4.お腹すきました
今日はここまで。
俺達の教室から歩いて5分ほどでたどり着く校内食堂。広さは…とにかく広い。どんなに混んでいても必ず座席は空いている。
この食堂は座席の上にある注文パネルを使って料理を選ぶ。そうして選んだ料理はウェイターさんが運んでくれるのだ。ガ○トやバーミ○ンをイメージしてもらえればいい。
今の時間帯は混んでおり、様々な生徒が行き交っている。しかし、4人が進む方向にはまるで浪が裂けたように人がいない。それもそのはず、この4人組はこの学園では目立っていた。
異例の2年生で風紀委員長の座についたイケメン鳴沢晴希、黒髪美人の転校生で風紀副委員長の黒木優眞、甘いものが大好きで女顔負けの可愛らしさをもつ三宅砂哉、九十九財閥の次男で生徒会に兄をもつ九十九由樹。
その為か、生徒や教師たちの間では呼び名までついている。………本人達は知らないだろうが。
食堂の奥に空いてる席を見つけ4人で腰かけた。
「僕、オムライス」
「自分はAランチで」
「んー、俺もAランチにする」
「俺はナポリタンかな」
メニューはあまりかわらないのですぐ頼むものが決まる。そして座席についている注文パネルを使い注文を頼んだ。
注文してからおよそ5分後、頼んだ料理を持ったウェイターがこちらへ向かってきた。
「お待たせしました。Aランチ2つにオムライス、ナポリタンです。」
「ありがとうございます。」
机の上に頼んだ料理が置かれ、それぞれがウェイターにお礼を言う。
「お久しぶりです、長谷川さん」
「お久しぶりです、優眞さんに皆様方。貴方達ぐらいですよ?私達にお礼を言ってくださるのは」
そう言いながら微笑んでいるこの人は、先程料理を運んできてくれたウェイターの長谷川さん。しかもここの副料理長を任されており、その腕は三ツ星レストランにも優るとか。
転校した当初に何故か親しくなり、時間がある日はお菓子の作り方を教えてもらっている。そういえば、最近時間がなくて教えてもらってない。今日は何もないし…久しぶりに行こうかな。
「長谷川さん今日の放課後、空いてますか?」
「ええ、空いてますよ。準備、しときますね」
「ありがとうございます」
よし、今日の放課後はお菓子作りだ。
「あと、これ先程作ったものですがどうぞ」
そういってどこからか持ってきたのか長谷川さんが持つおぼんの上に4つのタルトが乗っていた。
「えっ!?フルーツタルト!?くれるの!?食べる食べる!」
「はぁ…少しは落ち着いて下さい、砂哉」
いち早く反応したのが砂哉、それを由樹がなだめる。これで分かる通り、由樹は甘いものに目がないのだ。
長谷川さんは美味しそうに食べる彼らを見て微笑んでいた。
翌日。
今日の授業が全て終わり俺は今、第3会議室の前にいる。
昨日の放課後、長谷川さんと作ったスイーツ――ティラミスを持って。
時はさかのぼって昼休み。俺の親衛隊隊長の3年来栖燐先輩から、放課後第3会議室で親衛隊隊長会議がある、と聞きつけた。
そして先ほどへ戻る。
事前に砂哉達にもあげて味は保証されてるから大丈夫なんだけど……
――――問題は隊長さん達だよな
そう、優眞は風紀委員の親衛隊達とは仲がいいが生徒会の親衛隊や個人の親衛隊とはあまり面識がないのだ。
さて、どうなることやら
と感慨深くなっているといきなり会議室の扉が開いた。
「あれ?優眞様?」
そして出てきたのは燐先輩だった。
「燐先輩、ちょっと頼みが。これ隊長さん達に配りたいんですけど…」
そういい手に持っているものを燐先輩に見せる。
「ティラミスですか、わかりました。今終わったばかりなので総隊長に許可を得てきます。」
そう言うなり、燐先輩はまた会議室の中へと戻っていった。少しだけ待つと中から燐先輩が手招きしてるのがわかり、会議室の中へと足を踏み入れる。……隊長さん達が何事かと視線を向けてくるが気にしない。
燐先輩の傍へ行きアイコンタクトをとって言葉を発す。
「これ作ってみたんで、皆で食べてください」
燐先輩と手分けして一人ずつ配っていく。皆始めは戸惑っていたがおいしそうに食べていたので安心した。
その様子を見て満足した俺は寮に帰ろうと思い、燐先輩に一声かける。
「先輩、俺そろそろ帰りますね」
「僕も帰ります。…ご一緒してもよろしいですか?」
「もちろんです」
先輩と二人で帰るのいつぶりだろうか
そんなことを考えながら玄関へと向かう。その後はたわいもない話をしながら寮へと帰っていった。
おやすみなさい。