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世話係になった覚えはない!

 

 私は今馬車に揺られている。予定通り王都の前で行商の人達とは別れ、王都の中心部へと向かっているのよ。まぁ、予定外の事も起きているんだけど。


「ねぇ。これって一体どういう事なの?」


 私は馬車内の向かいに座っているアラドを見た。彼は硬い表情で……いえ、微妙に顔を引きつらせている。


「どういう……と訊かれましても」


 元々安い乗合馬車で向かう予定だった。けれど今私達が乗っているのは白塗りの豪華な馬車。ソファ部分は馬車とは思えない程ふかふかで、ガラスが嵌った窓の周りには細かい彫刻が施されている。

 お金持ちしか乗れないようなこんな馬車に何故乗っているのかと言えば、王都の入口で待機していたのだ。アスの言葉を信じるなら、この馬車は彼の実家からの迎えらしい。当然そんなこと知らなかったけれど、実家はそれなりに裕福な家なんでしょう。まぁ、従者が付いていることから考えても不自然な事じゃない。だから、私がアラドに訊いたのもこの馬車のことではない。問題は……


「ねぇ、狭いんだけど」

「そう? 俺はそうは思わないけど。ねぇ、ヴィー?」

「チヒロはスレンダーだから問題ない」

「〜〜〜そう言う事を言ってるんじゃないんだってば!!」


 我慢できずに大声を出せば、アラドは顔色を青くして、正反対にアスとヴィーは笑みを深めた。ちょっと此処で笑うってどういう神経してんの!? 今私怒ってるわよね!


 馬車の内部は座席が向かい合わせになっている。私達は四人だから、当然二・二に別れて座るわよね? そうよね? それなのに私の両隣には何故かアスとヴィーの二人が座っている。

 最初にアラドが乗り、次に彼に手を引かれて盲人のヴィーが乗り、私がヴィーの隣に座ったら何故か同じ座席にアスも乗ってきたのよ。アラドの隣が空いているけど?と言ってもアスは席を移るつもりは無いと言う。なら私が移ろうと思ったら、ヴィーの手が私の右手を握り、アスが私の肩に腕を回してがっちりホールドし、動けなくなってしまった、という訳。


 本気でこの子達が何を考えているのか分からないわ。出会ってからまだ三日しか経ってない若くも可愛くも無い女相手に一体どういうつもりなのかしら。もしかして昨日のおフザケがまだ続いている?

 何を言っても無駄だと分かったので、出来るだけ二人の存在を気にしないようにしながら窓から外の景色を眺める。王都だけあって目に入るのは緑よりも活気溢れる人々が多い。いいわねぇ。緑溢れる景色も好きだけれど、OLとしてずっと忙しく働いていた私は沢山の人々が懸命に働いている姿も好きなのよ。


 って、ちょっとヴィー、何勝手に恋人つなぎしているの! アス! 私が何も言わないからって髪を撫でないで! あ、あ〜〜〜〜! 耳……耳舐めるなぁ〜〜〜〜!!!!


「ヴィー! アス! 大人しく座ってなさい!!」

「「はーい」」


 だから何で私は怒っているのに満面の笑み!? 何だって言うのよ!! もう!!

 

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