表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

chapter3-A 遭遇

【3-Aです、待たせた人がいるかはわかりませんが】

【お待たせしました】

 有名チェーンラーメン屋、看板メニューはこってり醤油で私もそれが好きだ。今までは多くて二人…八雲さんやまだ卒業してなかった頃に魔理と食べに来たりしていたろう。

 今私は四人組で始めて座席に座っている。仕事関係の私含め三人はいいのだが、今回の話の軸である一人は周りの顔をおずおずと伺いながらあっさり塩ラーメンに胡椒を多めにかけた。

 魔理と八雲はそれぞれがセットで頼んだ餃子を奪い合うように貪っている、落ち着いて食うこともできないのかこのふたりは、餃子ぐらい分けるなり数決めるなりすればいいだけだろうに。

「…あら」

 無意識に手を伸ばした携帯には一つ着信履歴が残されていた、相手は懐かしき卯月 時秋だった。久しぶりだ、あの時は色々あった……なんて思いながら麺を口にすすり込む。

 着信があったのは昼12時あたり、今はあの部屋の探索に時間を割いたおかげで午後一時半。そこから考えれば車で移動していたぐらいの時間だろうか。

 録音も残っていないようだし、用件はまた後で聞くとしよう。

「これから、どうすんだ?」

「僕は……家に帰ります。衣生は…見つからなさそうですし」

 あの部屋も気になるがもう調べられることも手がかりも何もない、こちら三人はこうして暇だ暇だと出向いてはいるが、いざという時には召集されるかもしれないのでずっと巣を空けているわけにもいかない。

「じゃあ私たちも一度帰りましょうか、書類ありますしね」

「それは君の仕事だろ? 俺は誘拐事件の聴き込みといくよ」

 この『誘拐事件の聴き込み』というのは八雲が言うお決まりのサボり口上だ、こう言ってふらっと離れて居場所がわからなくなってしまう。きっとどこかでタバコでも吸いながら適当に街を散歩でもしているのだろうな。

「私は大輔の家に行ってみようと思う、実はそこにいるかもしれないしな」

 魔理も魔理で随分と身勝手だ、でも大輔くんは特に迷惑そうな顔はせずに了承をした。これで全員のこれからの行動が大体決まったわけだ。一番しっかりするべき人が非常に不安なんだけど。









「……………!」

 締め付けられるような感覚と共に真っ暗な世界が広がった。

 ……いや広がってはいない、目は強制的に締め付けられており、口もなんらかの…おそらく粘着テープの類で閉ざされていた。腕は腰の後ろで固められており身動きはまともにとれるような状況でないことぐらいはすぐにわかった。

 座らされているらしく体に小刻みな振動が伝わってくるあたり、どうやらここは移動している車の中なのだろう。わけのわからない状況にパニックを起こしそうになった心臓が動悸して思考の調子を乱していく。

「今日は運が良かった、偶然近くに一人居て。さらにもう一人だ!」

 妙に大きな声を響かせた男の声が耳に入った。

「危なくないですかね…あんなところで一人なわけがないでしょう。きっとすぐ怪しまれますよ」

 今度は低く落ち着いたどこにでもいそうな男性の声だ、先ほどの男とは正反対の声を彼は響かせる。

「今まで通りにやればいいんだ。携帯電話とかはなかったろうな?」

「あぁ、ポケットも見た。二人ともバック類は置いてきたか持ってない」

 最後にもう一人似たような低い声の男がいるらしい、どういうことかはまだ理解できないがどうやら三人の男が車に乗っていて私を含めた二人の女性がこうなっているらしい。

 噂の誘拐事件とやらだ、ちょっと考えればすぐにわかることだった…話だけしか聞いちゃいないがそれは確かだとなんとなく理解した。

 そんな恐怖やらなにやらで悲鳴の一つでもあげてしまいたい時に私は胸元に当たる違和感を感じた。ごつごつしているそれを感じると、すぐにこうなる前の記憶が戻ってきた。

 確か私は落とした携帯電話を拾いに行って河原を四つん這いになりながら探していた、それでお目当てのおとしものを拾ったところで後ろからいきなり襲われて意識が遠くなって…。そうだ! その時に慌てて手を携帯から離してその時にこんな場所に入り込んだのだろう、この異物は携帯電話だ。

 これさえあればどうにかなる! なんて場合じゃないのはわかっているが、せめてなんとかできないものかと必死に体をよじらせる。

「起きてますよ、その娘。私運転してますから、なんとかしといてください」

 おそらく最後に喋った三人目の男がそう口を開いた、不用意に動いたせいで男に気づかれたらしい。彼らは慌てもせず、私に手を当てて何かをしている。

 しまったな…これじゃ携帯電話なんてすぐにバレるっていうのに…。

「こいつ、携帯持ってます! どどどどうしましょう!」

 二番目に話した男が胸元に忍び込んでいた携帯電話を見つけえらく動揺した声で車内を騒がせた。三番目の男は変わらず冷静に運転を続けたらしく、対応したのは最初のあの元気な男だった。

「おまえ調べたんじゃなかったのか」

「隠し持ってたんです!」

「隠してるのを見つけるのが調べるってもんだろ。仕方ないな、一度どっかに止めてそれ捨ててきな、ちゃんと拭いてから捨てろよ」

 それから間もなく車は止まり前からドアが開く音がした。車内に残った二人の男がほぼ揃いのタイミングでため息を吐いたのが嫌に耳の中へと響いた。




 その頃、八雲はいつもどおり聴き込みということで適当に車を走らせていた。

 ふと傍へ目をやると白いワゴン車が閑散とした駐車場に停まっているのが目に入り、彼はその車から離れた場所にわざわざ車を停め閉じた窓から様子を見ていた。

 白いワゴン車というどうも事件や怪しい物事に関わっていそうな車を見た彼は暇つぶしとさほど変わらない感覚でその車を見つめている。

 奥のドアが開いたらしくそこから小太りの男が猛ダッシュでどこかへと走っていく。もよおしたのだろうか、いかんせん気になるデフォルトと言っていい怪しい車は彼を待つかのようにそこへ停まっていた。

 待たれている彼というのは小太りの男かこの八雲か。

 彼は自分だと適当極まりない勘で確信を得て、自分の車から静かに降りワゴン車へと歩き始めた。小太りの男が戻ってこないか何処へ行ったかを横目で確認しながら一歩一歩ワゴン車へと近づいていく。

 魔理や玲に連絡できる携帯は車においてきたらしい、一応銃は所持しているがあからさまに手に持って車に向かったらどっちが犯罪者だかわからないし思い違いだったら処分じゃすまないだろう。

 左手をコートのポケットに突っ込みながらワゴン車のとなりに張り付く。窓はマジックミラーのように中を伺うことはできない、こういう窓は黒い部分を見つめればいいなんて聞くが顔を近づける気にはならなかったのですぐに顔を離す。

 運転席をこんこんと叩き運転手を呼ぶことにした。

「誰だい?」

 待つことなく30代後半と思える男が窓を開けて顔を見せる。奥を伺いたいが不自然な事はしたくない、運転手と話しを続ける。

「なぁあんた、この車どこで買ったんだ?」

「………何か気になることでも?」

「いやいや、窓、ミラーにしてるでしょ? 元からこういう車だったのか?」

 男は少し渋りながら「いいや」と答えた。この間に車内にいる人の息づきでも聞こえればいいと思ったが数人いるように感じられるが静かな車内を考えると確信は持てない。

「あとナンバープレート、これも最初っからこんななのか?」

「…ナンバー?」

 分かるぞ、この男は疑っている。そりゃぁ当然だ、嘘なんだからな。

「小動物でも轢いたのか? 血がついてる」

「そんなわけ……、放っておいてくれよ」

 この男と話していると先ほどまで持っていた推測が確信に変わっていくような気がした。

「ナンバーは置いといて、ミラーウィンドだよ。これどこでやったの?」

「言えないよ、申し訳ないけど」

「そうかい。おっ、連れさんが戻ってきたらしいな、俺はこれで」

 顎で奥を指して身をかえし男に背中を向ける。小石を鳴らしながら音をたててワゴン車から少し離れる。横目の端で男が一瞬指した方へ顔を向けたのを確認すると素早くドアの影に身を隠す。

 小太りの男はまだどこかでもよおしているのか帰ってきてはいない、そして車へ戻ったはずの正体不明の男は実は隠れて姿を消している。その状況に陥った男は窓から少し顔を出して辺りを見回し始めた。

 むき出しになった顎へ鋭い一撃を叩き込む、起立の力も入ったとびきり強いのを。

「ぁぎっ」

 男はそう声を上げると窓枠に後頭部をぶつけて動かなくなった。良くて気絶だとは思ったが悪ければ死んでるかもしれないなコレ、コイツが幸運であることを祈ろう。

 何かされる前に拳銃へと手を伸ばし、同時に運転手席のドアを勢いよく開ける。窓枠にひっかかっていた意識のない男はドアが開いた反動で地面へと転がり力ない顔を晒した。

 一瞬本当に殺してしまったかと思ったが、それどころではないと気付き、銃を後部座席に向け乗り込む。

 後部座席には女性が二人拘束されていた、こちら側からは見えながったが中央の座席のドアが開いている、小太りの男はそこから出て行ったのか? 注意深く車内を見回しながら拘束されている二人へと空いている左手を伸ばす。

 まずは近いOL風の女性の口を塞ぐテープをはがす。どうやらこちらは意識がないようで話しかけても返事がない、もう一人は意識があるようだしテープを剥がそうと手を伸ばすため体を動かした。その時、足が何かにぶつかって、その何かを落とした。

 それは灰皿だった。

 助手席の方にあったらしく、まだ新しい灰が残っているのが見て取れた。

 ちらっと目を昏倒している男の方へやるが、それらしきタバコや箱は見えない。小太りの男のだろうか。

 瞬間、目に入った物と同時に自分の中で一つ可能性が浮かぶ、それと同時に急いで左手を引く。左手のあった場所には何処からか勢いよくスタンガンが飛び出し空の中でバチリと火花を散らせた。

「三人か…ッ!」

 運転席から飛び退いて車を離れる。もう一人の男は開いたドアの裏に隠れていたらしく、のっそりと影から顔の右半分を出してこちらを覗う。どちらも近づこうとも逃げようとせず、銃口をむければ晒した部位を影へと隠し状況は膠着していた。

 正体不明の男は中央のドアを閉めすぐさま助手席のドアを開きそちらからも顔の半分を覗かせた。

 運転席にはいかせねぇ…。そう心の中で呟きながら銃口を運転席に向け続ける。男は突然腕を出し灰皿とスタンガンをこちらへ放り投げたが灰皿は少し手前へ落ち、スタンガンは頭の上を飛び越えていった。

 その灰皿へ目を移していたすきに男は運転席へ飛び込む、威圧的に銃を向けて男を脅すが男は構わずハンドルへと手を伸ばす。

 撃つか…というところで小太りの男が向こう側からワゴン車へと走ってきているのが見えた。そして男は懐から自分が持っているのと同じ銃を取り出し躊躇いなく引き金を引いた。

 嘘だろと思いながら半ば勘で身を逸す、それがどうはたらいたかは知らないが銃弾は腰の近くをかすめ衣服を裂き身体をかすって駐車場の砂利小石を弾き飛ばしながら埋まった。

「早く乗れ! テメーのせいだ!」

 男は小太りの男がドアにかけ車体に足をかけたのを見るとすぐさまワゴン車を動かした、俺の方へ。

 俺はぶつかる直前に飛び退き、先ほどの弾丸のように砂利小石を大げさに飛ばしながら回避をした。二三回転がって起き上がりワゴン車が向かった方向へ銃口を向けたが、そこにはもう白い車体は見えなかった。

「クソッ……、撃てばよかったか…?」

 かすめた腰の部分は服が少し裂け、そこから小さな血の粒が滴れる。

 倒れている男はしばらく目覚めそうにない、ゆっくりと自分の車へと戻ると警察内の知り合いに事を伝えるために電話を探した。







「しっかし広い部屋だなー、一人暮らしなのか?」

「いえ、妹…双子の兄妹で住んでるんです。そっちの部屋は入らないでくださいよ、アイツのですから」

 食事を済ませた後、すぐに魔理さんと部屋へ戻ったが、彼女の姿はなかった。気配は何時でも感じるのになぁ。

 念のためベランダや風呂場、トイレ…そして物置に使っている小部屋も見たが何処にも彼女の姿は無い、安心すべきなのか警戒すべきなのか…どちらにせよ心休まる時はまだまだ遠いらしい。

 魔理さんの方は一旦部屋から出て辺りを見てくれていたらしいが、何処にも彼女は見当たらなかったらしい。

 ふとキッチンとリビングの一点で足が止まる。あの夜、彼女が事をしていた場所だ、彼女はあの後にきちんと痕跡を消して眠ったらしく床はぴかぴかと磨かれていたようだ。

 その事を思い出すと身が震える程の寒気を感じる。

 署に戻るからということで魔理さんは連絡先を交換し、エレベーターに乗って去っていった。相談をした探偵事務所とも連絡は取れるようにしているし、一応衣生の家にも自分の連絡先を書いたメモを残しておいた。

 これで何か用事が出来ても急に現れるようなことはないだろう……電話があったかは記憶しちゃいないが。いつかもう一度彼女の家に行ってみるのもいいかもしれない、忍び込むのか呼ばれるのかは知ったこっちゃない。

 また一人ぼっちになってしまったのでDVDボックスへと手を伸ばし暇を潰そうと動く。あの床から離れた時に、自分はそこらじゅうの床のとある点に気づいた。

 あの床と同じく、どこもかしこも非常に綺麗だ。磨かれている、掃除されている。僕の髪の毛一本さえも落ちていないんじゃないかと思わさせるぐらいに床じゅうが掃除されていた。

 そんなことが出来たのは彼女ぐらいだろう。魔理さんや玲さんがそんなことしてくれるとも思えないし、あの八雲って人は丁寧に掃除なんてするタイプには見えない。

 急に腰のポケットに入れていた携帯が振動した。

「もしもし、大輔君か?」

 声は八雲さんのものだった。

「衣生って娘の特徴を聞きたいんだが」

 虚ろな返事をしながら、衣生の特徴を薄らぼんやりと思い出す。後ろにちょっと伸びた黒髪で……服はよく思い出せないけど…顔つきはちょっと日系には思えないような整った顔で……。

「黒髪で…身長は君ぐらいか?」

 身長? 彼女の体躯はエアコンの室外機の裏にすっかり隠れてしまうほどの小柄だった。つまり結城より大きい僕と比べれば小さいのは一目瞭然なはずだ。

「……? いえ、僕よりずっと小さいです、髪型は…後ろにちょっと長くて…」

「そうか、じゃああれは違うのか」

 あれ? さっきから疑問符ばっかりだが、警察関係者である八雲さんと最近の事件、そして聞かれた事を照らし合わせたアイディアは成功し一つの話題へ繋がった。

「誘拐事件のことですか?」

「そうだ、部屋ががらんどうだったからな。被害に合っていたのかも…なんてな」

「それでさっきの黒髪で僕と同じくらいの…ってのは?」

 八雲さんはちょっと黙った、がすぐに口を開いて話を続けた。僕に対して他言無用という条件付きで、理由は『俺からバレたと知れたら玲に何をされるか』だそうだ。

「今日、新たに二名が誘拐された。まだメディアには伝わってない。さっきのがその誘拐された女学生の特徴なんだ。言うなよ、絶対に言うなよ」

 最後の一言がやけに言いたくなる衝動を押し付けてきたが、本人が必死なのでいうことはないだろう、多分。

 それにしてもあの後そんな事があったなんて、しかもこの人は衣生の事を心配してくれていたのかもしれない。あんまり人を見かけで判断するもんじゃないな。

「わかりました。衣生は…守ります」

 なんでかわからないが、僕はそう宣言していた。

今回は全員が『目星』、八雲がアクション系のロールを多数振った時のセッションの話しです。『アイディア』って便利ですよね、情報があって成功すれば少々のことなら察することもできますし。クリティカルすればニュータイプみたいになるんじゃないでしょうか、やってみたいですね。

 またTRPGセッションにも行きたいですが、忙しいままでままならないです。

 それではまた次章で会いましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ