セクハラはお断り!!
「喉かわいてない?」
そう尋ねられ、私は素直に頷いた。するとナルヴィがチェストの上に置かれていた水差しからグラスに水を注ぐ。こういう所は紳士的なのね。
「ありがとう」
お礼を言ってグラスを受け取ろうとしたのに、その手は空を切った。私の目の前でナルヴィがその水を半分飲んでしまったのだ。
「ちょっ、それくれるんじゃ……んっ!」
突然重なった唇。先ほど手首に感じたばかりの感触が自分の唇を包む。驚いた私の口は無防備に緩んでいて、そこから自分よりも厚い舌が入り込んでくる。そしてぬるくなった水がナルヴィの舌を伝わり、私の喉に流れてきた。
(な…んで……、口移しなんか……)
完全に理解不能な彼の行動。これってセクハラで訴えてもいいわよね!? 完全に彼の口の中の水が無くなると、今度は舌が咥内の形を確かめるようにゆっくりと這いずり回る。
「んっ……」
明らかに水を飲ませるのとは違う意図を持った動き。首の後ろが痺れるような疼きを訴えてきて、私は焦った。
(ヤバ……)
久しぶりのキスは苦しくて……、でも正直気持ちがいい。キスってこんなに気持ち良かったっけ?と酸素が足りなくなってきた脳で考える。
やっと唇が離れたと思ったら、今度はナキアスが覆いかぶさってきた。
「ふ…ぅ……」
彼の口からも水が流れ込んでくる。もう水はいいってば!! そう心の中で訴えてみた所で言葉にならないのだから伝わる筈も無い。
彼を押しのけようと腕を突っ張っても、徐々に力が抜けてくる。待って待って! これ以上は本当にやばいって!
たっぷりと時間をかけて咥内を舐められた後、ようやく離れた唇からはちゅっと恥ずかしい音がした。
「なんで……」
乱れた息を整えながら、いつの間にかベッドに押し倒されていた私は自分を覗きこんでいる二人を見上げた。ナキアスとナルヴィ。そっくりの二人の顔はどちらも満足げに微笑んでいる。
「大好きだよ、チヒロ」
「大切にするからね、チヒロ」
続けざまに熱に浮かされた声で囁かれた。けれど私にとっては寝耳に水。一体、何を言っているのこの双子は。
「……どういう事?」
すると二人は再び片方ずつ私の手を取った。
「仕事を探しているって言ってただろ?」
「紹介してあげるって約束だったよね?」
「あ、えぇ……。そうだったわね」
何故ここで仕事の話になるのかしら? 先ほどから突拍子もない事ばかりで頭がちっともついていけない。それなのに、二人は更なる爆弾を落としてくれた。
「「結婚しよう。チヒロ」」
……って、永久就職させる気なの!! 馬鹿双子!!!




