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文芸コラム 『言葉の精練』 -魔法に変わる言葉-  作者: Kobito


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第11回 古寺猫子さん再び お便りコーナー

こんにちは。古寺猫子ふるでらねここです。私のこと、覚えていらっしゃいますか?

第7回のコラムで、『猫から見た真実』という題目で講演をさせて頂いた、肥前ひぜんの山奥の古寺に住む、才色兼備さいしょくけんび美猫びねこですよ。


前回は、講演が始まって早々に、Kobitoさんが、不都合な真実を話す私に動揺して、降板を指示するという暴挙に出られて、満足に話すこともできずに、皆さんには申し訳なく、また、私自身たいへん心残りだったのですが、今回は、Kobitoさんを柱にしばり付け……じゃなかった、Kobitoさんが所用でお出かけになられたので、代役として、思う存分、皆さんにお話をする機会を頂くことができました。


実は、前回の講演以来、私へのファンレターがKobitoさん宛てにたくさん届いていたそうで、今回は、そのお礼方々かたがた、お便りで寄せられたご質問などにも、お答えして行けたらいいなと思っています。

(ラジオ番組でよく、リスナーさんからのお便り紹介のコーナーがあるでしょう?私、あれがやってみたかったんです。猫界初のラジオパーソナリティーです。)


ええと、じゃあ、まず最初は、ペンネーム赤城さんからのお便りをご紹介します。

赤城さんは、私がコラムに登場した後、真っ先にお便りを下さった、『猫子ファンクラブ』(←今発足ほっそく)の第一号さんです。


『猫子さんをコラムのレギュラーにしてください。あと、化け猫って、しっぽは何本なんですか?』


ありがとうございます。赤城さんの応援のおかげで、この通り、レギュラーになれましたよ。Kobitoさんのお話は、真面目過ぎてちょっと退屈ですから、私みたいな華のある可愛い美猫が、時々登場して、皆さんを和ませた方が、コラムの連載も上手く行くってものです。

(それが、Kobitoさんに、穏便おんびんに分かってもらえたらねぇ……。)

あら、そうだ。化け猫のしっぽの本数でしたね。これは、人間からも猫からも、よく聞かれる質問なんですが、化け猫業界では、本当のことを教えてはいけない、という、決まりになっているので、残念ながらお教えすることはできないのです。

これは、例えば、近頃のアイドルグループが、恋愛禁止というルールになっているのと同じです。

お客さんを惹きつけるための、付加価値として、そういうルールになっているのです。

でも、せっかく猫子をしてくれて、お便りを下さった赤城さんに、「秘密よ♡」と言うだけでは、猫界のトップアイドルとしてあまりにサービス精神に欠けるので、今回は特別に、私が人間に化けた姿を、直筆の自画像を用いて、ご紹介したいと思います。




     挿絵(By みてみん)






いかがですか?私が人間に化けた姿を、イメージできましたか?

この絵で、「イメージできました!」と答えた方は、想像力がたくまし過ぎるか、眼鏡が頭に掛かったままの横山やすしさん状態か、他人に気をつかい過ぎて疲労困憊ひろうこんぱいしてしまう性格なのではないかな、と思います。

だって、私自身、描き上がった絵を眺めて、「絵が下手にも程があるだろう!」、とツッコミを入れたほど、ひどい出来栄できばえだからです。

もっと手先が器用だったら良かったのですけれど、何せ、手のひら(脚のひら)が肉球ですからねぇ……。(人間に化けても、不器用さは猫の姿の時のままなのですよ。)

実は、先日Kobitoさんに、「私が人間に化けた姿を、肖像画にして下さいませ♡」とおねだりしてみたんですが、どうも前回の講演で、私への警戒心を強めたらしくて、なかなか引き受けて下さらなかったので、今回だけは仕方なく、人間に化けた姿を鏡で確かめながら、自分で肖像画を描いて、ご紹介する事にしたわけです。

次回は、Kobitoさんの弱みを握って……じゃなかった、Kobitoさんに頼み込んで、できるだけ実物にそっくりな可愛さで描いてもらった肖像画をご紹介するので、それまでもうしばらくお待ち下さいね。

はい。


さて、続いては、東京都のシマニャン(めす、二歳)さんからのお便りです。


『どうやったら、猫子さんのような最高の美猫になれますか。難しい方法は面倒くさいので、一番手っ取り早い方法を教えて下さい。』


楽して美しくなりたい、というのは、いつの時代も、女性の願望ランキングの堂々の第一位ですよね。

いいでしょう。では、私のような最高の美猫になるための、最高に手っ取り早い方法を、今、『猫子のラジオ』をお聴きのリスナーさんだけに、特別に教えてあげましょう。

まずは、自分の事を、最高の美猫だと思い込んで下さい。

……思い込めましたか?

以上です。


ええ、それだけなんですよ。簡単でしょう?

これであなたは、間違いなく、明日と言わずたった今から、最高の美猫になれます。

ちなみに、コツとしては、誰がなんと言おうと、自分が最高の美猫である事を、信じて疑わないことです。

ちらっと、でも疑いを持つと、たちまち貴重な美猫成分が失われてしまうので、自分をどこまで信じられるかが、この美猫術のポイントになります。

はい。


さて、お次は、秋田県のトラジロウ(おす、十歳)さんからのお便りです。


『猫子さん、ぼくと結婚して下さい。』


引っかきますよ。

まあ、あなたがよほど魅力的な伊達猫だてねこであれば、検討しない事もありませんが、だからといって、猫としての礼儀や段取りをおろそかにしてはいけません。気持ちを確かめ合って、しばらくお付き合いをして、お互いのことを理解し合って、上手くやっていけそうだなと思えたら、どちらかがプロポーズをして、日取りを決めて両家のご家族と顔合わせをして、結納品と婚約を交わして、それから役所に婚姻届を提出して、入籍して、ようやく挙式、披露宴をり行う、というのが、猫の結婚までの正式で理想的な段取りなのです。

この段取りがこなせなければ、結婚なんて遠い夢のまた夢ですよ。

しかし、せっかく勇気を出して告白して下さったのですから、ぜひがんばって、結婚までの全ての困難を乗り越えるような、頼りになる伊達猫になって、再び私に告白しに来て下さったらいいな、と思います。何百年でもお待ちしているので、ぜひとも心置きなく精進しょうじんされて下さいね。

はい。


ドンドンドン!


……あ、しまった。じゃなかった……。あのね、皆さん、Kobitoさんが今、ラジオブースの向こうにいて、窓ガラスをしきりに叩いているんですよ。

え?よく聞こえませんよ。その窓ガラス、防音ガラスなんですから。

この放送設備ですか?先日、Kobitoさんのお財布の中のカードをお借りして、買いそろえさせて頂きました。安心して下さい。三十六回の分割払いにしときましたから。

あら~……。声は聞こえなくても、Kobitoさんがえらい剣幕なのは伝わって来ます。

……私は脱出……じゃなかった、皆さん、そろそろ『猫子のラジオ』のお別れの時間です。

前回に引き続き、ばたばたの終了で、お恥ずかしい限りですが、りずにまた来ますので、皆さんもどうぞ、夏の暑さに負けず、お元気にお過ごしくださいね。

それでは、次回の放送を、どうぞお楽しみに~。

パカ!シュルルルルルルルルル~。「ニャァァァァァァァァァァ~~~ン。」

(脱出シューターから逃げる音。)



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