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最強のヒキコモリですか?

「説明して頂戴。

「……勿論です」


 私は今馬上で揺られている。馬車ではない。アラドが騎乗している馬に共に乗せられ、彼の背中に必死にしがみついているのだ。よほど急いでいるようで、馬はかなりのスピードを出していて、みるみる内にお世話になっていた町役場が小さくなっていく。


 あぁ、さようなら。私の平穏。


 首を捻って町を見送る私に、アラドの暗い声が届く。


「ナキアス様とナルヴィ様が城から姿を消しました」

「…………は?」


 突然の言葉に意味を飲み込むのが遅くなってしまった。

 何? 居なくなった? 家出でもしたってワケ?


「向かった場所は分かっています。けれど近付く事ができないのです」

「孤島にでも居るって言うの?」

「状況としては似たようなものかも知れません」


 似たようなって何よ。そんな説明じゃ全然分からないじゃない。


「ねぇ、結局二人はどこにいるの?」

「王城の北に位置する深淵の森と呼ばれる森の奥です」


 森、ねぇ。近づけないって事は獰猛な野生動物が居たりとか、山あり谷ありの地形とかそう言うことなのかしら。


「そんなに危険な場所なの?」

「いいえ。森自体にそれ程危険はありません」

「ならなんで……」

「お二人は竜なのです」

「? どういうこと?」

 

 二人が竜だってことは周知の事実でしょう? それなのに、何故今の話に繋がるの?

 そんな疑問に答えるべく、アラドは前を見据えたまま少し大きめの声で背後に居る私に話しかける。


「竜の姿になったまま森から出てこないのです。竜はこの世界最強の生物。例え騎士達が総出で赴いてもお二人を動かす事は出来ません」

「…………」


 頭の中で想像してみる。翠の国で見たのは、ビル一個分はあろうかという巨大な竜。あれが二匹も森の奥で鎮座してしまったら、確かにどれだけ腕に覚えがある男達が集まった所で太刀打ちできないでしょうね。危険と言うのは森ではなく、竜になった彼ら自身の事だったんだわ。


「お二人は拒絶してしまったのです。人である事を」

「……だから竜に?」

「えぇ」


 あのー。それって確実に私のせいって言いたいのよね? だからこうして私を連れ出したんでしょ?

 全てを拒絶してしまう程、彼らが私を求めていたのだとよく分かった。それぐらい私を想ってくれていたのだと。それに対して随分と冷たい態度だったと今更ながらに申し訳なくもなる。でも私の意志は王城を出た時から変わっていない。だから彼らに嫁ぐ気は毛頭無いの。


「それで、私にどうしろと?」


 硬い声でそう問えば、アラドはしばし沈黙した。そして大きな川にかけられた橋を渡りきった時、迷いの無い声で告げた。

 

「お二人を人に戻す事ができるのは貴方だけです。どうか、お二人をお救いください」


 それはとても身勝手で残酷なお願いだ。

 

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