眩しいふたり
ジェームズ・サファードとエリザベス・ファーロン
医師、ルイスミス先生はミスター・サファードに話をして来ると言って出ていったが、すごすごと帰って来た。
「名家の当主の考えは分からないなぁ。そういうもんだとしか言われなかった……。私は別にここのお抱えでなくても構わないんだが、君がこのまま放置される様じゃ気になって仕方ないから、君と二人で、戦っていこう」
残念ながら、霧の詰まった頭にはなんと言ってるかわからなかったけど。
「君の妊娠や出産の手伝いもするよ。Ωの出産に詳しい助産師の知り合いもいるんだ」
あ……つまり、あっさりそっち側へ行ったわけね。
それでも、処方された薬は効いて来たし、待遇も若干改善された。もう少し自由のきく部屋に代わって、庭くらいなら好きに散歩できる。メイドたちは、余計な話をしない様に言われていたらしいが、規制が撤廃されて、本人たちも嬉しそうだ。いろんな話をしてくれる様になった。泊まりのメイドの方は、サファード家の遠縁の娘で、昼間通っている学校の話もするし、テスト期間とかジュードが勉強の手伝いをする様になった。二人とも、友人の話や、恋の話とかもしはじめて楽しい。
部屋にジェームズとエリザベスも顔を出した。ジェームズは常にエリザベスの方を向いて愛しそうに微笑んでいる。エリザベスはジュードをどう思っているんだろう? ライバル? 障害物? 将来の夫の将来の愛人なんて、目の敵だろうと思っていたら、本当に可愛らしい人だった。
「ジュード、こんなこと聞いて悪いんだけど……お肌の手入れ何使ってる?」
え? 私のジェームズに近寄らないでよ、とかじゃなくて? お肌の手入れ?
「ジュード、ツルツルじゃない? なんかすごい秘密とかある?」
「え? いえ、特には。石鹸で洗って、乾燥する時には自家製クリームを塗るくらいで。」
「そうか、体質かぁ。これをやれば綺麗になるって何かがあるなら、聞きたかったのに」
「一般的なクリームに乾燥させたマリーゴルドとカモミールの花を漬け込んでるんですが、まだありますからお分けしましょうか?」
ロザリーに教わったレシピだった。全身に使える。手荒れに使うのが一番多かったけれど。
引き出しから一つ取り出すと、エリザベスは蓋を開けて中身を見て、喜んだ。
「え? 可愛い、これ」
どこにでも売ってるクリームの上に、花びらが並んでいた。
「花びらが邪魔なら、最初に捨ててもいいですけど、使いながら退けて使ってます」
「わかった。ありがとう。私、そばかすが気になっちゃって」
「そばかすがいいんだろう? チャームポイントだろ」
ジェームズがエリザベスを片手で抱き寄せて言った。
あれ?眩しいな、このふたり。
ジェームズとエリザベスがジュードの絶望そのものだったのに、今は希望に思える。
そのまま二人を見ていると、本当に思い合ってるのがわかる。
二人の幸せを心から願えるまでになった。
そして、結婚式にはジュードも少しだけ参加した。教会で行われた式には参列しなかったが、その後の屋敷でのガーデンパーティには参加することになった。事情を知る少しの参加者がヒソヒソ話すのに気付いたが、ジュードに何ができる訳でもなく。
ただ、真っ白なドレスのエリザベスの初々しさと、嬉しそうなジェームズの二人に目を細めるだけだった。
主役の二人からは離れて、やっと外の眩しさに耐えられる様になったジュードに、事情を知らない参加者が声をかけてきた。
「やあ、君は新郎の友達? どこから来たの? 少し一緒に話さない?」
一人の相手をしていると、次々に人が集まってきた。
「なんて名前? 決まった人とかいる?」
「今度僕の家のパーティへおいでよ」
別に何かしてる訳でも無いのに、その様子を見てミスター・サファードが苦々しい顔をしていた。
「皆、君の魅力に惹きつけられる様ですね、おつかれの様ですから、もう部屋でおやすみください」
タキシードのルイスミス医師が声をかけてきて、部屋に引き上げることになった。




