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敵は時の権力者

 私は一人残された客室で深い溜息をついた。


(早く帰る方法を探さないと不味いわねぇ)


 アラドは今、私の荷物を取りに行ってくれている。ついでに私の意志を二人に伝えてくれるようしっかりと頼んでおいた。寝室での二人の様子を見る限りでは、いくら私が本人達に直接断りを入れた所で話を聞いてはくれないだろうから。


(例え一生求婚され続けても、それを断り続ける自信はある。でも罪悪感を一生抱え続けられるかどうかは別。いくらなんでもこの世界から私が消えれば、二人も諦めが付くだろうし)


 例外の無い規則は無い、と云うではないか。いくら竜という生き物が一度決めた相手を変えないと言っても、一人や二人他の相手を見つける竜の子孫が居たって良い筈よ。その方が二人の為でもあるんだし。


 アラドが荷物を持ってきてくれたら直ぐに王城を出ましょ。場違いな所に長居は無用。厄介ごとは避けるが吉よ。もう日が暮れるから仕事を探すのは明日ね。王城近くの宿なんて宿泊費が高いでしょうから、少しでも離れて安い所探さなくちゃ。仕事はどうしようかしら。ハローワークみたいな施設が此処にもあればいいんでしょうけど。多分無いのよね。アラドに訊いてみる? 話は分かる人だけど……でも立場上王子達の味方だしね。どこで働いているか二人にバレる可能性があるなら却下だわ。


(そう言えば、今何時なのかしら)


 部屋を見渡しても時間を示すものは無い。仕方なく窓辺へ行ってカーテンを開ける。起きた時には赤く染まっていた空が、今は紫から濃紺へのグラデーションに変わっていた。


「……!?」


 ふと、眼下へ視線を落とした私は言葉を失った。

 眼前に広がるのは王城の建物と広々とした庭に設置された沢山の灯火。そこを警備している騎士と思わしき人々。そして岩を切り出して建設された要塞のような防壁。その向こうには数え切れないほどの建物から漏れる明りがイルミネーションのように暖かな光を放っている。

 もしもこれが観光地なら「きれー!」と声を漏らしてデジカメでバシャバシャ写真を撮っている所でしょう。けれど此処は旅行先でもテレビモニタの向こう側でもない。間違いなく一国の王城に私は居るのだ。


(私、帰れる……わよね?)


 この城から、そして地球へと。あまりに圧倒的な権力を見せ付けられた気がして、薄ら寒いものが背筋を撫でていく。その時ふっと甘い香りが鼻を掠めた気がした。


(花かしら……?)


 庭に花壇でもあるのかと、窓を開けてテラスへ出ようと一歩外に出る。その瞬間、目の前に二つの影が現れた。

 それは甘ったるい視線をこちらに投げかけている、そっくりな顔をした二人の王子達だった。

 

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