勇者の告白
「なっ!? 勇者だと……!?」
まさか勇者がこんな美人さんとは……
「ええ、私が、勇者です」
穏やかな笑みを浮かる勇者。その背には長さ1,5m程の大剣、恐らく両手剣が担がれている。かなりの重量があるはずだが彼女はそれを顔色一つ変えずに背負っている。
「私は……私の一族は魔王様を討伐することを目標に武術に励んでまいりました。ですが私には、どうしても魔王様を討伐する理由が、分からなかったのです」
「それは、俺が悪だからだろ」
俺の一族は、悪として生きるよう教育されてきたのだから。
「ですが、調べても調べても、魔王様の悪は見つかりませんでした。そしてある日、貴方様の肖像画を見たとき、私は魔王様に惚れてしまったのです!ツンツンの黒髪に紅い瞳、全て同じですわ!!」
話の繋がりがおかしくないか。どこをどう取り違えたら惚れるんだよ。それよりも誰だ、俺の肖像画描いたやつは……! そんなことを考えていると、勇者はうっとりとした目つきで近づいてくる。
「ずっと……お慕いしておりました」
じりじりと後退する俺。さらに近づいてくる勇者。
別の意味で追い詰められている。
「さあ魔王様、お手合わせを」
すらりと背中の剣を抜く勇者。
「待て待て待て、俺はお前にその……こっ……告白、されたんだよな?」
「私はそのつもりでしたが?」
「なんで、その後に手合わせなんだ」
心中でもするつもりかよ。
「私の……私の愛を受け止めてほしいのです!」
「要らん!!」
こんな美人の告白を断るのは若干気が引けるが、向こうは勇者。正義の味方と仲よくするつもりはない。
「ですがどの道決着はつけなければなりませんので、やはり私と戦ってもらわなくては」
めげることなく笑みを浮かべる勇者。
「ちっ……」
舌打ちしつつも剣を抜く。このままでは、殺される気がした。向こうは大型の両手剣、こっちは細身の剣での二刀流。少々分が悪い。だが勇者といえども向こうは女。筋力で言えばこちらが有利のはず……!
「この勝負、私が勝ったら私を貴方の妻にしていただきます。私が負けたら、私は貴方の妻になりましょう。」
「同じじゃねえか!」
「引き分けの場合、貴方は私の夫になってもらいます。」
「結婚回避ルートはどこだ!?」
すっかりペースを乱されてしまう。あいつの言うことを本気にしちゃいけない。だが、負ければどうなるか分からない。
この戦い負けられないな……
「そういえば魔王様、私の術式は、全ての筋力の強化と魔法威力の強化。女だからと言って、甘く見ないでくださいね?貴方の首、切り落として差し上げますの」
さすが勇者。かなり手強そうだ。最後に聞いた物騒なセリフはスルーしよう。
「それから、私の術式の動力は魔王様への愛。かといって、私を幻滅させようとは思わないでくださいね?私の愛は、どんなことがあっても揺らぎませんから」
「揺らいでくれよ……」
自信満々の勇者に思わず呟く。
術式の動力に感情を使うことは珍しくない。俺の場合、敵の恐怖心や絶望感など負の感情を動力とした術式を組んでいる。
俺は術式がなくても十分に敵を倒せる力があるし、追いつめれば追いつめるほど、動力が手に入る。
だがその術式の動力が今回は手に入りそうにない。何せ全く負の感情を抱く様子が見受けられない。
これは今まで体内にストックしてきた動力で補うしかない。
そう決めて、剣を構えた。
とりあえずの2話です!
展開をちゃんと考えてないので、迷走の危険性がありますが、温かく読んでやってくださいね←
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