の物語を楽しむ事で満足できるし、作者の良いアイデアや文章上の工夫や努力を読み取れたら、作品を読んで良かったと思えます。


自分自身、とん挫した長編作品はいくつかあって、できれば書き進めたいという気持ちは常に持っていますが、そういう愛着のある作品であればこそ、とん挫するまでに紡いできた物語の価値や、時間をかけて練り上げた文章の成果を、まずは自分で喜んで認めてあげたいと思うし、そういう姿勢を、他者の作品に対しても、持つことができたらいいなと思うのです。




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