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怪しい石橋 叩かず回避

 双子を締め出したまま、私はアラドだけを部屋に招き入れた。と言ってもベッドルームにではなく、続きの間になっていた前室に。

 私を見るなり、アラドはポカンと気の抜けた顔をした。


「その服は……?」

「あ、クローゼットの中身、勝手に借りたわ」

「それは勿論構わないのですが……」

「おかしい? この格好?」

「いえ、乗馬や狩りをする為の服なのですが似合っていますよ」


 成る程。乗馬用の服だったのね。どおりでこれしかパンツが入っていない訳だ。通常の私服で女性がパンツを穿く事はあまりないのかもしれない。

 私がソファを勧めると、一度迷う素振りを見せた後彼は浅く腰掛けた。


「お二人からはどこまでお話を聞きましたか?」

「どこまでって?」


 首を傾げる私を見て、アラドは疲れたようにはぁ、と息を吐く。ちょっと、溜息つきたいのはこっちの方よ。


「此処がどこかは?」

「二人の実家なんでしょう?」

「それはそうですが……。ここは王城です」

「……おう、じょう? おうじょうって、黒の国の王城?」

「えぇ。そうです」


 ん? 待って。段々雲行きが怪しくなってきた。


「ナキアス様とナルヴィ様は黒の国の第一王子と第二王子なのですよ」


 あー、はいはい。聞いた? 王子様ですって。すごいですねー。だから正体隠してたって訳ね。え? 現実逃避? 言っておきますけど、地球じゃない世界に居るってだけでとっくに現実離れしてるの。この世界に現実的なことなんて一つも無いのよ。今更何言われたって驚いたりしないわ。

 まぁ、納得できる事もあるわよ。王子様ってことは、相手をしてくれる女性は選り取り見取り。私はその中の一人。たまには毛色の違う女も味見してみようとか、そんな気まぐれでしょ、どうせ。


「さっきお二人に求婚されたのだけれど」

「……そうですか」


 あ、この反応の薄いリアクション。アラドはやっぱり知っていたんだわ。二人が私をどう見ているのかを。


「断ったらどうなるの?」

「どう、とは?」

「私は何か罰を受けたりするの?」

「まさか!!」


 私の問いにアラドは顔色を変える。けれど私はほっとした。王子ともなれば馬鹿みたいな無茶でも実行する事が出来る権力者。そんな二人に逆らったらどうなるか、一応確認はしておきたかったのよ。でも何のお咎めも無いのなら、遠慮する必要は無い。


「なら断るわ」

「え……?」

「このお話は丁重にお断りさせていただきます」

「ちょ、ちょっと待ってください! チヒロ様!!」


 驚くアラドを置いて足早に部屋を出る。長い廊下を突き進み目指すは階下への階段。あぁ、どっかで靴を調達しないとね。街に出るまでは裸足で我慢だわ。


「待ってください! 一つだけ教えてください」


 あっと言う間に追いついてきたアラドが叫ぶ。やぁね、コンパスの差だわ。


「お二人を見分けられるというのは本当ですか?」

 

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