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ビタミンは譲れない

 同じ宿に泊まる事になった三人はやはり黒の国の民だった。仕事で翠の国を訪れ、これから故郷へ帰る所なのだと言う。

 くるくるの癖のある地毛に二メートルは越そうかという堀の深い大男(年齢不詳)がアラド、ストレートの髪をした二十代前半頃の爽やかな笑みを浮かべている青年がアス、そして目元に厚手の布を巻いている盲人がヴィー。全員の共通点は黒髪黒目(ヴィーの目は見えないけど)、そして肌が浅黒い事。そんな三人と共に、私は今夕食の為に街の食堂に入った所。入口に近い席に座った私達は、店内にかけられた黒板を眺める。そこにメニューが書いてあるからだ。

 この世界の食堂やカフェに紙に書かれたメニュー表は存在しない。私がバイトしていたミスグレイもそうだった。私の予想では紙があまり普及していないから。王城や役所にはあるんでしょうけど、一般家庭に綺麗な用紙が置いてあるのは見た事が無い。本も街の図書館で借りるのが一般的で、個人で所有する数はほんの僅からしい。貨幣も全部コインだしね。


「チヒロは嫌いな食べ物とかある?」

「いえ、大丈夫です」

「なら、こっちで適当に頼んで良いかな」

「えぇ。お願いします」


 こちらの世界に来て一週間ではまだまだ知らないメニューも多いから、逆にそうして貰えると助かる。私はアスの提案にすぐさま頷いた。

 実は不思議な事に、私はこちらの世界の言葉も文字も分かる。世界が違うのだから通じない方が当たり前なのに、何故か最初からその障害はなかった。理由を考えても分かる筈が無いので、一先ずその謎は保留にしている。


「じゃ、白身魚のフライと鳥モモのから揚げと厚切りハムのステーキ。あ、牛筋煮込みもいいな。あとー……」

「あ、あの!」


 一度任せるといった手前どうしようかと迷ったけれど、どうしても我慢できずに口を挟んでしまった。ん?とこちらに顔を向けるアスに私は苦い顔を向ける。

 あのね、青年。分かるよ? 若い男性が肉を好むのは分かっているんだけどね。


「野菜は……?」


 私がそう言うと、アスはアラドと目を合わせた。

 だってね! 絶対栄養偏るでしょう! こちとらアラサーよ!? そんなに肉ばっかりじゃ胃もたれしそうだし、お肌の為にビタミンは必要不可欠なの! これは譲れないの!!


「んー、そんじゃあ、ミモザサラダも追加する?」

「是非!」


 勢いよく返事すればアスがぷっと吹き出した。あ、笑ったな。必死で悪かったわね。


「そんなに野菜が好きなんだ。フルーツも好き?」

「好きです」

「ならりんごか梨を剥いて貰おうか」


 そう言ったアスの目線の先を追えば、確かに奥のカウンターにりんごと梨が入った籠が置いてある。私は目を輝かせた。梨は大好物なのよ。


「なら梨が食べたいです」

「うん。それも頼もう」


 アスが店員を呼び止めて先程のメニューをオーダーしてくれた

 そう言えば、さっきから私とアスしかしゃべってなくない?

 

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