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Chapter7 大迷惑

【CPUの自由な演技は狂人化させるにはぴったりです】

【大体ダーディーでブラッティな感じになっちゃいますが】

「あんな場所に居たら…死んじまうよ…」

 暗闇が声が聞こえた。若い…教団員じゃないらしい。変わり者の馬鹿だろう、ゆったりと手に持った散弾銃を声が聞こえた方に向け息を殺す。

 擦る様な足音は少しずつ近づいてくる。

 火でも焚いているわけじゃないのに馬鹿が蛾のように集まりやがって、無駄な命をそのまま無駄にするつもりか。

 下へ向かう度に胸糞悪い気分になる。手始めは昔の壕の名残かとも思っていたが、どうやらここは何か別の目的をもって作っていたらしい。あの爺がそこそこ熱心な物は確実にここにある。

 足音はすぐ近くへ来ているように思えた。角に背中を収めて息を殺す。

 そして何も知らない影が通路を進み、角に溶け込む俺に無防備な背中を見せつける。まだ子供のようだが、こんな場所にいる時点でもう何も関係はない。

「そこでしたかっ」

 ふいに無防備な背中のさらに後ろから声がしてそちらに散弾銃を突きつける。男は懐から拳銃を抜き取る前に銃口を向けられるが、背中を守るように間へ割って入る。

 あの糞警察もどきだった。

 手早く背中を叩き逃がす。その手際はまるで本物の警察官らしかったが、どうも気に食わない笑顔でこちらを見やがる。

「彼の前では、僕は警察なんでね」

「そうかいご苦労」

 散弾銃を鳴らす。

 すぐにでも撃ち殺してやりたかったが、コイツにも一つ二つ聞きたいことがある。

「それで、お前はここで何してんだよ」

「警備ですよ。撃ちますか?」

「勿論」

 散弾銃を腹に押し当てて行動力を奪わんとするが、男は指を弾いて後ろに倒れこんだ。

 そしてそこに小太りがつっこんでくる。何処にいたのか何をしていたのか、最初っからコイツとくっついていたとは思えない。タックルをかまそうとしてくる小太りの顔は驚きでひきつっているようにも見えた。

 どうせ簡単に丸め込まれたのだろう。

 だから撃ってやった。

 簡単に止まりこみ倒れた小太り、どうせ俺と一緒に誰も看取ってくれる予定もない奴だったろう。それよりも問題は男…遠藤と言うのだが…ソイツが通路の奥へ隠れた事だった。

 面倒なことになりやがった。

「いいぞ! 殺してやるよ、お前は前から心底ムカついてたんだ」

 闇の中から声が跳ね返ってくる。

「僕は嫌われるつもりはありませんでしたがね!」

 声に力がこもっている、どうやらあっちもやる気らしい。逃げられたガキはどうでもいい、アイツが盾や罠に使うつもりでもそのまま殺してやろう。

 空薬莢を床に落とし、俺は暗闇に銃口を向けた。







「逃げてください!」

 僕はそう言っていっきに閉じられた牢の中に飛び退いた。勢いで錆びていた格子を倒しながら中に倒れこんだが、嫌に力が加えられた左肩がジンジンと痛む。

 アイディアも天啓も何もない、見つけれたものも何もない。だがやっと気付くことができた、もう誘拐された人は騒いでいないのにそこには小さく不愉快な笑い声が響いていることに。

 叫び声を聞いたその場にいた全員がこちらに飛んだ僕を見つめる。衣生は心配そうな顔でこっちを見ている、困ったことになったのだろうな。

「どうしたんだ?」

 魔理さんがこちらに静かに歩み寄ってくる、その腕は銃を構えていたがそこにいる奴の事は認識していないらしい。

「ダメです、来ちゃいけない…と思います!」

 確信も糞もなかった。

 そこへ僕が押し壊した出口から一人の女性がボロボロの布きれのまま外へ飛び出そうとして止まった。

 ぴたりと止まった彼女を僕らは同じように一歩も動けず静止して見つめていた。その体は小さく震え誰にも届きもしない悲鳴をあげる。

 そして化け物が姿を現した。

 命を失った彼女がコンクリートへ倒れると共に鉄格子へ密着するようにその異形の生き物はそこに留まっていた。鮮やかな赤色をその身に塗りたくったように煌めかせたソイツは「クククッ」と小さく声をあげるとこちらへその剥かれた目を僕へ向けた。

 肉塊のようなその姿を見て傍の女性が小さく悲鳴をあげ、玲さんが畏怖の言葉を小声で漏らす。魔理さんが銃を向け、八雲さんは衣生を腕の後ろへ庇うようにしながら腰に収めていた銃をゆっくりと握りしめる。

「お前にも来て欲しくないんだけどな…」

 ソイツは確実にこちらを捕えながらふわふわとこちらへ向かってきた。恐怖をこらえながら足を動かし距離を取ろうとするが逃げ込んだのが牢屋の中、どうも壁に背中をぶつけてしまう。中には事切れてしまった女性のほかにもう二人居る、せめて彼女らだけでも守らなければいけない。

 魔理さんの銃口がひかる。掠めたのか当たったのか、化け物から少しだけ血が飛び散る。大きさが大きさなのでどうみても致命傷をあたえれたようには見えない。

 ソイツは一向に攻撃という攻撃をしてはこなかった。

 頭の中には一つの考えがあった。それはどう見ても血を吸ったというあの行動は食事の一環であり、もう血を吸うことはできないのではないかということである…のだが、人間で考えてみると腹八分なのかもしれないし、だったら良いやと行って死んでしまっては親に見せる顔もない。

 こういう時こそ彼女の考えを聞きたいのだが、当の彼女は

「あっ危ないじゃないですか! 伊高君に当ったらどうするんですか」

「どう考えても当らねぇよ!」

「八雲ォ! どうすればいい!」

「知らないって言ってるだろ!」

こんな具合だ。なんで真面目に考えてくれないんだよ、そして玲さんはまだ畏怖の言葉を吐いている。あれはしばらく正気に戻ってくれはしないだろうな。

 化け物が動かないうちに腰を浮かせ女性の前に立ち手を出させまいと覚悟を決める。倒れた鉄の格子は勢いよく駆けよれば手は届くだろう、だが持てるかどうかは五分なんていう賭けじゃない。だが少しでも浮けば勝率はあるようなものだ。

 そしてそれを実行しなければ確実に僕は死ぬだろう。

 魔理さんが弾倉を音をたてて入れ直し、再び銃を向ける。それを知らないのかそれとも知っていても気にしないのかソイツはこちらにぐるぐると眼球を向けた。

「ままよ!」

 定番のようで定番じゃない運任せを発し床に倒れる鉄格子へ指を滑り込ませる。思ったより重くはない、錆びていただけではなく何かの問題があったんじゃないかと冗談でも言いたいが化け物と僕の距離は先ほどの半分くらいに縮まっていた。

 二発の銃声。一発は化け物を掠め、また小さな血痕を壁に飛ばした。もう一発は鉄格子に当り、激しい音をたててぶら下がる電球を一つ砕いた。当の化け物はというとその音にも弾丸にも大した反応をしめさなかったがほんのりと動きを鈍らせたようにも思えた。

 擦れるような音をたて浮いた鉄格子に靴の先を滑り込ませる。これでなんとかならなきゃここで終わり、なんとかするのが今だ。勢いよく蹴り上げられた鉄格子はゆっくりと化け物にぶつかりその重さをソイツにぶつける、ふわふわと浮いている謎の浮力もそれには影響を受けたようで揺れたその体に…その鉄格子へさらに蹴りを放つ。鈍く嫌な声をあげたソイツが向かいの鉄格子に血の飛沫をつける。

 掠めた傷から溢れる血はそのままの匂いをこびりつけ怪物の悲鳴と合わさって一層気持ち悪く思えた。

 この隙に乗じて女性らを八雲さんの後ろへ誘導し自分もそちらへ滑り込む。玲さんも平常を取り戻したようで魔理さんと同じように銃を向けた。

 僕はそれを見ずに衣生へと詰め寄った。

「なんなんだよアレ」

 当の衣生はちょっとくねくねしながら返事をする。

「アレは星の精と言いまして…そのですねぇ…」

「はっきり言ってくれないか、どこも星っぽくない」

「……細かく言ってわかるなら言いますが?」

 またこれだ。せめてどこが星っぽいのか教えてくれたっていいじゃないか。

「それはケタケタ笑い声が聞こえて見上げたら満点の星空が見えたぐらいのネーミングですよ」

「そういうのはいいから対処法とか無いかな嬢ちゃん!」

 八雲さんが背中で怒鳴りつける。忘れたかったが非常事態であることには変わりない、衣生はちらりと背中から顔をだし傷ついた星の精を眺めた。

 そしてふぅと溜息とは違う柔らかい息を吐くと、こちらへ振り直す。

「銃はちょっと後回しで…それ、使ってください」

 衣生が指をさした先には折れた鉄格子の一部が転がっていた、よく見ていなかったがどうやらそれは僕が蹴った際に壊れたもので最悪振り回せない事はないぐらいに小さくなっていた。

 だがそれはなんたることか星の精の御足元に転がっている、ふざけるな、そういった目つきで衣生をにらみつけると彼女はチッチッチと古臭く指を揺らした。

「行くだけ行ってみてくださいよ」

「嫌だ」

「後でなんでもしてあげますよ」

「後がないかもしれないだろ」

「なら今で」

 誰がこんなアスベストもかくやというぐらいせき込みそうな場所で一服洒落込みたいと言うか!

 そんなことをしている内に八雲さんが星の精の手前にしゃがみ込み鉄の棒を拾い上げていた。行動的な大人の人って凄いな、全部やってくれたらもっと凄い…そう心の中で呟く。

 だがそれよりも星の精が微動だにしていないことに気づくと、そこで銃を構えていた二人の表情も変わった。

「どういうことだ?」

「ちょちょいのちょいってことです」

 予想はできていたがやはり彼女の仕業であった。彼女はさっさと殴り殺しちゃってくださいと慈悲も何もない台詞を吐き僕の腕にすり寄るように腕を絡ませてくる。理解のできていない僕と玲さんは星の精と同じように微動だにせず、それを眺めていた。

 気が狂っている。

 それか彼女以外全員が当の昔に可笑しくなっていたのだろうか。

 八雲さんが力強く鉄棒を振り下ろすと星の精は悲鳴どころか倒れこむもせず、強力な力でそこに固定されているかのように振り下ろされた鉄棒をその肉塊で受け止めた。

 それからは見ていない。

 終わった頃には血を失い消え去りそうな肉塊が空の牢屋に押し込められていたのを目の端に見ただけだった。

 どうやら僕らの味方は途方のない存在らしかった。

「!」

 銃声が壁を伝う。

 魔理さんも玲さんも八雲さんも銃はしまっており、誰も発砲した様子はない。ただ遠くからその音は伝わって来たようだった。

「…斉藤!」

 僕らは誰もいない廊下に叫ぶと走り出していた。

 誰も、誰も衣生の暗い表情なんか気にしてはいない。誰も知らない。






「畑仕事で、そうですか」

 ディアベルさんがゆったりとおばあさんと会話しながら和菓子をつまんでいる。建物の構造はこの前来た時にある程度知っておいたが、どこにも森をしまっておけるようなスペースはないようだ。

 予想はしていたがハズレ、だが抜け出して合流なんてのもすぐできそうにないのでこうやってお茶を濁しているというわけだ、文字通り煎茶を燻らせて飲みながら。

「それより若いのに困った事があったのかい?」

 話題がこちらへ来る。

 曖昧に笑いながら適当な返事をする。隣ではディアベルさんが珍しそうに和菓子を食べて意味深にうなずいたりしている、それが少し面白くってそういえば彼が正体不明の外国人だということを思い出した。知らない事の方が多いような気もするが悪い人じゃないようだし気にしないで良いよね、そう呟く。

 お茶をすすって苦い顔をしたディアベルさんをおばあちゃんと二人で笑った。

 通さんはトイレに行くと言って何処かへ行ってしまった、きっと真面目に探してくれてるのだろう。悪いことをしているなぁ…甘い和菓子を舌に乗せて小さく息を吐いた。







「こっちには! 無関係の少年もいるんですよ?」

 撃ち尽くさないように丁寧に狙っては銃口を壁に隠す。

 きっとあの人は撃ち尽くしたと見るや獣のように飛びかかって散弾の歯形をつけにくるでしょう。

 そんな物騒な野獣のハントを頼まれたとは想像もつきませんでした、ただここに来る危険な人たちを処分してくれとのことでしたから。

「何も知らない奴がここにいると思うか」

 闇の中から言葉が返ってくる。

 やまびこでもましてや延々続くトンネルと言うわけでもないのに遠くから聞こえてくるように思えて仕方がない。

 確かにこの少年が何も知らないでこんな悪性の泥沼に入り込んできたはずがない。だが私は警察という建前を突き通さなくては、彼が原因で殺されてしまうかもしれない。彼に逃げられては追っても背中が千切られるし、追わねばクライアントに八つ裂きだ。

 残り四発、あの獣の散弾はまだまだあるどころかきっと私のヤワな体術じゃ近づいても負けるかもしれない。

「落ち着いて聞いてくれ、僕は遠藤…警察官だ」

 闇に沈ませないように小さくした声を脇に隠れる少年へと向ける。

 彼はどうやら聞いているようだが返事を返さない。無理もない、声を出したら殺されそうな空気だから、まともな人間は逃げる事もできないだろう。

「ここには通報があって向かわされたんだ。女の子の声だった…かもしれない、心当たりはないかい」

 彼は頷いた。どうやら一人だけってことはないようだ、となると他のメンバーも探さなくてはならないな。

「おぅい、聞いてんのかよ」

 闇からまたあの狂犬がこっちに問いかける。そろそろここを動きたいところだが、鉢合わせで勝てる気がしない。

 足音も聞こえない、あの男はゴム底だったか? いや編み靴革靴スニーカー? よく見たかったがこんなに暗くてはどうしようもなかったろうな、冷や汗がゆっくりと瞼の上に滑り込む。

「聞いてますよ。私は何も知りませんがね」

 暗がりからクククッとあざ笑う声が聞こえる。何処だ、頼りない銃を向けて黒の中を探るが何処にもいない。

 選択肢が頭の中をぶらぶらしている。

 突貫か待ち伏せか。今いる場所はどう暗くなっていようと通路の終わり目丁字路だ、そこに隠れている私は二方向から丸見えなのだ。そうなれば回り込まれているのならお終い。

 だがどうだろう、相手もこちらもこんな薄気味悪い場所に詳しい訳が無い。上手く回り込める算段がないのにそんなことをするのだろうか、アイツにあるのは散弾だけだ。

「なんて、洒落てる暇があればいいのですが」

 振り向き後方の警戒をする。どこも暗闇というわけじゃない、一方にはぶらりと垂れた小さい電球があり少年の隠れた方には乱雑に重ねられた箱は布が…警戒すべき方は見えている。

「少年、後ろ見ててくださいよ」

 これで一方向、アイツがいたはずの暗闇は揺れもせずに不安感だけを煽ってくれる。

 …そういえばさっきの嘲笑からやけに静かだ。

 もしかしたらこっちに来ているのだろうか、それともただ息を殺しているだけか。関係ない、ここで獣が頭を出してくれるのを待てばいいだけなのだから。

「…少年?」

 最悪です。

 居ると思った人がいないで、居ないと思った人が居るというのは。

 それが野獣のような狂人でないだけ幸運なのでしょう、落ち着いて銃口を向けてみるがふぅと一息をついて暗闇に目を戻す。

「お疲れ様です…って言った方がいいですか?」

「誰だ」

「遠藤と言います、手帳見ますか?」

「別のトコのか」

「えぇ、でも貴方は有名ですよ」

 最悪です。

「八雲さん」

 それでも好都合ですがね。

 その一団の中には少年の心当たりかもしれない少女も見える、なんとか幸運に縋り付いたのかもしれないが、狂人の呼吸音を探しながらだと心が擦り切れるようだ。

 さて、どうやって撃退して反撃をやりのけようか。

 どうあがいても最悪ですよ。

 お久しぶりです、卯月木目丸です。

 夜はやはり紅茶とか温かい飲み物がいいですね。このセッションを行った友人たちと最近艦これTRPGをやりました、楽しかったです。参考には一切ならないプレイングでしたけど。

 他の作者様の作品は少し読むのですが、ファンタジーは私には書けそうにありません。セブンススカイみたいなので勘弁してください。

 それではまた次章でお会いしましょう。

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