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年齢と意地の強さは比例する

 

 

※後半に下ネタが入ります。苦手な方は回れ右。


 

 まさか光合成するんじゃないでしょうね、と初めて見た時に思った程見事な緑色の髪が目の前で揺れる。一週間前はあり得ないと思っていたけれど、今ではすっかり(いや、やっぱりちょっとだけ……)見慣れてしまった。


「チヒロ。そろそろ出発するみたいだぞ」

「はーい。それじゃあ皆さん、短い間でしたがお世話になりました」


 私がお礼を言って頭を下げれば、黄緑色の髪をした妙齢の女性が目元を寂しげに細めた。あぁ、本気で寂しがってくれているのかも。本当に優しい人達だ。


「元気でね。また遊びにおいで」

「はい。ありがとうございます。それじゃ」


 私は軽く手を振りながらそのお店を出た。店員の皆に見送られながら。


 私、さかい千紘ちひろがたった今出たのは翠の国の首都にある人気店ミスグレイという喫茶店だ。ミスグレイはお店のオーナーのお母さんの名前らしい。私はそこのオーナーにこの一週間大変お世話になっていた。短期のバイトとして雇ってもらっただけではなく、行く所の無い私を自宅に泊め、食事の面倒までみてくれた。29年間人生の荒波に揉まれてきた私にとって、オーナーとお店の人達の親切はこれ以上ない程身に染みた。有難いことである。


 さて、そんなお世話になったお店を出て、私が向かったのは城下街端の広場。実は今ここに集まっている行商人の人達と共にお隣の黒の国へ移動することになっている。女の一人旅は危ないのと、地理を知らない私にとって彼らの道案内が欠かせないから。まぁ、周囲には黒の国から翠の国に来た事にしているから、道が分からないのは内緒なのだけれど。何故黒の国出身と嘘をついているのかと言えば、黒髪黒目の私の容姿が黒の国の人達に一番近いからだ。だって此処、翠の国民は皆ミスグレイの人達のような緑の髪と目をしている。どう頑張ったって私にこの国の民だと言い張るのは無理だ。


 広場に着いたら、行商人のリーダーを見つけて挨拶へ行った。まずトップに挨拶するのは基本よね。それから話しやすそうな女性を見つけて声をかける。翠の国から黒の国までの移動時間はおよそ三日間。基本野宿はしないって話だけど、まぁ天候によってはどうなるか分からないし、まだまだこの世界の事を知らない私が上手く立ち回るには女性の味方は欠かせない。どんな集団でも女を敵に回すと怖いものなのだ。


 今から私がお世話になる行商グループの事をざっと話すとこんな感じ。まず、積荷を引く馬車が三つ。これらは本当に荷物を積むだけの荷車で、雨を弾く皮製の布が上にかけられている。そしてもう一つ、二頭の馬に引かれている幌付きが皆の生活用品や貴重品を積んでいる馬車。ついでに人が乗れるようにもなっていて、交代制で乗車しながら休憩するらしい。全員を運べないのは残念だけれど、まぁ贅沢は言っていられない。私を含めて三十人ぐらいの大所帯だから、それも仕方がないわ。中には小さな子供連れの家族もちらほら居て、どうせなら赤ん坊を抱えたお母さんやお子さん達には優先的に馬車に乗ってもらいたいものね。

 え? 私? どうせ私は独り身ですよ。社会人になってからめっきり定期的に体を動かさなくなって随分経つので長旅は辛いけど、筋肉痛も覚悟の上。自分よりいくらか若そうなお母さん達が多いけど、独り身の意地で歩いてみせようじゃないの。

 

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