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基本お断りは即答で

 何を今更と思ったけれど、アラドがあまりに真剣な顔をしているので私は立ち止まった。これくらい餞別代りに答えても構わないでしょう。


「……えぇ、まぁ」


 けど、なんでそんな事逐一確かめるのかしらね。確かにナキアスとナルヴィは顔も声もそっくりだけど、それでも違う人間。慣れれば見分けくらい付くでしょうに。そう思ったけれど、そうは問屋が卸さなかった。


「お二人は本当によく似ていらっしゃって……。陛下や王妃でさえ、完璧に見分ける事は出来ないのです」


 ……これはもしや、双子特有のコンプレックスを私が除いてしまったパターンなのかしら。しまった。二人が私に執着する理由が分かってしまった。あぁ、頭痛がしてきたわ。


「……アラド」

「はい」

「ちょっと戻って話をしましょうか?」


 アラドは一も二もなく頷き、まずは私に室内履きを用意してくれた。柔らかい厚手の布で出来たぺったんこ靴みたいな物だ。あら、これ良いわね。足が楽。会社のオフィス内で使いたいくらい。帰る時に持って帰れないかしら。そんな事を考えながら部屋に戻る。そして再び、先ほどと同じソファに私達は腰を下ろした。


「両殿下は貴方に甘えているのですよ」


 開口一番、アラドが口にしたのがこの言葉だった。


「お二人がああして入れ替わるのは今回が初めてのことではありません。恐らく、自分達を見つけて欲しいからなんだと私は思います」

「見つけて欲しい?」

「いつも彼らは個々の名前を呼んでもらえずに育ってきました。無理もありません。陛下達にも見分けがつかないのですから。けれど、実の両親にさえ名前を呼んでもらえずに成長した子供は何を願うのでしょう?」

「……名前は、存在の証明だものね」

「えぇ。そうです。名前は自分という存在を認めてもらった証。だからこそ、お二人には貴方が必要なのです」


 二人が求婚したのは、私が二人を見分ける事が出来るから。そう思うと、なんだかほんの少し嬉しかった気持ちも消えていく。私は投げやりになって言った。


「へーへー。私は便利な見分けマシーンですもんねぇ。でも、いくらなんでも求婚はやり過ぎでしょう。二人が王子だからって、正妃の立場もあるんだし、慎重に考えるべきよ」

「正妃?」

「あら、まだ居ないの? 正妃?」

「……。あぁ、もしかして、チヒロ様はお二人に側室として求婚されたと思っていらっしゃるのですか?」


 こら、何さり気なく“様”付けで呼んでるの。王子達とは結婚しないんだから、私はただの一般人…………ん? ちょっと待って。


「……違うの?」

「チヒロ様は黒の国の民かと思っていましたが、他国の方でしたか。他国とは違って護国には側室を持つという習慣はありません」


 って事は、つまり…………


「チヒロ様は両殿下の正妃候補です」

「断固として断る!!」

 

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