勇者と魔王
ある日、魔王である俺の元に一通の手紙が届いた。
『拝啓魔王様
次の満月の夜、グランサムにてお待ちしております。
これ以上の犠牲は望みません。1対1での決着を。
敬具……草々……? 勇者』
敬具か草々どっちか分からなかったのか2つ書いてあった。
なんとなく馬鹿にされた気分にしてくれる手紙だった。
「お待ちください! 本当に1人で行かれるおつもりですか!」
「当然だ。この手紙には1対1と書かれているのだから」
「ですが罠の可能性もあります!」
満月の今日、単身でグランサムに行こうとする俺を、部下が必死に止めようとする。
グランサムとは俺の城、つまりここから隣町のゲートを通ると行けるただっぴろい丘だ。
「勇者との戦いでこっちはかなり消耗しているんだろう?大丈夫、必ず勝つさ」
不安そうな部下に言い聞かせる。その甲斐あってか、部下は心配そうな顔をしつつも、俺が1人でグランサムに行くことを認めてくれた。
「……絶対、死なないでくださいね?」
「ああ」
「……土産、忘れないでくださいね?」
「……ああ」
こいつ……本当に心配してるのか……?
なんやかんやでグランサムに到着する。が、誰もいない。
「まさか本当に罠か……?」
そう呟いた俺の首筋に剣の切っ先が当てられる。
「っ!?」
油断していた。迂闊には動けない。俺はこんなところで死ぬのか・・・?
「お会いしたかったですわ、魔王様!」
美しい女の声。
剣が離れ、鞘に納められた音がする。どういう事だ。とりあえず、慌てて振り向く。
「ずっと……ずっとこの日を楽しみにしておりました」
俺の目の前には、銀の鎧を纏った同い年ぐらいの美しい女がいた。
輝くような金髪は丁寧に結ってあり、ぱっちりした蒼色の瞳はまっすぐ俺を捉えている。
いったい誰だろうか、こんな美人の女の人は知らない。ふと頭に1人の人物が思い浮かぶが、すぐに打ち消す。
混乱する俺に、女は、優雅なお辞儀とともに、衝撃の事実を放った。
「お初にお目にかかります、魔王様。私勇者と申します」
とりあえず、勇者と魔王が登場です!
ここから色々と展開予定!※あくまでも予定です
ご感想いただけると嬉しいです!