6.サボりました
――であるから、cosxをtとおき…
今は2限の数学の授業中。
微分積分について勉強している。先生の教え方が悪いのか、それとも生徒の学ぶ意識がないのか定約クラスの半数以上の生徒が授業を聞いていない。机に突っ伏している生徒が目立っている。俺は一応起きてはいるが全く意味がわからない。
基本公式ならわかるんだけどなー
今やっていることは応用問題というべきか、複雑な考え方をしなければ解けないような問題ばかりだ。
この問題…由樹ぐらいしか解けないだろ
しかし、黒板の前に立つ教師はそのことに気が付かない。
これはあれだ。サボろう
そう思うや否や、手を挙げ先生に一声かける。
「先生ー、トイレ行ってきます」
「あぁ、行ってきなさい」
こういう時、真面目キャラは使えるよな
教室を後にした優眞は絶好のサボり場所を探していた。
今の時間中庭だとばれるか…屋上に行くか
屋上へと続く階段を上り扉の前に立つ。
開けようとドアノブに手をかけたその時――――
―や、め――ッ…!!-あ、…!
扉の向こうから聞こえてきたその声。どうやら先客がいるらしい。
うっわ、すっごい嫌な予感しかしない…
しかし、引き返すのもめんどくさいため俺はそうっと手にかけていたドアノブを回した。
ガチャ
「や、やだっ…!」
無機質な扉を開けた瞬間目に飛び込んできたのは、立っている3人の男とフェンスにもたれかかっている1人の男。しかも1人の男は見覚えがある。
誰だっけ……あぁ!全親衛隊隊長さんだ
隊長会議にお邪魔した時に、一番前に座っててリーダーっていう威厳を醸し出していたのを思い出した。可愛らしい容姿と親衛隊隊長というせいかいつでも盛ってるという噂まで流れている。
どうみても隊長さん嫌がってるだろ
内心、あの噂はやはりデマかと思いながらめんどくさいことに巻き込まれたことにため息をついた。
「ん?おい、あれ…」
3人の男のうちの1人が優眞の存在に気付いた。
「黒姫じゃん…!」
「風紀だしやばいって!」
「でも”あの”黒姫だぜ?」
3人の会話を聞きながら彼らのほうへ歩み寄る。
彼らが相談し合っているうちにここで現状を把握しよう。まず、被害者は全親衛隊隊長さん。両腕はベルトでフェンスに縛りつけられており、Yシャツは破られている。上半身があらわになっていてなおかつ殴られたような痣がちらほら。
こいつら…ッ許せねえ!
激しい衝動に駆られるが理性で抑える。そうこうしている間に彼らの話はまとまったみたい。リーダーっぽい人が近づいてくる。
「副委員長さんもどう?俺たちとイイコトして遊ばない?気持ちよくなるぜ」
そうくるか、なら……
「ちょうどよかった~、俺もそちらさんの仲間にいれてよ。最近遊び足りなくてさ、全然ヤってねえんだよな」
「え、っ……」
隊長さんの目は絶望に染まっていた。
「嘘だ、ろ?…」
「…それが素?」
隊長さんだけではなく彼らも驚いていた。
「そうだよ?真面目キャラって結構疲れるんだよねー」
右耳につけられたピアスをいじりながら肩に手を当て首をならす。
あー…肩凝ってるな~
「ははっ、まじかよ」
「風紀が味方に付いたことだし、心おきなく遊べるなぁ隊長さんよお」
「そ、んな…い嫌だ…っ!」
隊長さんは最後の抵抗をしようとするも、体力の限界が近いのかこの状態を抜け出すことはできなかった。
――ごめんね、もうちょっと待ってて
「ねえ」
「なんだ副委員長」
俺の呼びかけにリーダっぽい男が反応する。
「一番初めに俺がヤってもいい?この子超タイプなんだ、しかも噂の隊長さんだし」
獲物を目で捉え舌なめずりをしながら3人の男たちに言う。息をのむ音が聞こえ彼らの誰かが言葉を発した。
「あ、あぁ…」
一番を譲ってくれるなんて、皆やっさしいな~
彼らからは見えないところで笑みを浮かべる。
――その甘さが命取りになるんだ
「それじゃあ、さっそく」
隊長さんに覆いかぶさり耳に口を近づける。彼らからはわからないように隊長さんの耳元で囁いた。
「絶対助けるんで、少しだけ我慢してください」
「えっ…」
二度目の驚愕をして振り向いた隊長さんの唇を奪う。
ビクッ
隊長さんは驚きか恐怖かよくわからないが体を強張らせた。しかしそんなこともお構いなくできた隙間から舌を入れた。
くちゅくちゅっ
辺りには卑猥というべきか水音が響いていた。後ろにいる彼らの気配を探ってみたが特に動いている様子はない。隊長さんの目がとろんとしてきたところでキスをしながら片手を使い、両腕を縛っているベルトを外した。
そろそろ、かな
隊長さんから唇をはなすと名残惜しむように二人の間を銀色の糸がひいていた。そして最後に軽く唇に触れる。
ちゅっ
「ごちそうさま」 ニコッ
隊長さんは先ほどのキスのせいか顔が赤く放心状態だ。優眞は気付いてないが彼らは先ほどの二人に魅了され3人とも自身を抑え前屈みになっていた。そして後ろを振り向き彼らの奥を見据える。
ガチャ
屋上の扉が開き、風紀委員長の晴希と同じく風紀の3年加藤先輩と古賀先輩が現れた。
「!?なんでいんだよ!?」
彼ら3人はなんでばれたのかとわめいている。リーダーっぽい男がこちらに視線を向けてきた。
「ま、さかな」
「…さぁ?」
疑いを含んだ言葉にあいまいな言葉で返す。教える気はさらさらない。
最初っから疑ってればねぇ――
「C組の田島、山本、佐々木、これから風紀室に来てもらうよ」
加藤先輩と古賀先輩はなれた手つきで彼らを縛っていく。
あの3人、停学になるだろうな
そして晴希と加藤先輩が彼らを連れ屋上を出ていった。古賀先輩は隊長さんを抱きしめ介抱している。…二人の会話を聞くとどうやら同じクラスらしい。
「あ、あの…っ!」
「?はい」
「助け、てくれて…ありがとうございました」
「あぁ、怪我とかないですか?」
「そこまで大事には至ってない、です…」
上半身に痣はあるが大きな怪我はないようだ。…問題は破られたシャツ。このまま校内に入ればまた襲われる危険性が増える。
しかもブレザー俺だけしか着てないし
――――俺の貸すか
「隊長さんこれ羽織ってください」
着ているブレザーを脱ぎ、隊長さんに渡す。
「だ、大丈夫です、そこまで迷惑かけるわけには…」
いやいや、さらに面倒なことがふえるから!
隊長さんのYシャツが無惨にも破られており上半身には2~3つの痣がある。肌が白いのでいっそう目立ち、胸についている淡いピンク色の尖頭が見え隠れし、なんともいえないエロさを醸し出している。
「はぁ、今の貴方の姿自覚してください」
隊長さんは首をかしげるが自分の姿を確認した後、おとなしく差し出されたブレザーを羽織った。
隊長さんは最後にもう一度お礼をいい古賀先輩に介抱されながらも屋上を去って行った。