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「初恋=甘酸っぱい」は何処へ行った

「ちょっと、今どこから……!!」

「チヒロ」


 突然テラスに現れた彼らに投げかけた疑問は直ぐに遮られる。二人は同じ笑みを浮かべて私に近付いてきた。必然的に私はその分だけ後ろに下がり、部屋の中へと戻される。ナキアスが窓を、そして鍵を閉めた金属音が聞こえた。

 ナルヴィが不気味なほど深い笑みを浮かべたまま、私に問いかける。


「チヒロ、ここを出て何処に行くの?」

「何処って……。あなた達には関係ないでしょう」


 すると彼の後ろから、ナキアスも顔を見せる。


「関係ないわけないだろう? 俺達はチヒロに求婚しているんだ」

「……求婚なら、断ると伝えた筈だけど?」

「そんなのダメだよ。だってチヒロはもう、僕らの求愛を受けてくれたじゃないか」

「きゅうあい……? って、待ってよ。食事の時の事なら、私は一度も受け取らなかったわ!」

「違うよ。寝室でだよ」

「寝室で?」

「僕らから水を飲んでくれただろう?」


 寝室で突然された水の口移し。ちょっと待って。アレも求愛行動とやらに入っているわけ!?


「なっ……!! あれは、あなた達が無理矢理……!!? やっ!!」


 突然、ナキアスに抱えられる。しかも横抱きで。急に不安定になった体を支えようと思わず彼にしがみつく。するとその隙を見逃さず、彼の顔が覆いかぶさってきた。


「っんん!!」


 再び唇を覆う柔らかくて厚いナキアスの唇。唇を食まれながら、何度も舌が唇を舐め、中へ侵入しようとぐっと押し付けられる。先ほどの二の舞はゴメンだと、私は必死に口を閉じた。そんな攻防をしている間に気がつけば再び寝室のベッドの上。ナルヴィが寝室へのドアを開けていたみたい。どんな連係プレーだ、この双子。

 ベッドへ下される瞬間に唇が離れ、私は容赦なく目の前の整った顔に平手打ちをした。パンッと痛そうな音が明りの無い寝室に響く。


「最低!! こうやって女性の意思を無視して無理強いするのがあなた達のやり方なの!?」


 王子様なら女性とも遊びたい放題かもしれない。でも、私をその辺の女性達と一緒にされては困る。怒りに任せて怒鳴りつければ、返ってきたのは意外にも弱弱しい声だった。


「だって……他にどうすればいい?」

「どうするも何も……」

「チヒロは俺達を拒絶した。けど、俺達にはチヒロしかいない」

「チヒロが許してくれないのなら、無理矢理以外に方法は無いだろう?」


 ナキアスとナルヴィの発言に、唖然としてしまった。無理矢理しかないって、どういう思考回路してんのよ!


「ちょと……何よそれ。あなた達って自分の事しか考えてないのね。私はどうなるの? 私の気持ちはどうなるのよ! そんな風に手に入れて、本当に幸せなの!?」

「……だってそんなの分からない」

「誰かを欲しいと思ったのはチヒロが初めてだから」


(あ……)


 そうか。竜は生涯でたった一人しか選ばない。つまり、唯一の伴侶は最初で最後の恋の相手。この子達、こんなナリして全くの恋愛初心者なんだわ。

 

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