迎えに来たよ、僕の永遠
二人共に満身創痍と言った程だった。
「クリストファー、死んじゃったと思ってた。死んでなかったんだね、よかった……」
「君にアメリアが電話で嘘を言ったんだ、僕も戻る約束を破って、ごめん」
座り込んで泣くジュードの肩を抱いたクリストファーは立ち上がる事はなかった。立ち上がれない事情があった。
暫くして落ち着いたジュードとクリストファーは向かい合ってソファに腰掛けた。
クリストファーが話し出した。
確かにアメリアは婚約者だったが、それは正式な物ではなく従姉妹同士で仲の良かった母同士が大きくなったら、と話していただけの物だった。
少しばかり気の強いアメリアと和やかに暮らせる未来が思い浮かばず、クリストファーは成人後、断っていたが、学生だったアメリアに伝わっていなかった。
エインズワース家ではジュードとの結婚の話も喜んでいた。また家を離れる前に片づけなさいと言われた仕事をこなしているうちに、最初に言った期限は過ぎてしまった。もうすぐ、ジュードに会えるはずの、二月下旬、仕事先から戻る途中で列車が横転する事故に遭ってしまった。
左脚を挟まれて、開放骨折(骨がでる骨折)と頭を打って、ほぼ二ヶ月意識が無かった。ジュードが電話をした時には、意識の無いまま、一時急変して危ないと言われていた時で、母と仲の良い従姉妹も娘のアメリアを連れて母を励ましに来ていた。その時、アメリアは母達が病院に行って留守だったので、電話に出てつい嘘を言ったらしい。
急変は、脚の傷がある程度治ってからギプスをしたのに、ギプスの中で残っていたデブリのせいで傷が腐敗してしまい、クリストファー自身はまだ意識が無く壊死の痛みを訴える事無く、敗血症寸前になった為だった。結局左脚は膝下で切ることになってしまった。切断後意識は戻ったけど、直ぐには動けず病院と自宅でリハビリをしてやっと一人でここまで来れた。
間に合わなくてごめん、こんなに長く待たせてごめん、連絡出来なくてごめん……。
「君のお母様が、僕に何度も手紙をくれて」
「え?」
「人を使って僕を探したらしくて、僕の状況も知ってた」
「母が……」
「最初はジュードとの約束を破った事を怒っている手紙だった」
「うん」
「それが、僕に記憶がない事を知って……あ、頭の怪我のせいで、しばらく記憶も無くしていてね」
「!」
「いや、次には君の事を手紙に書いてきてくれて」
「僕のこと……」
母とはクリストファーの屋敷に来た晩に沢山話した。分かり合えた気がしていた。
「君が小さい時からの話、冷たい母親で申し訳なかったこと。あの坂の街での暮らしも僕たちのことも全部調べたらしく、書いてあった」
「そうなんだ……」
「そうしているうちに、ある日、ふと記憶の中の君の笑顔が甦って。治療中に外されていた僕たちの指輪を荷物の中から見つけて」
ジュードも指輪を外していなかった。右手にしていたせいか、ジュードに興味がないせいか、誰も咎めなかった。
「僕の永遠を迎えに行かなくちゃって、思ったんだ」
クリストファーがくれたジュードの指輪の刻印――|見つけた_永遠を《Elle est retrouvée —L’Éternité.》――のことだ。
「やっとここまで来たんだけど、実は、僕にはまだ君を助け起こす事も出来ない。自分が倒れないようにするので精一杯で」
「そんなこと……」
「ここに来る前に、サファード家にもマイヤー家にも話は通してきた」
「え?」
「サファード家は共同事業もうまく言ってるし、ジェームズ君は奥様一筋だし、跡継ぎも生まれるし、何より、命懸けで二人を守ってくれた君に感謝しているから、君が望むようにって」
「ジェームズとエリザベスはラブラブなんだ。ふふふ」
クリストファーはジュードの笑顔を満足そうに見つめた。
「マイヤー家はお父様は事業さえ上手くいけば構わないと。次はうちとも何か一緒に始めようって提案された。お母様は、すごく喜んでくれたよ」
「え?じゃあ、僕はクリストファーの国に一緒に行っていいの?」
「来てくれるかい?迎えがこんなに遅くなったけど」




