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笑顔は社会の必須アイテム

 二回歩いて一回馬車。それを繰り返し、やっと初日に泊まる街に着いたのはもう日も暮れかけた頃。行商グループのリーダーに明日の集合時間を知らされ、街の入口で別れた。皆ずっと一緒に行動ってわけじゃなく、それぞれに予算の都合もあるので泊まる宿は自分達で取る。

 さてなるべく安そうな宿を探そうと、私は一人で街をぶらつき始める。けれどその足は直ぐに止まった。


「……大丈夫ですか?」


 頭からすっぽり被ったマントの下で男の人が地面に蹲っていた。具合でも悪いのかしら。思わず声をかけて近付き、傍にしゃがみこむ。顔を覗けば、目元に厚手の布。この人、一緒に馬車に乗っていた盲人だ。


「あ、行商の人達と一緒に移動してきた方ですよね?」


 確か彼には同行人が居た筈。慌てて顔を上げて周囲を見渡せば、こちらに向かって走ってくるあの大男が見えた。


「ヴィー!」

「……アラドか」


 大男の声を聞いた盲目の彼が静かに呟く。あら、若いのに良い声してるわね。


「どうしました? お加減でも……」

「いや、もう大丈夫だ」


 ヴィーと呼ばれた盲人はアラドなる大男に肩を抱かれて立ち上がる。どう見てもアラドの方が年上なのに、彼が敬語を使っている所からするとヴィーの方が立場は上らしい。身分の差かしら。


「ありがとうございました。お嬢さん」


 あらやだ。お嬢さんですって。友達に聞かせてやりたいわ、その台詞。内心テンション上がっていても表には出さずに首を横に振る。日本人ですもの。外ヅラは謙虚にね。


「いえ、私は何も」

「……ヴィー。こちらの方は?」

「城下から此処まで一緒だったろう。アラドが馬車に乗せるのに引きあげた方だよ」

「あぁ、これは失礼を。ありがとうございました」

「いえ、大事無いのなら良かったです。じゃあ、私はこれで」


 軽く会釈して踵を返そうとしたら、目の前の道を塞がれた。


「あの……?」


 首を傾げて前に立つ人物を見れば、アラドとヴィーの同行人、馬車で私に一度笑いかけた若い青年だ。浅黒い肌に爽やかな笑顔を浮かべて彼は私を見下ろした。


「もう今日の宿はお決まりですか? お嬢さん」

「いいえ。これから探すところです」

「そう。なら俺達と一緒の所でどう?」

「え?」

「連れがお世話になったお礼に。丁度今、部屋が空いている宿を見つけてきた所なんだ。後一部屋ぐらいならなんとかなると思うよ」


 知らない街で一から宿屋を見つけるよりは彼らの好意に甘えた方がいいでしょうね。何より今日はくたくたで、これ以上歩き回る気にはなれないもの。


「それならお言葉に甘えて」


 そう言葉を返して自然と微笑む。社交辞令の微笑みは私にとって既にデフォなのよね、これが。

 

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