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100均の天使

作者: 雉虎 悠雨
掲載日:2026/10/13

ランダムなお題(三角コーナー、ドライバーセット、小さめの靴下)から着想を得て書いたBLショートショートです。

新生活を始めるのだろう。


「合計十五点でニ千三百円です」


だいぶ前から100均でも、百円以上の品は多くなった。

俺がレジを通し終えて、合計金額を伝えると目の前の長身で爽やか大学生風の客は、スマホをこちらに向けてくる。

できれば声で支払い方法を教えてくれると有り難いが、見慣れた画面なのでこちらから確認をして、支払いを完了させる。


かごの中には、三角コーナーに、ドライバーセット、この客が履くには小さいと思われるシンプルなくるぶしソックスなどなど。


同棲でも始めるのかもな。


俺がそう思いながらレシートを渡そうとすると、その手ごと掴まれた。


「え……」

「あの!」


俺が驚くのと、俺の手をレシートなんか無視して掴んでいる男が裏返った声を上げたのは同時だった。


「あの! 北南都大学三年、佐藤多一郎です! これ! 使ってください!」


そう近所の大学名で自己紹介を言うやいなや、かごの中から男が履くには小さそうと思った靴下を差し出された。


「……え?」


理解が追いつかなさ過ぎて、俺は身動きもできないし、そんな声しかでなかった。

戸惑う俺をよそに男の客はなぜか目を輝かせる。


「この前、大学の前で」


客のそのセリフで昨日のプチ最悪な出来事が思い出された。


靴下と靴の相性が最悪で、夜ここのバイト帰りに一日で溜まったストレスに一人靴下にブチギレて、人通りのないと思った道の真ん中で、脱いだ靴下を叩きつけてやった。

もちろん直ぐに拾って、ゴムも伸びてたから家で捨てたけど、まさか見られていたなんて。

そう言えば歩道の柵の向こうは大学だったけど。


最近ツイてないと思っていたのに、ここまでとは……。


けれど、これは俺の幸福の始まりだった。


手をつかまれたまま、唖然と男を見つめるだけしかできなかった、なぜか俺を天使と呼ぶ、この佐藤多一郎とのファーストコンタクト。




お読みいただきありがとうございました!

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