第31回 猫子の絵画塾 (作・古寺猫子)
皆さん、こんにちは。美猫の古寺猫子です。
二月ももう半ば。だんだん春が近づいているとは言いながら、まだまだ身が縮むような寒い日もありますね。
こういう時期は、猫の必需品の電気あんかで丸くなって、ぬくぬくするのはもちろんですが、普段やらない面白い事をして、クールになりがちな心もポカポカに温めたいものです。
というわけで、今回は、『小説家になろう』の挿絵機能を贅沢に使って、猫子の絵画塾を開催したいと思います。
そう、挿絵機能を使うと、絵がたくさん載せられるので、文章ではなく、絵を主役にした投稿も可能になる、という事に、猫子は気がついてしまったのです。
だけど、気がついたのは良いのですが、皆さんもご承知の通り、私の絵心は、絵画塾を開くには、あと一歩足りないといったところなので(私の絵の実力の程は第11回のコラムをご参照下さい。)、ここはやはり、絵が得意なKobitoさんに、せっかくの企画をどういう風に成功させたらいいかの、アドバイスを頂く事にしてみました。
Kobitoさんは、私の企画を知ると、「おお~。面白い事に気がついたね。」と、たいそう感心して下さって、「人間だって、最初は箸を上手く使えないけど、練習するうちに、だんだん思い通りに動かして料理が食べられるようになる。何事も、慣れる事が大事。それに、箸とは違って、絵は、ペンや絵筆を一本持つだけなんだから、そんなに難しい事はないと思うよ。実際、象だって豚だって、絵を描くのを見たことがあるからね。猫ができない筈はないよ。」と、言葉を尽くして励まして下さったんです。
私も、猫代表として、象さんや豚さんには、負けられませんからね。
ますます、やる気が湧いてきたわけです。
そして、肝心の絵画塾の内容について相談すると、「猫子さんが、だんだん絵が上達する過程を見てもらえば、良いと思うよ。」という事だったので、それなら、私の絵の力量に合わせる事ができて、ちょうどいいですねという事で、Kobitoさんからクレヨンをお借りして、ご指導を受けながら、三、四日お時間を頂いて、絵画塾に必要なだけの枚数の絵を、描かせて頂きました。
その、労作の数々を、今回は見て頂こうというわけです。
ちなみに、猫の姿のままだと、指がすごく短いのと、肉球同士のすき間が狭すぎて、クレヨンが上手く握れないので、絵を描くときは、人間に化けてから、描くようにしました。
では、さっそく、一番最初に、Kobitoさんから身近なものを、というお題を頂いて描いてみた絵から、ご覧頂きましょう。
どうです。何が描いてあるか、お分かりになりますか?
これ、実は……、Kobitoさんの顔を見ながら描いた、Kobitoさんの似顔絵なんですよ。ここだけの話、Kobitoさんは、実際こんな顔をしているのです。
クレヨンを片手で持つのが、まだとても難しかったので、この絵は両手で挟むように持って、描きました。
次の絵を描くときは、シュシュでクレヨンを片手に括り付けて描くようにしたので、少し描きやすくなりました。
さて、何の絵でしょう?
実はこれ、Kobitoさんが食べ終わった、カップラーメンの容器です。
スープまで飲み干してしまってます。不健康ですねぇ。
これは何でしょう。
これは、Kobitoさんの毛糸の帽子です。同じものを二つ持っていて、冬はどこに行くにも、こればかりかぶっているんですよ。
あんまりプライベートな事を書くと、Kobitoさんがまた血相変えて、降板を指示しに来るかもしれないので、この辺で止めておきましょう。
では、片手で描くのにも慣れて来たので、少し難しい絵を描いてみます。
え、まだ早いですか?でももう、描いてしまったので、皆さんはおとなしく見るしかありませんよ。
今度のは、普通の絵ではなくて、漫画です。
漫画というのは、コマ割りしている絵の事を指すと、思っていらっしゃる方も多いようですが、コマ割りしていない一枚の絵でも、例えばユーモアや風刺を込めた絵などは、漫画と呼ぶこともできるのですよ。
でも、私は挑戦者の立場なので、いきなり2コマで、漫画を描いてみる事にしました。
台詞は、私の説明に基づいて、Kobitoさんに書き加えて頂きました。
どうです。コマ割りすると、漫画らしくなるでしょう。
じゃあお次は、4コマ漫画を描いてみますね。
サラサラサラ~。
私、どうやら漫画の才能があるようです。今までで一番楽に描けました。
これは、先日あったことを漫画にした実話です。
その時の私の気持ちが、その通り伝わるでしょうか?
Kobitoさんは、「良い絵だよ。味があるし、面白いよ。」とおっしゃって下さるんですけれど、皆さんから見ると、いかがでしょう?
Kobitoさんは、お世辞があまり好きではない方なので、思った通りをおっしゃって下さっているとは思うんですが、かなり変わった感性をお持ちの方でもあるので、一般的な方には、どう見えるのかなぁと……。
いえ、Kobitoさんが一般常識がないと言っているわけでは、ないですよ。
ええと、お次は(ゴソゴソ)、この絵をお見せしようかな、いや、やっぱり止めときましょう。
大股開きで寝そべる女性の悩ましげな絵なので、なろう様の年齢制限に引っかかりそうです。
え?何となくどんな絵か予想ができるって?
うふふ。そう、この絵は、ご近所の鈴木さん家の玄関先で日向ぼっこをしていた猫のうめちゃん(雌・五歳)に、こっそりモデルになって頂いて描いた絵ですよ。人間の殿方の皆さんは、がっかりされましたか?
でも、瞳の青い、ふっくらしたキジトラで、とっても可愛らしいんですよ。
さてさて、そんなこんなもありながら、猫子の絵画塾も、そろそろお別れの時間がやってまいりました。
今まで、三百四十年間生きて来て、古今東西の様々な経験をしてまいりましたが、一度も絵を描く事に興味を持ったり、誰かに習ったりしたことがないというのは、自分でも不思議な気がします。きっと、猫が絵を趣味にしても仕方がないと、はなから垣根を作っていたのでしょうね。でも、そういうことって、意外とこのコラムをお読みの皆さんにも、あるのではないでしょうか。
ずっと疎遠だった分野に、ある時急に楽しみを見いだす、という事です。
六十の手習いならぬ、三百四十の手習い、というわけですね。
Kobitoさんや、ここで活動されている皆さんが、文芸だけでなく、絵も楽しんでおられる様子を拝見しているうちに、私も、自分で絵を描いてみたいという気持ちが高まってきたのですよ。
きっかけを与えて頂いて、本当にありがとうございました。
今回の成果を生かして、近いうちに、父に絵手紙を出してみようと思っています。
愛娘の絵の上達ぶりに、驚きほころぶ父の顔が目に浮かぶようです。