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大手術

大変な手術になった。


 心臓は無事だった。うつ伏せに倒れたジュードの左肩から斜めに入った木片は肩甲骨を割って、肺に刺さって止まっていた。

 人体には天井にめり込んでいる弾丸自体よりも、弾丸によって飛んできた木片の方が木の断面がささくれていること、体の中で分裂してしまうこと、感染面でも問題だった。

 うつ伏せでレントゲンで見える木片と骨の破片、ちぎれた衣服の繊維を医師の指先で確認しながら取り出し、仰向けにして胸を切り、血気胸の手当や他に残った組織がないか確認する手術だった。

 ただ一つの幸は、山間の田舎町だったが、従軍経験のあるベテラン外科医がいたことだった。彼は木片の入った角度を推測し、レントゲンに写らない木片や繊維まで、割れた骨の小さなカケラまで指先の感覚で綺麗に拾い出してくれた。


 長時間の手術を耐え抜き、入院も長期になると思われた。

 ジェームズも警察の事情聴取の後で病院に駆けつけた。手術後、病室に運ばれたジュードの様子を見て、全員が驚いた。

 髪色がさらに透明に近い銀髪に。瞳の色に至っては真ん中の虹彩に少しのグレーが残っているだけで、瞳孔も虹彩もほんのり薄い黄色。眉もまつ毛も色素が抜けていた。

 病院内の神父の話によると、限界まで能力を使った者、特に他人の為に自分を犠牲にした者に起こる現象らしい。


 筋肉を切り、沢山の肉片を感染予防のために取り出したジュードのドレーン袋はすぐに一杯になり、肺の組織を痛めているので呼吸の度に激痛が起きる。それでも、使える痛み止めには限界がある。痛み止めが効いている間だけ、少し眠ることができる。


 しばらくの間付き添ったエリザベスはとうとう、傷口のガーゼ交換で泣き叫ぶジュードを見ていられなくなった。背中側の大きな傷が良くなって固まり出すと、感染予防で日に何度も取り替えるガーゼに治りかけた組織が張り付いて取れてしまうのだ。

「ごめんなさい。見ていられなくて」

 妊娠初期のエリザベスの体の負担を考えて、屋敷に戻ることになった。

「あとは治るだけだから、大丈夫だから」

 と答えたジュードを残して、ジェームズとエリザベスは帰って行った。


 クリスマスを病院で過ごし、丸々二ヶ月入院となり、寒い冬の最中に退院した。別荘の管理人が、ダッチトラックをそろりそろりと衝撃がないように運転してくれて、なんとか雪道を走らせて別荘についた。


 ゲートからエントランスまでの並木はすっかり葉が落ちて、道は雪に覆われていた。

 晴れた寒い日だったので、日差しに空気中の水分がキラキラと輝いていた。久しぶりの外の景色も外の空気も清々しかった。


 その冬を別荘に籠って過ごした。

 暖かい部屋で、暖炉に薪をくべて、本を読んだり。時々は動かしづらい左腕の運動もした。病室よりやはり落ち着く。春になったら、屋敷に帰らなくちゃいけないかもしれない。今は一人を満喫したい。


 そんな日々を過ごして、一日一日と春が近づいていた。雪の降る日が減り、もうすぐ復活祭が来る。


 道の雪はほとんどなくなった。暖かい日差しが、テラスに降り注いでいた。誰か、車でやって来たらしい。車のドアの音。ゆっくりと歩く音、管理人と何か話す声。テラスで本を読みながらうとうとしていたジュードは、なんだか夢の中で懐かしい人に会ったような気がした。


 メイドがやってきた。お客様? 僕に?


 一階に降りて、応接室へ。木のドアを開けて、中に入ると……あんなに会いたかった人がいた。

「ジュード!」

「クリストファー!?」


 

 


 

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