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第22回 プロットの立て方 【前編】

このところ、このコラムでは、品詞(単語の種類)の性質や、私が読書をしていて感じた事といった、創作の周辺の事柄に関する話題が続いたので、今回は、より実践的な創作論として、物語を書く際に重要な、『筋書き(プロット)』の立て方について、あれこれと考察してみたいと思います。


ただし、私はプロットをあまり綿密に立てずに書き始める質なので、この論考も、どんな方向に進んで結論に至るのか、今時点では見当もつきません。


皆さんは、新しく物語を作ろうとする時に、まず何から最初に考えますか。

例えば、登場人物のプロフィール(設定)を最初に考える、という方もいるかもしれない。


名前 ケラ

年齢 六歳

性別 男

身長 半寸(1.5cm)

性格 好奇心旺盛、素直、大胆

特技 崖のぼり、木のぼり、山のぼり

身の上 人里離れた林の中に住む小人族の子供。看板屋のタクの息子。ユニオという兄がいる。



こんな風に、箇条書きにした情報をまず作って、そこから想像力を展開させていく、という方法です。

この方法の良いところは、登場人物を言葉で表現することで、その姿かたちや性質をより具体的に想像できるようになる、という点と、作品を書き始めたあとで、いつでも基礎となる情報が確認できる事で、話のつじつまが合わなくなることを未然に防ぐ事ができる、という点です。

特に、登場人物の多い長編小説では、執筆が長期にわたる分、一人一人の設定の細部まで忘れずにいる事はかなり困難なので、こういう設定資料を作っておいて、新たな情報が加わるごとに書き加えて行く、という手法をとれば、作品の内容の整合性を維持するという観点からも理に適っていると思います。


こんな風に、登場人物の設定を最初に考えなくとも、作品を着想し、展開させることはできます。

実際、物語の着想というのは、雑草の種子のようなもので、僅かな土さえあれば、そこがブロック塀のすき間だろうが、屋根の上だろうが、芽吹く事ができる、非常に強靭な性質を持っているものですからね。

例えば、下記のようなささいな会話を思い付いたら、もうそこから物語は根を張り芽吹いて行く事ができるのです。


「これ、あなたの事じゃないんですよ。」

「おめえ、そればっか言うが、怪しいもんだよ。作家ってのは嘘ばっかつくしな。」


ちなみに、こういう会話を、私は今考えて書きましたが、この会話を思い付く事ができたのは、私の中に、それを思い付くのに必要な実体験があったからです。実体験というのは、作家がうそをつくのを私が目の当たりにしたことがある、という事です。相手を騙すのが目的のうそだけではなくて、絵空事を本当のことのように語る、という創作の本質から来るうそも含めての経験です。

この『経験』が、物語の種子を生み、育む『土』なのです。

ただ経験した、というだけではなくて、経験した時に、私は色々な事を感じたり、考えたりもしているので、それらがさらに土を増やして、物語の種子が根を張り、伸びて行きやすくなるための、様々な栄養素を含んだ土壌として、私の中に蓄えられています。

だから、会話文を思い付いた(着想を得た)という事は、その背景には、物語を展開して行くための必要最低限の知識や経験はすでに備わっている、と考えていいと思います。


では、この会話をしている二人は、いったい誰なんでしょう。

私は、会話の調子から、最初の話者は、比較的年が若く、理屈屋で、相手の事をあまり知らない、よそ者のような気がします。

二人目の話者は、最初の話者よりも歳が上で、歯に衣着せぬざっくばらんさと、疑り深さ、そして、若いよそ者からなめられたくない、という反発心も、若干言葉遣いから感じられるように思います。

これらの印象から、二人のプロフィールを考えてみると、



【一人目】

名前 やすいれんこ

年齢 24歳

性別 女

身長 155cm

体型 細め

性格 律儀 淡白なようで情熱家 お笑い好き

特技 小説執筆 猫グッズの収集

身の上 駆け出しのファンタジー作家。最近愛猫のスギモトさんと共に里山に引っ越して来た。引っ越して間もなく、スギモトさんが行方不明になり、二週間後、家を訪ねてきたボロクルから、スギモトさんがグノームの里に居座って迷惑をかけていることを知らされ、連れ戻しに行く。


【二人目】

名前 ボロクル

年齢 五十歳前後

性別 男

身長 4.5cm

体型 小太り

性格 真面目 曲がった事が嫌い 酒に弱い

特技 穴掘り 左官

身の上 裏山の地下に築かれたグノームの里〝パライス〟の住民。突然パライスに現れて、家や畑を荒し回るスギモトさんと戦うために組織された、パライス自警団の副団長でもある。里の人々から、スギモトさんの飼い主であるやすいを呼びに行く役目を任される。


こんな感じになりました。

大長編は無理でも、中編のにぎやかなコメディー作品なら書けそうです。

二人の身の上欄で、プロットの大筋がすでに出来上がっていますね。

この大筋の発想がどこから来たのか……、あまりその辺を突っ込んで考えても、結局、過去の実体験だとか、読んだ小説だとか、見た映画だとか、漫画だとかに行きつくだけだと思うので、やはり、前の方で論じた通り、経験こそが着想を育てる土壌であり、プロットの湧く泉である、という事なんでしょうね。

(里山に引っ越す、というあたりは、完全に『となりのトトロ』からの影響です。サツキやメイたちが住む事になった、ちょっとオンボロだけど面白そうな家、良いですよね。)


ちょっと話が長くなって来たので、ここからどうプロットを組み立てて行くかは、次回、考えてみたいと思います。


【後編】につづく



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