残照のように
それからの日々はただ残照のようだった。
クリストファーの人生の時間は二十五歳で列車事故にあった後、ジュードを迎えに来た時に、夕日の最後の輝きを使ってしまったのかもしれない。その後の十年は萎む蝋燭の火を見つめる様だった。
それでも、最後の力でジュードを迎えに来てくれたのかと思うと、その十年も大切な温かい思い出の日々だった。
葬儀は、二人の家の隣の教会で、身内だけで執り行われた。遺骨は教会のお墓と、先祖代々の墓が並ぶ元々のエインズワース家の墓とに分けられた。ジュードはそのまま、この田舎の家に残るつもりだった。もう後は、死ぬまで静かに暮らしたかった。
ただ、世捨て人のような気持ちのジュードはまだ、二十代。夕日の燃え残りの明るさの中で、膝を抱えて人生の時間を溶かすはずだったが、周りがそれを許さなかった。クリストファーの代わりに会社を継いだケイレブが、会うのは葬儀の時が初めてだったけど、度々、顔を出すようになった。今の所、来るのは日中なので、孤児院の用事があるとか、お墓に行くところだとか、理由をつけて家で二人にはならないようにしていた。
近所の知り合いはともかく、宿屋に来る客や、レストランに来る客とかにも声をかけられることが増えた。クリストファーがいた時はそんなことなかったのに。
ケイレブはクリストファーの遺言に沿って、月に一度、生活費を持って来ていた。誰がどう見てもジュードを狙っているのは確実で、そもそも振り込みやクリストファーがいた時のように現金書留でいいのに、わざわざやって来るのだ。それにしても、何にも言わずただお金を渡して帰っていくので質が悪い。言われないうちは断れないじゃないか。
クリストファーを亡くしたばかりで、何も考えられないとか、誰とも付き合えないとか呟いてはみたが相変わらず。
とうとう面倒になって、喪の明けるタイミングで生活費を辞退することにした。ジェームズの寄越したお金や今までの生活費の残りで、贅沢をしなければ食べていけそうだった。
そう言って断ると、いよいよクリストファーの両親が言い出した。
「ケイレブが貴方を気に入ってしまって。もう一度、我が家へお嫁に来てもらえないかしら」
ジュードは、クリストファーだから結婚した。もう一度エインズワース家の嫁になるつもりはありません、と答えた。やっとスッキリ断ることができて、清々した。
クリストファーの両親は、まとまったお金を振り込んできた。多分、これでもう縁が切れたと思う。
天涯孤独になっちゃったけど、大丈夫だよ、見守っていてねとお墓に報告した。




