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第26回 スランプについての研究

今回は、創作を趣味にする人の多くが遭遇するやっかいな代物、〝スランプ〟について考察してみたいと思います。


ネット辞書のコトバンクによると、スランプとは、


〝不調。心理的,身体的または情緒的に複合した形で原因のつかみにくい一種の混乱状態。このため,たとえばスポーツ選手などが一時的に調子が落ち,本来自分がもっている実力を発揮できないことがある。スランプを克服するためには,いったんその練習 (学習) から離れて,一定時間をおくのがよいとされている。〟



と書かれています。

この説明で面白いのは、「本来自分がもっている実力を発揮できない」という部分です。

つまり、スランプに陥った人は、発揮できるだけの実力を、本来は持っている、という事になります。

どうして、実力のある人が、実力を発揮できなくなるのか。

そして、どうして、スランプに陥ると、「自分は実力がない」と思ってしまうのか。


これは、一種の無意識的な克服行為ではないでしょうか。

私はコトバンクの解説にあるように、〝いったんその練習 (学習) から離れて,一定時間をおく〟ことでスランプから脱した経験が、何度もあります。

文芸に関して言えば、書く事自体を全て止めてしまわないでも、例えば、童話を書くのは控えて純文学的なものを書いてみる、とか、創作的な作品は休んで論考的な作品を書いてみる、といったように、他の分野に軸足を移すことで、筆が滞る分野の復調を図る、という事も、同じ目的を持った克服行為だと思います。でもこれは、スランプに対してこういう手法が効果的だという事を私が知っているから、意識的にやっている事です。


無意識的な克服行為とは、再び書けるようになるために、書くのを控えるように感覚が命じてそうさせているにもかかわらず、本人がそれを自覚していない状態の事です。スランプに陥った人が、「書くのがつらくなったのは自分が書く事を嫌いになったからだ。」とか、「書けなくなったのは実力がないからだ。」と思い込みがちなのは、書かないようにさせるために感覚がそう思わせている面もあるのではないか、と私は思うのです。

ところが、この気持ちが強くなると、せっかくの克服行為の期間が、有意義な期間でなくなってしまうばかりでなく、本当に書く事が嫌になって、文芸の趣味自体をやめてしまう原因にもなってしまう、という危うさがあります。


ですから、スランプに陥った時には、まず、「私は書く事を嫌いになったのでもなく、書く力がないわけでもない。再び書けるようになるための準備期間に入るのだ。」という事を意識してみるべきだと思います。


創作物を生み出す、というのは、思ったことをただ書くだけでも、とりあえず何かは出来上がるので、案外簡単であり、楽しい事でもあるのですが、何もない所から創作物を生み出すのが限りなく不可能に近い、というのも事実です。(これは、この連載コラムで何度か言及している部分です。)


スランプとは、作品を生み出すための何かが不足している、もしくは、枯渇している状態で、それを補わせようとする期間ではないでしょうか。


この「不足」や「枯渇」は、単に創作に必要な知識や経験、といった具体的な資料の事だけを指しているのではありません。

例えば、創作意欲であったり、興味関心であったり、書く目的であったり、といった心理的要因も含まれています。


ですから、スランプの克服には何が一番効果的か、という、スランプに陥った人が最も知りたい回答も、実は人それぞれのスランプに陥った理由によって異なる、という事になります。


そして、一人の書き手の中にも、知識や経験の不足だったり、意欲や情熱の薄れだったり、他の楽しみに興味が移ったり、何のために、あるいは誰のために書くのかという目的が見い出せないなど、その時々でスランプの原因は変わって来ますし、いくつの原因が、それぞれどの程度不調に関与しているのか、という比率も変わって来ます。


知識や経験の不足であれば、それが得られる書物を読んだり、その場所に行って手に入れる事、創作意欲の低下であれば、無理のあるスケジュールや自分への過度の要求を見直して、書きやすい環境や心境を整える事、他の楽しみに興味が移ったなら、また元のものに興味が持てるようになるまで気長に待つこと、何のために書いているのか分からなくなった時は、自分であれ他者であれ、その作品を捧げる相手を探す事、それぞれのスランプの原因に対する対処法はこういったものがありますが、スランプの原因がよく分からないという人は、スランプの期間中に、いろいろな解決策を試してみる必要もあるのだろうと思います。


一つ言える事は、苦しんでも楽しんでも、同じスランプ期間なら、できるだけ楽しんで過ごすのが良い、という事です。


中には、苦しむことがスランプの克服に効果的なのだ、と言う書き手さんも居るかもしれませんが、いずれ創作を再開できるようになる事がスランプの目的であるべきなので、やはり思い詰め過ぎないようにした方が、一般的にはより良い結果が得られるのではないかな、と思います。



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