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残酷な神様

 希望は打ち捨てられ、最悪な未来が来る。


「入寮前にバース検査をしてるんだが、稀に変化が遅い者がいる」

 寮制の学校では、Ωの生徒は受け入れていない。ジュニアハイスクール入学時には折角受験成績が良くても、バース性で引っ掛かって入学出来ない者が一定数いる。その後毎年の健康診断で退学や公立の学校に転校になる生徒もいた。だが、ジュードの様に、十七歳で発現するのは稀だった。体質なのか、幼少時の家庭環境からなのか。


 寮監コール先生が生物科の先生でバース性の事も知識があって、良かったかも知れない。大騒ぎにせず、殆ど意識のないジュードを最奥の未使用の部屋に移動し、ローガンに礼と口外無用を言い渡し、バースに詳しい医師を手配し、今後について職員会議を開くことになった。


 四日目に意識を取り戻したジュードが聞いたのは目の前が暗くなるような話だった。


「君はΩだったんだよ……」


 その後、ゆっくりと説明を受けた。

 

 残念だが、二日後の卒業式には出席出来ない。卒業自体は単位も取れているから、君の希望に沿って今年でも、来年でも卒業できる。卒業後の法律事務所の仕事の方は、先方はΩの受け入れはできないそうだ。我々職員も対応を考えていたところへ、昨日、君のお父上が来られた。君がΩだという連絡を、これは隠して置けないからね、国にも親元にも連絡したよ。その連絡を受けて来られたんだが……。


「君を卒業後サファード家へ嫁がせるそうだよ……」


 ぐっと息が詰まったジュードを見て、コール先生はグラスの水を渡した。

「こんなことになって、僕たちも本当に残念だ。ただ、君のお父上は学校からの今までの案内をご存知ないようで、君が成績優秀で一年早く卒業出来る事もご存知ない。だから、卒業資格を残したまま、卒業を来年にする事はできるよ。どうするか、考えて」


 もう、いろんな事が起きすぎて、一杯一杯だった。

「また、様子を見にくるね」

 と言って、コール先生は出て行った。

 頭の中はぐちゃぐちゃで、水を置いて、また横になった。既にヒートの熱は下がり、体も動く。ただ、ひたすらに怠い。Ωって、こんな事、三ヶ月に一度起きるのか……。折角の就職先もこれからの希望に満ちた未来も、全部失ったな……。なんでこんな事に……。いつもそうだ、神様は残酷なんだ。僕の希望をへし折るのが好きなんだ。……泣いても誰も助けてくれない事は知ってる。


 それでも、コール先生は親より親身になってくれた。今年卒業して結婚できる十八歳まで、実家でまた酷い目に遭うよりは、席だけ残して卒業は来年にする事にした。このまま寮には居られないので、コール先生の紹介で港の近くのアパートを借りた。休学扱いにして、親からの一年間の学費と寮費の半分を生活費に充ててもらえるそうだ。ヒートがあるので長期には無理でも、合間に単発の仕事をすれば、なんとか暮らして行けそう。一年間。これは暗黙の契約。もし、一年後に結婚が嫌で逃げ出したら、コール先生に迷惑をかけちゃう。それだけはダメだ。


 たった一年の一人暮らしが始まった。そして、Ωの暮らしは予想より大変だった。


 


 


 

 

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