第5回 ファンタジー世界を統べる 【前篇】
ファンタジーと呼ばれるジャンルの概要を、前篇と後篇に分けで論じてみます。
あなたは、ファンタジーの書き手ですか?
もしそうなら、あなたは、ファンタジー世界の統率者ですね。
統率者というのは、そこに暮らす人々の導き手、というだけではありません。
世界の広さや気候や天候、地形の変化や動植物の分布など、自然も含めたすべての環境を一手に司っている、神様のような存在です。
もしあなたが「海よ割れろ」と言えば、海原は真っ二つに割れて、人々は海底を歩いて別の陸地へ渡る事ができますし、「枇杷よ実れ」と言えば、実のない枝は黄色く熟したたくさんの果実でたわわになります。
そんな面白い力を手に入れたあなたは、その世界にある物を動かしたり組み合わせたりして、自分の好きなように物語を紡ぎはじめます。
まず、どこから物語を始めましょう?お話が幕を開ける、場所を設定するのです。
大都会の裏通りのおんぼろな集合住宅にしましょうか。田舎の農村の黄金色の麦畑のただ中にしましょうか。それとも、絶海の孤島の密林の奥深くの椰子の葉でできた一軒家にしましょうか。
時代や文明の発達度合いも、自由に選ぶ事ができますよ。
原始生命が栄える古代世界から、中世の趣を残した文明の過渡期、全てがオートメーション化された高度な地下都市、選べるのは地上だけではなく、広大な宇宙空間に浮かぶ星間連絡用の大型宇宙船の内部を、物語の舞台にしても良いのです。
また、あえて世界を異世界風にしなくとも、私たちが暮らす現実世界をそのままファンタジーの舞台に設定する事も可能です。
ファンタジーというのは、現実にはあり得ない景色や出来事が展開する事です。つまり、舞台設定の上で〝あり得ない世界〟を構築しても良いですし、現実の世界の中で〝あり得ない出来事〟が生じるお話にしても、ファンタジーと呼べる作品を構成することはできます。
『現実世界』と『異世界』という二つの世界は、ひとつの物語に組み込む事もできます。二つの世界を行き来するという話は、ファンタジーの手法として昔から定番ですし、この『小説家になろう』の書き手さんの間でも、好んで用いられている主流の手法ですからね。
後篇に続く