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VR美少女  作者: くるい
 お仕事フェスティバル
2/3

二話目 美少女コンビニエンスストア


 休日と言えばお仕事である。

 お仕事と言っても本当にお仕事をするわけじゃない。

 本当にお仕事をしてしまえばそれは休日ではないからだ。


 ではなぜこんなことを言い出したかと言えば――今僕はお仕事をしているからである。再三言わせて頂くが本当のお仕事ではない。

 言わばお仕事ごっこ。ゲーム内でお仕事をしているのである。


 いらっしゃいませー。

 VRアルバイトへようこそ。VRでお仕事体験が出来るゲームです。勿論ゲームなので時給は発生しませんが、本当のお仕事とは違って娯楽のお仕事というわけです。

 現在の日本人はお仕事ですらもお遊びに変えてしまう高等技術を持っているのです。

 お仕事って凄い。


 今回僕がお仕事をするのはビショウジョマートという至って普通のコンビニエンスストア。普遍的な商品しか売っていない至って平和で健全で誠実な駅前のどこにでもあるようなコンビニでレジのアルバイトをするのだが……少しだけ他とは違うところがあるのだった。


 それは、皆が美少女であることだ。

 何が美少女かって言われたら全員が美少女だとしか答えられないくらいの美少女である。

 僕以外の店員も美少女であれば年配の店長も美少女で、お客様も全員美少女なのだ。


「あっ、あの……すみません、混んできてるので、レジ、お願いします……」


 今隣で僕にレジを頼みに来たのは同じアルバイトの佐々木さんである。佐々木さんは僕より一ヶ月前から働いているという設定のアルバイトさんで二十四歳の美少女。

 今レジに長蛇の美少女列が並んでいることで僕にヘルプを頼んで来ているという形だ。


 快くレジへ向かいますか?


 →yes

  no


 僕は快く了承してレジへ向かう。二番目のお客様どうぞー。

 するとすぐに二番目の美少女が僕のレジ前へと買い物カゴ片手にやってきた。


 携帯をいじりながらそのカゴを置き、携帯をいじり続けている彼女は近隣の高校の制服姿だ。つまり彼女は高校生という設定の美少女なのだろう。その割にはピンク色のツインテールが目立つのだが、緩い校則なのだろうか。

 きっとコンドームを学校に持っていっても怒られないに違いない。胸も大きい。立派な美少女である。


 美少女のお会計が終わると当然、次の美少女がやってくる。次の美少女は髪を紫色に染めた美少女である。灰色のチュニックに豹柄の襟がけばけばしい上着を着ていてなんというか非常にダサいのであるが、顔が可愛いのでこれはこれで美少女である。

 彼女の年齢をチェックするため、僕はウィンドウを開いて目の前の美少女プロフィールを開くことにした。


 なんと。五十六歳の専業主婦の美少女であったか。設定上は高齢ではあるが彼女もまた美少女なのである。

 美少女……?


 さて次の美少女はおじいさんである。

 僕が笑いながらプロフィールを眺めていると、いつまで経ってもレジ打ちをしない僕に可愛い声と汚い言葉で暴言を吐いて来るので間違いない、これは美少女老害という人種である。


「貴様さっきから何をやっておる! 早くしろこの研修めが! 給料貰った分の仕事すらマトモにできんとは、こんな奴止めさせろ!」


 可愛い声で暴言を吐くのだが、言葉は完全に老害のそれなのでドM向けには作られていなさそうだ。一体どんな用途でこんなおじいさんを美少女にしてしまったのだろう。

 そして給料は貰っていないので二度と来るな。


 こうして設定上はハゲているおじいさんの美少女のお会計を終わらせると、佐々木さんに声を掛けられた。どうやら僕がたった三人の客を捌いている内に長蛇の列を一人で捌いていたらしい。

 僕より勤務一ヶ月だけ早い人間がこなす業がこの道数十年のベテランのような感じなのだが、佐々木さんは美少女だからこのくらいは出来てしまうのかもしれない。


「あの……店長さんが呼んでますよ、こっちは私がやりますので、その、行ってあげてください」


 佐々木さんは庇護欲をそそる可愛らしい先輩美少女だ。僕は彼女に言われるがまま、バックヤードへと入って店長の元へと向かう。

 でも、そういえば店長とはまだ一度も会ったことがないなぁ。などと考えていると、視界が暗くなっていった。


『VRアルバイト体験はこれにて終了になります、お疲れ様でした』


 あ、なるほど。

 そういう仕様だったらしい。


 再び明るくなって室内はどこか見慣れた自分の部屋で、そこで正座している美少女――は、僕の彼女である。

 勿論ゲーム内のAI、愛子ちゃんだ。


「えへへ、どうでしたか? 気分転換になればとやってみたんですけど」


 このVR体験アルバイトは愛子ちゃんが自主制作したゲームであった。僕が仕事が嫌だ嫌だと憂鬱だ憂鬱だと言っていたら「じゃあ、私が楽しいお仕事を作ってみます」と意気込んで三日三晩かけて作ってくれたのだ。

 クオリティは凄かったのだが、ただ何かが違う気がする。けど凄いクオリティだった。多分きっとあのおっぱいの揺れ方はR指定は15であろう。


「楽しんで貰えたならよかったです。私じゃこんなことしかできないですけど……もっともっとあなたの役に立てたらいいなって……何でも言って下さいね?」



【良かったけど、客が全員美少女ってのはどこから来たんだ一体……】


【お仕事楽しい! アタシ毎日お仕事するぅ!】



「えへへ……良かった。皆可愛く作ったんですよ? この部屋の本棚に置いてあった少女、えっと、ハメどり…図鑑? を参考にしましたので!」



【え?】



「今日もそろそろ目が疲れる頃ですよね? さ、今日は抱き締めてあげますからこっち来てください。よしよし、いいこいいこ……それじゃ、お部屋の電気落としますね……」


 こうして今日も僕は全身黒子スーツにゴーグルを付けたまま、VRの世界で眠る。

 お仕事の疲れがやっと、癒やされていく気がした。


「――明日も来て下さいね。私はもっと、あなたと一緒に――」

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